医業類似行為の話
医業類似行為、我々柔道整復師や鍼師・灸師・按摩マッサージ指圧師にとっては屈辱的な言葉であった。
そもそも医業は医師・歯科医師しか行えないものであるのだから、それ以外は医業ではなく、その類似行為でしかないと言われれば致し方ない様に思われる。しかし、この『医業類似行為』という文言が発生した経緯に、上記4資格の者たちは含まれてはいないというのが我々の勝手な解釈でした。最近では明確に医業類似行為に含まれており、この勝手な解釈から卑下されているかのように感じている人もおられるかと思います。
私の師が行政との折衝等に携わっていた頃、師より聞かされていたのは
1.医療行為
2.施術行為
3.療術行為
4.放任行為
(字が間違っているかもしれません、放任行為という文言が記された資料が見つかりません)
という4つに区別され
広義の医療従事者を1と2とし、3と4とは広義の医業類似行為者とされていました。
広義の医療従事者を大別して
1.医療行為者
医師・歯科医師または医師の指示の元医療に携わるもの
2.施術行為者
按摩マッサージ指圧師・鍼師・灸師・柔道整復師
となり
広義の医業類似行為者を大別して
3.届出医業類似行為者
療術師ともいわれ一代限りとし開業が認めらていた。指圧師は後に按摩
師に組み込まれ国家資格となる。柔道整復師も初期はここに含まれて
いる。
4.無届医業類似行為者
無届で医業類似行為を行うもので、本来は違法行為である。法律で規定
されていおらず、数々の規制・取り締まりを 潜り抜け現在では整体・カ
イロプラクティック、リラクゼーション・エステサロン等として営業さ
れている。
と狭義に分けられていた。
等と師に聞いていただけで、この内容を明確に規定する法律等はありません。
現在では医業類似行為は
1.有資格の医業類似行為
と
2.無資格の医業類似行為
とに大別され
上記施術行為者は1の有資格の医業類似行為として分類されています。
では、何故医業類似行為に分類される事を嫌がっていたのでしょう。
過去、臨床整形外科医会は発足当時から柔道整復師の消滅を願っており「50年後には日本から骨接ぎをなくそう」というスローガンの元活動してきたと師や先人たちから聞かされています。そして柔道整復師の資質の低下に相まって、度々柔整業界を糾弾します。
しかし、その糾弾は適切な内容の指摘で、我々柔道整復師の中で一部が本当に間違った事をしているからであり、糾弾という言葉が不適切な程、柔道整復師業界は腐敗していきます。つまり、柔道整復師の側に問題がある。これが本質なのかもしれません。
しかし、こういった糾弾ともとれる指摘の枕に
「そもそも柔道整復師は医業類似行為であり、医療ではない。医療の真似事だ。あいつ等の言動には科学的根拠がないのだから」と付く。
そういった枕詞を用いることにより『適切な医療』から我々を排除し、医療従事者ではなく似非医療従事者だというレッテルを貼る事になります。この事から我々有資格の医業類似行為と無資格の医業類似行為者とが混同を招かれ、この文言に嫌悪を抱くこととなります。
この文言だけを鑑みれば、これは職業弾圧ともとられ、それは許される行為ではない。が、しかし現在の柔道整復師の状態と医師側の適切な指摘により、医師側の内容の方に正当性があり、やはり、問題は柔道整復師側との結論になる事は目に見えている。
そして
柔道整復師法第十八条 都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市長又は区長。以下同じ。)は、衛生上害を生ずるおそれがあると認めるときは、柔道整復師に対し、その業務に関して必要な指示をすることができる。2 医師の団体は、前項の指示に関して、都道府県知事に意見を述べることができる。
にあるように医師の団体にはその権限もある。医師側からすれば当然のことをしているだけなのである。
過去幾人かが国会に、この「あはき師」及び「柔整師」が医業類似行為ではないという解釈に対し質問主意書を提出し、文言の撤回を試みたが、何れも叶う事はなかった。
ここに最近の国会答弁を例とし
第198回国会(常会)
答弁書
答弁書第六二号
内閣参質一九八第六二号
令和元年五月三十一日
一 あはき法における医業類似行為の定義について
1 「医業類似行為」は、一般的に、法的な資格制度がある「あん摩マッサージ指圧」、「はり」、「きゅう」といった施術と、法的な資格制度のないカイロプラクティック治療、タイ式マッサージといった施術という二つに大別された施術を含む用語と理解されているが、そのように理解されていることを政府は認識しているか。
2 「医業類似行為」には、広義の医業類似行為と狭義の医業類似行為とがあり、広義の医業類似行為は、狭義の医業類似行為に、あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅう、柔道整復など法律により公認されたものをあわせた概念であると理解されているが、本理解について政府の認識を示されたい。
一の1及び2について
御指摘の「一般的に・・・二つに大別された施術を含む用語と理解されている」及び「広義・・・と狭義の医業類似行為」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。なお、厚生労働省としては、「医業類似行為」とは、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある「医行為」ではないが、一定の資格を有する者が行わなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為であると解しており、それには、あん摩、マッサージ及び指圧、はり、きゅう並びに柔道整復のほか、これら以外の手技、温熱等による療術行為であって人体に危害を及ぼすおそれのあるものが含まれると考えているところである。
つまり医師が行わなければ危険な行為は医師のみが行える『医行為』であり、医業類似行為ではあるが一定の資格を持っているものが行わなければ人体に危険を及ぼす行為は資格保有者のみ行っても良いとのこと。
3 あはき法第十二条は「何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。」と定めている。同条の「医業類似行為」の定義については、仙台高等裁判所が昭和二十九年六月二十九日の判決において、「「疾病の治療又は保健の目的を以て光熱器械、器具その他の物を使用し若しくは応用し又は四肢若しくは精神作用を利用して施術する行為であつて他の法令において認められた資格を有する者が、その範囲内でなす診療又は施術でないもの」換言すれば「疾病の治療又は保健の目的でする行為であつて医師、歯科医師、あん摩師、はり師、きゆう師又は柔道整復師等他の法令で正式にその資格を認められた者が、その業務としてする行為でないもの」」と認定している。
この判決によれば、あはき法第十二条における「医業類似行為」には、あはき師等が資格の範囲内で行う施術は該当せず、無資格者が行う施術のみが含まれるものであると考えられるが、政府の見解を明確に示されたい。
4 厚生省は、あはき法第十二条が憲法第二十二条に反するか否かが争われた昭和三十五年一月二十七日の最高裁判所大法廷判決に関して、同年三月三十日付の厚生省医務局長通知「いわゆる無届医業類似行為業に関する最高裁判所の判決について」(医発第二四七号の一)の中で、「この判決は、医業類似行為業、すなわち、手技、温熱、電気、光線、刺戟等の療術行為業について判示したものであって、あん摩、はり、きゅう及び柔道整復の業に関しては判断していないものである」との解釈を示している。したがって、厚生労働省においても、あはき法第十二条における医業類似行為には、あはき師等が資格の範囲内で行う施術は該当しないという認識は共通のものであると考えられるが、政府の見解を明確に示されたい。
5 前記一の1及び2において、一般的な解釈として「医業類似行為」には法律により公認されたものが含まれるとする一方、前記一の3及び4において、あはき法における「医業類似行為」には、あはき師等が資格の範囲内で行う施術が含まれないとする場合、国民の「医業類似行為」の理解に食い違いが生じると考えられるが、政府の見解を明確に示されたい。
6 前記一の5において、国民の「医業類似行為」の理解に食い違いが生じることを認める場合、その食い違いは一般国民には極めて分かりにくく、特に国家資格を持つあはき師等が資格の範囲内で行う施術とそれ以外の施術との混同を招き、国民が本来望まない施術を受けることで健康被害を生じさせるおそれがある。混同を招かないような施策が必要と考えられるが、政府の見解を示されたい。
7 あはき法第十二条における「医業類似行為」に、あはき師等が資格の範囲内で行う施術が含まれないとするのであれば、あはきは何をもって「医業類似行為」とされるのか。法令等をもって明確に根拠を示されたい。
8 平成三年六月二十八日付の厚生省健康政策局医事課長通知「医業類似行為に対する取扱いについて」(医事第五八号)における「医業類似行為」の定義を示されたい。また、あはき法第十二条における「医業類似行為」に、あはき師等が資格の範囲内で行う施術が含まれないとする場合、同通知は誤った法解釈を含んでいるものであると考えられるが、政府の見解を示されたい。
一の3から5まで、7及び8について
御指摘の「あはき法第十二条における「医業類似行為」には・・・無資格者が行う施術のみが含まれる」、「あはき法第十二条における医業類似行為には・・・該当しないという認識は共通のものである」、「一般的な解釈」及び「国民の「医業類似行為」の理解に食い違いが生じる」の意味するところが必ずしも明らかではないが、厚生労働省としては、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号。以下「あはき法」という。)第一条の規定において「医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない」とされていること、あはき法第十二条の規定において「何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない」とされていること、あはき法第十二条の二第一項の規定において「第一条に掲げるもの以外の医業類似行為」とされていること等から、これらの規定に規定されているものを含めたあはき法における「医業類似行為」自体には、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許を持つ者が行うあん摩、マッサージ若しくは指圧、はり又はきゅうが含まれると解しているところである。また、一の1及び2についてで述べたとおり、同省としては、「医業類似行為」は、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある「医行為」ではないが、一定の資格を有する者が行わなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為であると解しているところであり、それはお尋ねの「平成三年六月二十八日付の厚生省健康政策局医事課長通知「医業類似行為に対する取扱いについて」(医事第五八号)」における「医業類似行為」においても同様である。
解釈の問題ではあるが、
質問側からすれば「あはき師」「柔整師」とも医業類似行為には含まれていないだろ!と強調したい内容の判決に対し
政府側は
お前らも医業類似行為だが、資格の範囲内の行為だけしなさい。資格外の医業類似行為、この場合は医師の真似事の様な事、つまり外科的処置や投薬、診断行為などはするなよ。と、無資格者はマッサージとか鍼とか骨接ぎとかするなよ。の解釈なのだと思う。
二 あはき師以外の者による医業類似行為を禁止する理由について
1 前記一の4の判決において、最高裁判所は、あはき法第十二条があはき師以外の者が医業類似行為を業としてはならないことを規定するのは、「これらの医業類似行為を業とすることが公共の福祉に反するものと認めたが故にほかならない」とした上で、「ところで、医業類似行為を業とすることが公共の福祉に反するのは、かかる業務行為が人の健康に害を及ぼす虞があるからである」と認定している。
つまり、医業類似行為は人の健康に害を及ぼす虞があり、公共の福祉に反するものと認められることから禁止されるものであると読み取れるが、政府としてこの判示をどのように解釈しているのか、具体的かつ明確に示されたい。
3 あはき法第十二条において禁止される「医業類似行為」が、「人の健康に害を及ぼす虞」のある業務行為のみを指していると解釈する場合、その根拠を明確に示されたい。
4 医業類似行為が「公共の福祉に反する」かどうかは、「人の健康に害を及ぼす虞」の有無によってのみ判断されるのか、政府の見解を示されたい。また、「公共の福祉に反する」かどうかを「人の健康に害を及ぼす虞」の有無のみで判断する場合、その根拠となる法令を示されたい。
5 前記二の4について、根拠となる法令がない場合、「事前に法令で罪となる行為と刑罰が規定されていなければ処罰されない」とする罪刑法定主義の原則に反するおそれがあると考えるが、政府の見解を示されたい。
二の1及び3から5までについて
お尋ねの「根拠となる法令」及び「罪刑法定主義の原則に反するおそれがある」の意味するところが必ずしも明らかではないが、厚生労働省としては、御指摘の「あはき法第十二条が憲法第二十二条に反するか否かが争われた昭和三十五年一月二十七日の最高裁判所大法廷判決」は、憲法第二十二条第一項が保障する職業選択の自由に鑑み、あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法等の一部を改正する法律(昭和三十九年法律第百二十号)第一条の規定による改正前のあん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法(昭和二十二年法律第二百十七号)が、同法第一条に掲げるものを除くほか、医業類似行為を業として行うことを禁止処罰することは、「人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局する趣旨と解しなければならない」としたものと考えており、当該判決で示された内容を踏まえ、あはき法における「医業類似行為」は「人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局」されるものであると解しているところである。
「人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局する趣旨と解しなければならない」とあるように、無資格の医業類似行為者は人体に害を及ぼす危険があるあはき法における医業類似行為つまりマッサージ等は行ってはならない。という事である。
これらの事から「あはき師」及び「柔整師」は有資格の医業類似行為者であり、この者たちが資格の範囲を超えた医業類似行為をしてはならない。といった事と、無資格の医業類似行為者は上記4資格の業務範囲内の行為を禁止したもの。という事になる。
残念ではあるが、先人たちの都合の良い拡大解釈は、この質問により看破され、我々は医業類似行為者であるという事がより明確となった。
法的な文言はどちらともとれる書かれ方をしている。よってこの様な拡大解釈も捉え方としてはあり得るので、気持ちは解らなくはない。
では、なぜ先人達はこの拡大解釈ともとれる主張をしてしまったのか。
昭和22年12月に按摩はりきゅう柔道整復等営業法の成立に伴い当時の厚生省が解説をした『あん摩はりきゅう柔道整復等営業法の解説』で述べられている。「医業とは、医の行為即ち人体の疾病の診察治療を業とすることであると解すれば、あん摩、はり、きゅう及び柔道整復等の行為が、人体の疾病の治療を目的とする行為である以上矢張り医の行為であり、これを業とすることは医業に属することになる。」とあり、また「これらの施術者が、その限られた業務の範囲内においてではあるが医業の一部をなし得ることを規定」と説明している。
これは当時の厚生省の行政文書にはあたらないものと思われるも、厚生省の見解として『医業の一部』であるという解釈であったものである。
あん摩はりきゅう柔道整復等営業法第一条では
「ここにいう免許は、医業禁止の一部解除を内容とする国家の行為であり、免許を受けたものは、夫々の業務内で医業の一部をなすことが許されることになるのである。」と『医業の一部』ではあると認めるも同第12条では
「何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない」と規定されている。
ここで既に医業類似行為であると記されている。
その後、各資格が国家資格へとなっていった際に、当時の厚生省の医事課長が柔道整復師などは医師の指導の元業務を行う他の医療従事者同様に「パラメディカル」であると説明されたことで柔道整復師達は自らも医療従事者であると自覚していったのである。が、またこれも行政上規定されたものではなく、おそらくリップサービスであると思える。
更に、厚生省の医事課長は厚生省の予算編成の便宜上医業類似行為としている旨の発言もあり、医業類似行為としての規定は便宜上なのだという拡大解釈に追い打ちをかける事となる。
いろいろと調べてみるものの、一貫してこれらの資格は医業類似行為として規定されたものばかりであり、それ以外の文言は公的・行政上の文書には見当たらなかったのである。
先人たちから聞かされていた医師らの「医業類似行為は所詮医療の真似事だ」という偏見ともとれる発言が実際にあったのかは定かではないが、各資格者の地位を改善すべく行動を起こしたのであり、力及ばずもその努力には感謝を申し上げたい。
加えて、医師側からの指摘には、『業務範囲を守れ』という内容が殆どであり、時に過激な内容があったのかもしれないが、終始それに尽きている。このことから悪質な一部柔道整復師が行っている越権行為ともとれる施術は自らの首を絞めているだけの事であり、法律・法令とも遵守する事が絶対である。
結論として
医師以外のものが手技、温熱、電気、光線、刺戟等の療術行為業を行う事を医業類似行為と規定され、それらを行えるのは医師を除き按摩マッサージ指圧師・鍼師・灸師・柔道整復師の免許を持っているものに限られ、各業務範囲にて規定されている。
これらは、各資格の業務範囲内の施術を行うべきで、それ以外の医業類似行為は禁止されている。すなわち、柔道整復師が診断・外科手術・投薬・鍼・灸などを行ってはならない。また無資格の医業類似行為者は上記4資格に規定される行為は禁止されている。ということであり遵守されるべきである。
また、医師側から本当に「医業類似行為は医療の真似事である」という内容の指摘があり、その表現が偏見的・差別的であるのであれば、その旨を行政・司法等において我々の行う医業類似行為とは差別の対象であり、卑下されるべき職業なのであるかを審議していただく必要もある。
おそらくは「業務範囲を遵守し適切に行って下さい」と言われるだけであり、偏見・差別ではないと判断されるものと思われる。
こういった先人たちの活動は徒労に終わったわけではない、しかし現在の柔道整復師業界のあり様を見れば、後輩たちが自ら破壊していく様に、徒労に終わったと感じてしまうのかもしれない。申し訳なく思う。