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散乱文章

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2018年4月~10月の記録 定型に嵌らない散文であり、思いついたままの乱文である。とにかく毎日、何かしら書こうと足掻いていた。
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#掌編小説

[散乱文章]その六十三

レモンイエローの羽毛が、ふわふわと舞っている。鮮やかなそれを見つめながら、僕はポカンと口を開けてしまった。
「良い色でしょ?今、流行ってるんだー」
ニシシと笑ってみせる彼女は、ライムグリーンの髪をかきあげて、僕にその翼を見せびらかす。
有翼人種。そういう存在がいると判明したのは、人類が地球から飛び出した数百年後のことだった。
彼らは、とある惑星の原住民であり、不思議なことに羽が生えている以外は、僕

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[散乱文章]その六十二

どんよりとした空模様を見上げ、ほくそ笑む。浴衣に身を包んで向かう先は、とある古い日本家屋だった。
「ようこそ、おいでくださいました」
迎えてくれたのは、今回の会に私を誘ってくれた友人の、祖母だという老女だった。
品があり、旧家の大奥様とはこういう人なのだろうな、という厳しさを滲ませる、キリリとした顔立ち。しかし、微笑むと皺が綺麗に刻まれて、ああ、よく笑う人なんだ、と思った。
「ごめんなさいね。家族

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[散乱文章]その五十四

胸の中に抑え込んでいた悲しみや苦しさや痛み。
それが最大規模で爆発して広がった後、徐々に集束している。
まだ歪なそれは、それでも煌めく原石となるだろう。私はそれを、磨いていくのだ。ゆっくりと時間をかけて。
美しい思い出という宝石に、変えていく。決して忘れ得ぬ悲しみの色をした、それはなんと美しい宝石だろうか。
それを胸に抱いて、生きていこう。痛みも苦しさも悲しみも、そのままでは辛いから。きっと煌めく

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