「孫との同居がうまくいっている」という話に思うこと
80代のお客様から聞いたお話。
そのお客様の住んでる地域はかつての「ニュータウン」。若い世代がどっと押し寄せ一つの新しい街を形成していったそうです。
しかし、それから40~50年が過ぎました。「街に残ったのは80代の老人ばかりで、明るい話題なんか聞かないのよ」とお客様は笑います。
さて、そんななか、ご近所さんに「お孫さん世帯との同居を始めた」お宅があるのだそう。
そのお家は、かつて「息子夫婦」と同居をしていたのですが、よくある嫁姑問題により、若い方の世代の方が都会に出ていく形で同居を解消した、苦い経験があるそうです。
その時に「同居なんてもうこりごり」といっていたはずが、今度は「孫世帯との同居」を始めたのだとか。そして、それが思いのほかうまくいっている、とのこと。
■「親子関係」って、実は難しい
実の親子での同居がうまくいかなかったのに、孫世帯とはうまくいっている、という話に、なんとなく「なるほどなぁ」と頷いてしまった私。
というのも、嫁姑問題によく見受けられるのですが、
「親子であるがゆえに難しい問題」ってのが、確実にあるんですよね。
親にしてみれば、手をかけて育てた自分の子供。何もかも分かっている。だからコントロールできるはず、という驕りがあります。
子供にしてみれば、かつて元気だった親の老いていく姿を目の当たりにして「こんな人じゃなかったのに…」という苛立ちが生じます。
世代が近い親子だからこそ、妙な驕り、固定観念がある。でも親子とはいえ赤の他人、個々の人間。だからこそ、うまくいかない。
実際に、ご高齢のお客様から「子供の考える事が分からない!」などと言う愚痴をよくお聞きするのですが、それって「子供のことなら分かるはず!」という慢心がゆえのセリフなんですよね。
■「分かり合えない」のがデフォルトだと、うまくいく
しかし、孫世代ともなると、平均して60歳ほどの差があります。
こうなるともう、別の人種です。宇宙人みたいなものです。
分かり合えるはずもなければコントロールするなど無理。絶対に無理。受けてる教育も違うし、服装だって全く違う。
事実、私は40代ですが、60歳年上と言えば100歳。戦前を生き抜いた人ということになりますし、生活様式から何もかも違うわけで、分かり合える気がしません。
「分かり合えない」のがデフォルト。でも、血筋は繋がっている。
こういう関係って、もしかしたら「親子」よりも、より気楽に付き合えるのではないでしょうか。
■メリットが多い「孫世代との同居」
おじいちゃんおばあちゃんにしてみれば、若い人材と同居できるというのは心強い面があります。荷物を運んでもらったりするのも、60歳年下なら楽勝だったりしますもんね。
育児に妙に口出ししてこないというのもメリットかな、と思うんです。
親子関係だと、「私の時代はこうだった、だから教えてやる!」と言ってしまいそうになるんですが、2世代離れているとお互い未知の領域。手伝いはできるけど、余計なおせっかいまではできそうにない。言われたことだけやっておく、という適度な距離を保てるんですよね…(もちろんそうじゃないおじいちゃんおばあちゃんもいると思うんですが)
孫世帯にとっては、(これは聞いた話ですが)家屋を提供してくれるのが有難いのだそう。
今のお若い世代、共稼ぎでないと家を持つことも難しく、そこに子育てまで加わるのはかなり無理ゲーです。しかし祖父母との同居で少なくとも住居費が相当に浮かせられると、(お客様のご近所さんの話では)おたがいにwin-winなのだそうです。
お嫁さんの方も気楽なんじゃないかな、と思ったりします。
「義理の母」というのは近づきがたい存在ですが、「義理のお婆ちゃん」ともなれば適度に他人ですしね…。
穿った見方をすれば、「若い(無料の)介護要員を搾取しようとしている」のかな? とも思ったのですが。少なくともそのお宅では上手くいっているのだそうです。
さらに。その話を聞いて「うちも孫世帯と同居ならいいかも…」と思う方が増えたのだとか。
我々の親世代で核家族化が進んだわけですが、それが更に一周して、新しい形での「同居」が生まれているのかもしれませんね。