留学は聞き方が9割━━もう英語話せないから、聞き方を極めることにした
「私はこのクラスで、一番英語が話せません」
私は大学院初日の自己紹介で、自分の名前よりも先に英語力について言及しました。
それほど英語ができないことを気にして、これから始まる授業についていけるか、不安に感じていたのです。
「英語ができないと留学なんて無理」
「英語で専門分野を学ぶのはハードルが高そう」
「英語でのコミュニケーションに苦手意識がある」
こんな思いを持っている人に、この記事をお届けします。
もう英語話せないから、聞き方を極めることに決めた
私は今、イギリスの大学院で生物学を学んでいます。渡英から5カ月が経ちましたが、今でも英語は全然話せないし、雑音にしか聞こえません。
渡英前の英語力は、出願要件ギリギリのIELTS 6.5でした。学部時代に大量の英語論文を読まされていたおかげで、リーディングとライティングはかろうじて形になっていましたが、リスニングとスピーキングに関しては壊滅状態。しかし「まぁ現地に行けばなんとかなるだろう」という最強メンタリティで、イギリスまで来てしまったのです。
パワーポイントや資料が用意されている授業はともかく、音声情報だけで進んでいく日常会話についていけません。よく語学の指標に「日常会話レベル」「アカデミックレベル」といった指標を見かけますが、私にとっては日常会話が一番難しかったです。もう、本当に何の話をしているのか分からない。そして、優しい友達が話を振ってくれても、「あっ、おっ、、えっっっっ」と陰キャ構文しか言えません。
このままだと友達を失ってしまう。英語ができない自分が大好きなクラスメイトたちにどうやって価値を提供できるか考えた結果、「聞き方を極める」ことに決めました。相手の話している内容が分からなくても、うまく返答ができなくても、楽しそうに聞く姿勢だけは崩さないということです。
なぜ聞き方が重要なのか?
人は誰しも、自分のことを認めてほしい、わかってほしいと強く願っていて、そして自分を理解してくれる人に好意を持ちます。
つまり、相手の話をよく聞いて共感を示す「聞く人」の存在が求められているのです。
しかも、「聞くこと」は「話すこと」に比べてずっと簡単です。必要な語彙が圧倒的に少ないのに、どっしりと構えて人の話を聞いているだけで、おしゃべりな人よりも大物感が出ます。
私は日本では永遠にベラベラと喋っているタイプでしたが、欧米文化の話好きには圧倒されました。人の話が終わる前に話し始めてる......。そんな筋金入りの話好きたちの中で、「聞く人」としてのポジションを確立し、この留学生活を生き残りたいと考えました。
聞き方の磨くには?━━英語らしさを出せる相槌とは
聞き方を磨くために意識した点は、3つです。
1. 相手の顔を見て話を聞く
欧米文化に親しんでいるクラスメイトたちは、目が合うと微笑んでくれます。その笑顔のまま、目を逸らさずに会話を始めましょう。
2. 2語の相槌をマスターする
「Sounds good」「Looks nice」「Make sence」など2語の相槌が使えるようになると、一気に英語の雰囲気が出ます。特に「Sounds 〜」は〜の形容詞を変えるだけで使い回せるので、おすすめです。
3. スマホを見ない
時差の関係で、基本的に学校のある時間には連絡が来ません。よって、スマホの通知を気にする必要はありません。イギリスはスリも多いので、スマホはカバンに入れて安全なところに置いたら、あとは放置しておきましょう。
聞き方を工夫したら、うまくいく
聞き方を工夫したら、こんないいことがありました。
1. 無視されない
英語が話せないのに、飲み会もパーティーも週末のショッピングもちゃんと誘われます! たまに勝手に付いて行ってますが、追い払われないから多分大丈夫です。英語が話せなくても、コミュニケーションを取りたいという姿勢を見せれば、みんな優しく接してくれます。
授業中も、当たり前ですが、先生の話をちゃんと聞いている方がその後の質問対応を丁寧にしてくれます。たとえ、日本語訛りのブロークンイングリッシュで話しかけてくる生徒だったとしてもです。ありがたや。
2. 英語が聞きやすくなった
毎日、友達の顔をじっくりと見ながら話を聞くうちに、声だけの情報よりも意味を取りやすくなっていることに気がつきました。表情やボディランゲージに注目できること、そして聞き分けが難しい音を口の形からも推測できるようになったことが要因だと思います。
3. 相手の小さな変化に気づいて、話を広げられるようになった
ヘアスタイルやアクセサリー、ネイルなどの小さな変化に気づいたら、すかさず「Looks gorgeous!」と伝えましょう。きっと喜んで、「週末にボーイフレンドとマーケットに行って、このピアスを買ってもらったの〜」なんて話してくれるはずです。相手のことをよく見ているおかげで、ロンドナーたちのさりげないオシャレにも詳しくなれます。
最後に
イギリスに来たばかりの頃は、このまま英語が話せなかったら恥ずかしくて日本に帰れないな〜、まずいな〜、と思っていました。でも最近は、英語が話せないからこそ、会話では聞き役に徹するしかないし、人の秘密も絶対にバラさない(バラせるだけの英語力がない)ので、なかなかの人格者を目指せるのでは?とも思い始めてきました。
英語ができないなら、聞き方で勝負してみる。そんな留学生活を提案したいです。
しかし、英語ができると高い学費を最大限活用できるのも事実なので、一緒に英語も頑張りましょう!
参考文献:人は聞き方が9割(永松茂久、すばる舎)