柔道整復師バッシング?いやいや・・・の話
接骨院・整骨院が現在乱立し、過当競争の一途を辿っています。
今朝(2023/3/10)のヤフーニュースに
『健康被害は5年で500件以上!マッサージで骨折、お灸で火傷、気軽に行ってはいけない「整骨院」』https://news.yahoo.co.jp/articles/9a5bb455e4e32f1c8352c4f2a118f70ec085c57cという記事がありました。
たびたびこういったニュースを見かけます。
柔道整復師の立場からすると、腹立たしく反論したくなる内容ですが、こういった話はほぼ事実でもあり、腹を立てるなんてことは論外で、自分たちの業界へ向けて是正を促す事の方が必要です。
先ず、接骨院がこんなにも増えてしまった経緯として必ず挙がってくるのは福岡裁判と呼ばれる、柔道整復師養成学校の設立に関する裁判が端を発します。それ以前は養成学校全国に14校しかなく、乱立・過当競争を防ぐことを目的とし、新設校の開校は制限されていました。しかし、この制限に異を唱え裁判を起こした事により、厚労省は敗訴し新設校の開校が認められてしまいました。
この時、厚労省側は上告を敢えてしませんでした。お前らがそのつもりなら過当競争へ勝手に進めと言わんばかりに、いや、言われたのですが、この裁判は本来原告のみの開校であれば問題はなかったのです。
しかし、判決の内容から誰が開校しても差し支えないと判断した学園産業者達は挙って開校をし始めたのです。14校しかなかった養成学校はわずか2.3年で100校に達し、年間の資格取得者は1200人から6000~7000人にまで増加しました。
厚労省の言った通り過当競争時代へと突入します。
この時に柔道整復師が一丸となって阻止するべきだったのですが、判決が出てしまっては誰も手が出せず、また教員免許を持っている柔道整復師にとって養成校での講義は魅力的なアルバイトになります。当時は教員免許を持っている柔道整復師は柔整団体の元締めであった日整(現公益社団法人 日本柔道整復師会)の幹部たちに多く、自らの権威と収入の為に進んで養成学校に雇われていきました。かく言う私も教員免許を持っており、養成学校に勤めた経緯がありますので、共犯者みたいなものです。私のような若輩には給料も安く、顎て使われていたので、いい思い出ではありませんが。
学校の乱立から生徒の取り合いになり、14校時代では「嫌なら辞めて下さい」という強気な養成校も、現在では学生様はお客様です。といった対応を余儀なくされ(当然と言えば当然ですが)、お客様が国家試験に合格出来るように最善を尽くす、云わば柔整国家試験予備校のようになっていきました。
養成学校の目的としてはそれは正しい事なのかもしれません。
しかし、柔道整復師の指導カリキュラムには国家試験に対するカリキュラムしか存在せず、当時は資格取得後すぐに開業できるにも関わらず、保険請求に対する指導や倫理観などは学校教育には含まれていませんでした。
そして、そのカリキュラムには当然施術方法の指導も入っておらず、手技療法や物理療法等の指導も就職後に就職先で手解きを受けるまで何も知らない状態で免許が交付されます。
現在では1・2年程度の実務経験がを無けなければ開業するにあたって必要な研修に参加できなくなりましたが、1・2年です。何が経験できるのでしょうか?この1・2年の研修期間の内、その研修内容は問われず、骨折や脱臼といった症例を一度も診た事がなくても構わないのです。
昔は師弟関係、制度とまで言いませんが、師の元で研修を受けるのが慣習で、師から卒業を許される過程の内、『肘内障・肩関節脱臼・前腕骨遠位端部骨折・顆上骨折』この4症例を整復・施術を完了できなければ認めてもらえない慣例がありました。法的な規定ではありません、あくまで自分たちが自信をもって開業できるにはこれ位は出来なければという思いもあったのです。
しかし、現在開業・勤務している柔道整復師にとっては、こういった症例は教科書でしか見たことがなく、UMAのような存在になってしまいました。
こういった輩が増えている現状でも養成学校はその責任など感じることもなく、今日も学校説明会に精を出している事でしょう。
全ての責任は我々柔道整復師個々人と養成学校とにあり、一人ひとりの柔道整復師が担わなければなりません。ですが、柔道整復師は個人事業主がほとんどで、気が付けばお山の大将になり、我関せずとなります。
日整の崩壊と共に各人で独りよがりをするに至っています。柔道整復師が危機意識を持ち一丸となり是正する日が来ることを願いながら、自身では何もしていない現状に我ながらあきれつつも、無力であることに反省をしています。
柔道整復師の問題点として、こんなにも養成学校が増えているにも関わらず、研究機関を作らなかった事も挙げられます。
医学の世界ではエビデンスが重視されます。我々柔道整復師も医学の真似事の様な立ち位置のままでいるのではなく、医師や医学部・大学研究機関に頭を下げてでも協力を得て研究をするべきです。
独自の研究機関を設け、医学的な論文を書けるようになり、柔道整復師独自の技術や有効性を証明出来ないままでいれば、誰が認めてくれるのでしょう。
柔整業界が日整の崩壊とともに多数の保険請求団体に分かれ、指導体制も崩壊した現状こそ、どの団体にいても所属できる研究機関を設け、医師や医学者に認めてもらえる様な研鑽をしてこそ医接連携等という言葉を使っていいのだと思います。医接連携は必要です、ですがこの様な恥ずかしい状態では医師側が難色を示すのも当然だという事です。
これまで日整の崩壊と悪口ともとれる内容でしたが、揶揄表現であり、実際には崩壊したわけではありません。
現状を一番把握しているもの日整です。柔道整復師の正しい発展を考えているのも日整です。私は日整会員ではありません。昔いた厄介な先輩に先輩面され続けるのが嫌で日整には入りませんでした。こういった先輩後輩の関係に嫌気が差したのが崩壊の原因であると思われますが、最近ではそういった事はなくなってきたそうです。
先に述べたように日整が主導し、新しい研究・研修団体の設立を切に願っています。そして過剰になった養成学校の自然淘汰を待つのではなく、柔道整復師たちの手で改善すべく自浄化を図れる運動を考えなければなりません。
厚労省からは「それ見たことか」と思われるでしょうが、当時の柔道整復師達は福岡裁判による学校の新設には誰一人賛同しておらず、知った時には判決が出ていた事を補足しておきます。
今朝の記事に出ていた柔道整復師による被害です。これについての私見を述べます。
■マッサージなどが原因で骨折(脊椎圧迫骨折、肋骨骨折など)
よく聞く話です。これは柔道整復師が手技療法について勉強していない 事が原因です。先ほども述べましたが、養成学校では手技療法の講義はカリキュラムに存在しません。ですので、自らが何かしらの方法で習得しなければなりません。我々の時代では、師匠の体をお借りして手解きを受けながら練習をさせて頂き、師匠の許可が下りて初めて患者さんに触れる事が出来ました。現在では、就職した際には直ぐに患者さんの施術に当たらせられるらしく、また雇用側にも何のプライドもなく従事させていることに問題があります。伝統医療等と謳っている業界が聞いてあきれる顛末です。
また、マッサージと表記されていますが、柔道整復師が行うのは手技療法です。マッサージという言葉は適切ではありません。マッサージを業として行えるのは医師を除き按摩・指圧・マッサージ師のみです。
ただし、柔道整復を行う際にマッサージ的手法を取り入れることは差し支えないとの文言が過去の通達か判決によって認められています。曖昧ですいません。これはあくまでも柔道整復を目的としており、マッサージが目的であってはならないという事です。『保険でマッサージが受けられます』ではありません。
整体やカイロプラクティックも同様ですが、これらは国家資格ではなく民間資格ですので、柔道整復師が行うものではありませんが、施術に取り入れている人もいるそうです。これらの行為にも事故が多い様です。
■お灸などによるヤケドやかぶれ
柔道整復師がお灸を使う事はあり得ません。これは灸師のお仕事です。お門違いの内容ですが、鍼灸接骨院として開業している場合ではあり得る話です。しかし、これは接骨院と記載するのはお止め頂きたい。
ただし、電療による火傷はあり得ます。接骨院による被害というのであれば表記を正しくして頂きたいものです。
■骨折や脱臼に気がつかずマッサージ
これもよく聞くというより、肘内障でマッサージをされ泣きながら当院へ連れてこられたお子様がいました。適切な判断が出来ない柔道整復師が多い事と、普段から外傷性の損傷に対する施術を行わない、いわゆる『マッサージ整骨院』に多く、そういった店舗は早く無くなってもらいたいものです。大体外傷を扱わないのであれば接骨院と名乗らないで頂きたい。
■がんの転移による腰痛にもかかわらず施術を継続
これは正直なところ、柔道整復師には判断が出来ません。なので外傷の起因がない症状は柔道整復師の業務範囲外なのですが、明確な原因をもって来院されたとしてもあり得る話です。問診票にがんの既往があった場合には先ず主治医の判断を伺う様お伝えしますが、そういった方は慣れたもので、既に診察を受けてからの来院もありました。
■医者が出した薬の服用を中止させる
言語道断です。しかし柔道整復師の中には痛み止めを何故か毛嫌いする人がいます。投薬に関しては医師と患者との間で行われるべき事であり、我々が感知する事はあってはなりません。
■医者が処方した装具を無断で取り外す
骨折の方が転院されていらした場合にこの様なことが起こるのだと思います。しかし、応急処置を除き骨折・脱臼に関しては医師の同意が必要です。転院されたからと言って施術をしていいわけではありません。
■医師免許がないのにエコー検査をして診断
ここで問題なのは『診断』です。柔道整復師は診断する事が出来ません。
しかし、施術に関わる判断の参考とする超音波検査は認められており、診察の補助として行う事は禁止されています。
つまり、エコーを使用し「ここ折れてるね」はダメなのです。骨折なのか捻挫なのか判断に困った際に使用し、「骨折しているかもしれないので整形外科を受診しましょう」までは許されています。
また、「これが肝臓だね、ちょっと腫れているかもしれないよ」なんてことを言われたら以ての外です。高い検査機器を導入したので調子に乗っているだけですので、そういった施術者には注意して下さい。あくまで判断の参考です。
こういった事例が言いがかりなどではなく、我々も耳にしたことのある事例です。このような記事を見ると攻撃されたように錯覚をしてしまいますが、内容を真摯に受け止めることが重要です。いくら反論しても良いでしょう。しかし、被害にあっているのは整形外科医ではなく患者さんです。
我々柔道整復師各人が倫理観を持って施術に臨む事を再認識させてもらえる内容だったと思います。
バッシングと捉えるのはお門違いです。過去にも柔整バッシングだといってご指摘に対し、挙って反論した経緯がありました。
近畿大学整形外科教授 浜西千秋先生によるものだったと記憶しています。
柔道整復師達は「これはいじめだ」等と馬鹿なことを言っていました。私も浜西先生のご指摘の内容に触れると、その内容の的確さに感銘を受けました。反論はあってもいいのです。ただ反論だけをしてご指摘に対し是正しないのは柔道整復師の悪い所であり、結局柔道整復師がアホなだけなのです。
接骨院を選択し受診される方々には十分に注意をして、より良い施術所を選択してください。どこが良い施術所かは判断材料が乏しいのですが、先ず看板を見て下さい。
柔道整復師が看板に表記していいのは
柔道整復師である旨並びにその氏名及び住所
施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
施術日又は施術時間
その他厚生労働大臣が指定する事項
のみで、
柔道整復師の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたってはならない。
といった事が法律に定められています。
ですので、これ以外の文言が提示されている時点で法律違反です。
判断材料として却って情報は少ないのですが、法令を遵守しているという事は解るはずです。
また、『整骨院』も厳密には違反となり、今後使用は禁止されるそうです。
使って良いのは『接骨院』『骨接ぎ』『柔道整復院』の3つだけです。
ご判断の参考にして下さいませ。