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008.アイリス。

僕が踵を擦り減らしていると
母さんが言うんだ。
「愛は無償よ、どうか忘れないで」

固くなったその足の裏を見て
両の手で包むけれどもう戻らないんだね。

けれどもキミは
泣かないでと言うんだ。
泣いてもいいよと僕は唄うんだけれど

ねえ、地球が自転も公転もやめたときに
その虹彩にいつか僕は引っかかるかな

ひとを許すのは勇気が要るね
自分を許すならその何倍もさ

立ち止まるのが恐いのか
進み続けるのがそうなのか
なんだかよくわらからなくなった僕は

辞めないだけマシだなんて言ってみるけど
辞めるのもまたある種の勇気で

「よくわからないんだ」
何度も練習した台詞みたい
すらすらの擬態語はとてもお似合いさ

知るのは恐いよ
知らされるのはもっと。

ねえ、地球が自転も公転もやめたときに
その側頭葉にいつか僕もひかかるかな

馬鹿みたいなメタファーをいつか笑い飛ばしてと

「明日のために今日は寝るよ」
今日を生きない僕らに明日はない。


けれどもおやすみ
ぼくもそうだから
だからおやすみ

遠くで踵を鳴らす音が聴こえる。

iris-out.

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