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ツイン・ピークス The Return 第5章「ケース・ファイル」のおはなしと考察。

こんばんは。大好きなツイン・ピークスThe Returnの感想や考察をネタバレありで書いていきたいと思います。公開から数年経っているけど、もし今のタイミングで見ている人がいたら、見た後に読んで楽しんでもらえたらと思います。

では早速いってみましょう。

前半のあらすじと若干の考察。

ダギーを狙う男二人を雇っている女性を雇っている誰か。謎のデバイスはどこに、誰につながっている?

クーパー(魂無し)と入れ替わってしまったダギーですが、彼は誰かに命を狙われています。実行犯は男二人(一人は頭髪が薄め。一人は長髪。二人とも髭面)。男二人を雇っているのは黒髪の女性。

女性によると、ダギーを仕留めることができなければかなりヤバそうで、「私が殺される」と怖がっています。逡巡しながらも、追い詰められた様子で携帯デバイス(BlackBerryという、スマホの元祖と言われる携帯デバイスらしい。まったく、リンチは通信機器の博覧会でもやるつもりか?!)でどこかに発信します。呼び出しても誰も出ないので、文字を入力。

「ARGENT    159  2 」うん。まったくわかりません。

裸電球。どこかの部屋。皿に乗せられた謎の黒いデバイスが点滅します。

バックホーンではルース(と正体不明の身体)殺しの捜査が続いています。

検死官のコンスタンスの寒いギャグ。「トップニュースがあるの。身体の”トップ”はここにはないけど」

被害者の胃から、『ダギーへ。愛を込めて。ジェイミー・E』と彫られた金色の指輪が出てきます。金色の指輪といえばクーパーですが・・・

サウスダコタ、ブラックヒルズの留置所。

悪いクーパーが「ここで食事がやってくる」と言うと、食事がやってきます。悪いクーパー、予知能力でしょうか。

悪いクーパーが鏡を見ると、旧作の最終話で、クーパーのドッペルゲンガーが、ボブと高笑いするシーン、ボブに乗っ取られたクーパーが鏡に頭突きするシーンが挿入されます。鏡に映る悪いクーパーの顔がゆっくりとボブに変化していきます。

「まだおれと一緒か。それでいい」

ツインピークスでの小芝居ふたつ。うまくかみあわないのがこの世だ。

その1。マイク・ネルソンとスティーブン

若い頃はヤンチャだったけどうまくやって、持ち前の押しの強さで出世する人っているよね。それがマイク。マイク・ネルソン。車屋の社長になってます。スティーブンという若者が呼ばれて入ってきますが、このスティーブン、見るからにダメそうな感じで、履歴書がめちゃくちゃ、髪はボサボサ、ワイシャツはしわくちゃです。マイクにこっぴどく叱られ、事務所を出て行くスティーブン。マイク、あなたも若い頃は大概だったですけどね。

その2。フランク・トルーマン保安官と奥さんのドリス。

ハリーと電話するフランク。ハリーは具合がよくありません。すると奥さんのドリスが入ってきて、フランクに様々なクレームをすさまじい勢いでぶつけて去っていきます。まるでハリケーン。フランクの表情にはもはや、ドリスをなだめようとか、言い聞かせようとかいう思いはまるでありません。諦めの境地。ここに至るまでに、一体なにがあったというのでしょうか。

ダギーの家庭。そして会社。ダギーのこれまでの人生。

ランスロット通りのダギーの家。ジャックポッドで稼いだお金は42万5千ドルあったそうです。ダギーの拵えていた借金は5万ドル。余裕で返せますね。

どうやらですが、このダギー、酒やギャンブルにハマって、奥さんに心配や世話をかけている人物らしいです。

本当はダギー(クーパー)なんですが、表記が面倒なのでダギーで一応いきます。

魂の抜けたダギーは奥さんの車で何とか会社につきます。まともに喋ることもできないのですが、これで仕事なんかできるのかね。銃を構えた保安官の銅像に魅入られるダギー。コーヒーにも異常な執着を見せるダギーなので、クーパーだったころの記憶が脳の底に残っているのかもしれません。

しかしダギーの会社はわりと立派なオフィスビルにあります。同僚が「また夢の国に逃走中?」と言っていたので、ダギーには夢想癖なのか、または逃走癖なのか、あるのかもしれません。

会社は「ラッキー7保険会社」。同僚には親切な人もいて、ダギー、ちょっと世話はやけるけど親しまれるキャラクターなのでしょうか。周りは皆んなダークスーツなのに、一人だけうぐいす色のジャケットだし・・・

ミーティングで、同僚のトニーが報告します。

「リトルフィールド案件は合法なので、保険金は支払わない」とトニーが報告していると、ダギーに”啓示”が訪れ、「嘘をついてる」と指摘します。このダギー、ジャックポッドのときといい、ブラックロッジの力なのか、時々不思議な啓示が見えるようです。

エース捜査員のトニーを嘘つき呼ばわりしたことで、社長のブッシュネルに懲罰をくらうダギー。事件資料を夜通し調べて来いと言われます。このとき、”捜査のプロ” ”ゲーム” ”事件資料” というワードに反応するダギー。やはりクーパーの記憶は眠っているが、確かにあるようです。

カジノの責任者は、ジャックポッド30回の責任とらされボコボコに。

かわいそうに、何も悪くないのにジャックポッド30回の罰を食らうカジノの責任者。リンチ作品に時々ある、暴力のための暴力シーン。ボコボコにされる間、なんともいえず夢見心地にたたずむ3人の女性たちがいますが、このシーン、とてつもなくリンチ的ですよねぇ。

カジノ支配人の男2人にマークされるクーパー。ここからの展開もあるのか。

火よ、我と共に歩め。

ランチョ・ローザ・エステートではダギーの置き忘れた車がまだそのままです。向かいの男の子が見ています。ジャンキーの母親は気を失っているのか眠っているのか。

と、ダギーの車を奪おうとする悪そうな男たち。エンジンをかけると仕掛けられた爆弾が爆発し、泥棒は火だるまに。燃え盛る炎を見つめる男の子。ここで恐ろしい音楽がかかりゾッとするのですが、、、

Fire,walk with me. 火よ、我と共に歩め。

あの男の子の将来が心配でなりません。

鍵よ、ホテルに戻れ。

ここでジェイド様が再登場。車内でダギー(クーパー)が落としたグレート・ノーザンホテル315号室の鍵をポストに投げ込みます。おお、これで鍵がホテルに戻るのでしょうか。

後半のあらすじ。ツインピークスでは今でも何かがうごめいている。

RRダイナーには、懐かしのオリジナルメンバー、ノーマ・ジェニングスが健在です。

店にパンを配達してきたのはシェリーの娘ベッキー。お金の無心をしに来たようです(2週間で3度目)。72ドルのお金は彼氏(だっけ?夫だっけ?)のスティーブンへ。「ちゃんと返すから」とか言って、高そうなオープンカーに乗ってます。「面接で手応えがあった」とか嘘つくし、ドラッグは濫用するし、端的に言ってクズ野郎じゃないですか。でも優しいのね。この世を生きるのは優しすぎるのね。

ドラッグでハイになるベッキー。赤いシートに黄色いカーディガン、金髪に白い肌、赤いリップが映えて、音楽といい演じるアマンダ・セイフライドの表情といい、最高に美しいですね。

まあ、美しくて最高なのは一瞬なんだけどね。

アマンダ・セイフライドは『魂のゆくえ』でイーサン・ホークと共演していて印象的でした。あの映画の中でもこれとは違うけど、トリップしてるところあるな。

ツインピークス保安官事務所では、ホークとアンディが、”なくなったクーパー捜査官に関する何か”を探しています。手がかりはまだのようです。

ドクター・ジャコビーの小屋。時計が7時を打つと生放送の始まり。ホワイトテールピークの頂上から送るアジテーション。

なんと、ジャコビー先生ユーチューバーでした。そして愛聴しているのはジェリー・ホーンとネイディーン!いやあ、出てくる出てくる、懐かしい顔が。

カメラに向かってアジるジャコビー先生。意味があるのかないのかわからないけど、一応要点を書いておきます。

巨大企業の陰謀によって、我々は泥の中に沈みつつある

強烈な光なしでは、人は何も見えなくなる。

しかし岩がひっくり返り、闇が光にさらされる

クソどもは闇の陰に戻ろうとするが、我々は真相を暴く。

原料を把握しろ!箱をちゃんと読め。

子どもたちのオヤツには猛毒が入っている。食べ続けると病気だ!

土や水、食べ物が汚れ、我々の身体は毒されている!

シャベルで泥を掘り出し、外へ出よ!

輝く金色のシャベルで道を切り開け!

シャベルは29ドル99セント、送料別

・・・なるほど、あのシャベルは売り物だったですか!そりゃ、専用のシャベル塗装機械の開発も必要だよなあ・・・

25年前からハワイに傾倒するなど、非西洋的なものへの執着を見せていたジャコビー先生、どうやら今は食品添加物や、(おそらく)農薬、遺伝子組み換え食品などを敵視しているようです。これはリンチ的には共感の意味なのか、それともエコ=スピリチュアル界隈への皮肉でしょうか?

ペンタゴン。

国防総省のデイビス氏の元に、女性職員が報告にやってきます。

サウスダコタ州バックホーンの警察署で、ガーランド・ブリッグス少佐と一致する指紋が見つかったとのこと。この25年間で16度目のことで、もはや「事実ではないだろう」と諦め気味のデイビス氏。だが、もし事実なら、FBIに警告が必要と言います。

なるほど。女性職員がサウスダコタに飛ぶようです。ここで国防総省まで絡んできました。FBIとは連携になるのか、それとも牽制しあう関係になるのか。

バンバン・バー。エンディングかと思いきや、ちょっと嫌な展開が待っています。

今回の演奏は男性アーティストによるインスト。どうやらギターはデヴィッド・リンチの息子さんのようです。

可笑しいくらい目立つとこに貼られた「禁煙」のステッカーのすぐそばで喫煙する若者。新しい登場人物です。目つきが悪く、灰皿さえ使わず、灰はテーブルの上にこぼれています。

若者がタバコをやめないので店の人が困っていると、ツインピークス警察の「チャド」と呼ばれていた男が現れ、「おれに任せろ」と言います。チャド、タバコを止めさせるどころか、逆の行動をします。若者からタバコの箱を受け取ると、中には金。ウインクして立ち去るチャド。

チャド、いけすかない男として描かれていましたが、ただいけすかないだけじゃなくて、悪人でしたか・・・この金はドラッグ絡みってところでしょう。

禁煙守らなくていいんだー、ってなっちゃって、隣の席から女の子がライター借りにくるのですが、女の子をニヤニヤ笑いながら暴力的にセクハラする若者。ツインピークス史上、これほど不快な登場の仕方をした人物がいたでしょうか?

重要人物登場、の予感がします。

何かを発見するタミー。

FBI捜査官のタミーがクーパーと悪いクーパーの写真を見比べながら、指紋を調べています。何か不審な点を見つけたらしく、しきりに首をひねります。

サウスダコタ、ブラックヒルズ。悪いクーパーも超自然的な能力を持っている。

第4章でゴードンが言っていたとおり、ここで悪いクーパーが電話をかけることになります(プッシュ式の黒電話。ほんと、好きだねぇ)。しかし、不思議なことになります。

悪いクーパー、「誰にかけようか」「ミスター・ストロベリーにするべきかな」「かけてもおそらく出ないから」「わかってる。誰にかけるべきか」と言うと、すごい速さで電話番号をプッシュします。

すると、署内の電気系統が一気に異常反応を示します。警報が鳴り、防犯カメラにはテレビの映像が写り、蛍光灯は点滅。悪いクーパー、何かしらの手段で署内のシステムをハッキングしたようです。

受話器に向かって「牛が月を飛び越えた。」とだけ言って電話を切るクーパー。受話器を置くと署内が正常に戻ります。

「やつは何をしたんだ・・・」狼狽えるマーフィー署長。

アルゼンチン、ブエノスアイレス

冒頭に出てきた裸電球のある場所。室内かと思ったら違うのか、皿に置かれた黒い通信機器のようなものが2度点滅すると、今度は小さく縮んでしまいます。

まったくの謎。

エンディング。佇むダギーに明日は見えない。過去もない。

ダギーは当然、自力で家に帰ることもできず、保安官の銅像の足元で佇んでいます。警備員が声をかけますが無反応。ここでかかるインストゥルメンタルがとてもいいです。サントラを見ると、この曲はアンジェロ・バダラメンティの曲ではないようですが、今のクーパーの置かれた境遇にふさわしい、物悲しく奥行きのある、いい曲ですね。

まとめと新たな疑問。

第5章で出てきた重要と思われる情報は、

①首なし死体の胃からは、ダギーの指輪が発見された。

②悪いクーパーはボブと別れないことを選んだ。今でもボブが中にいる。

③ダギー(クーパー)には時々啓示が見える。

④ダギー(クーパー)は完全に記憶を失ったわけではない。

⑤ブリッグス少佐の指紋は25年の間に16回も見つかったが、何ら有効な手がかりはない。調べているのは国防総省。

⑥ジャコビー先生はユーチューバー化している。

⑦警察官のチャドと目つきの悪い若者は裏取引に関わっている。

⑧悪いクーパーにも、予知能力らしきものや、電気系統をハッキングする特殊能力がある(ように見える)。

新たに出てきた疑問は

(1)ダギーを狙う女性を雇っているのは誰か?

(2)女性が連絡しているのはどこの誰か?

(3)なぜ首なし死体の胃からダギーの指輪が発見されたのか?

(4)タミーは指紋から何を見つけた?

(5)ミスター・ストロベリーとは誰か?その名を聞いたマーフィー署長はなぜ焦った?

(6)悪いクーパーは誰に電話をかけたのか?

(7)「牛が月を飛び越えた」とは?

(8)ブエノスアイレスの裸電球のある場所は誰につながっている?

第5章では、これまでのストーリーの進行とともに、ツインピークスの街中も少し描かれましたね。スティーブン、ベッキー、目つきの悪い若者。新キャラたちが揃いも揃って今後が心配な感じなのは、さすがツインピークスという感じがします。

一方でビル・ヘイスティングス絡みの展開はほとんど無し。

最後に悪いクーパーが言っていた、「牛が月を飛び越えた」という言葉ですが、これはHey diddle diddleという童謡の歌詞の一節だそうで、牛というのは牡牛座を表わすのではないかとのこと。

天文に詳しい人なら、これで何かわかるのかもしれませんね。僕にはよくわかりません。天体の運行は、ブラックロッジの入り口が開くタイミングと関わっていましたから、ブラックロッジ絡みなのかな、という想像はつくのですが。

では今回はこの辺で。第6章も楽しみに見たいと思います。









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