村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス(上)』
村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス(上)』講談社、2004年
彼はいつも不安そうな目で人の顔を見た。自分はこれから何を失おうとしているのだろう、というような目で。そんな目つきのできる猫は他にはちょっといない。でもとにかく死んでしまった。一度死んでしまえば、それ以上失うべきものは何もない。それが死の優れた点だ。
言い回しがいいね
不安そうな顔→死の優れた点 にシームレスにくだをまく感じ
死の優れた点について言いたかったんだろうな
目につくまい目につくまいとしていると、自然に目につかなくなっちまうものなんだよ。
ひょっとして村上春樹を読むことは酒を飲むようなものなのではないか
気持ちよくなってる酒飲みの気持ちいい(どうでもいい)話に近い
村上春樹自体バーテン上がりだし
みんなはむしろ目につくよう努力をしてるというのに、どうして君はそんなことをしてしまったんだろう?
あんたは自分が何を求めているのかがわからない。あんたは見失い、見失われている。何処かに行こうとしても、何処に行くべきかがわからない。あんたはいろんなものを失った。いろんな繋ぎ目を解いてしまった。でもそれに代わるものがみつけられずにいる。それであんたは混乱しているんだ。自分が何にも結びついていないように感じられる。そして実際に何にも結びついていないんだ。
自分の位置が不明だと、自分も、他人も、自分を世界にどう位置づけていいのかが分からない
そのため、協力もできない
利用可能性が低い
自分に合っていなければ関係性を解いてもいいだろう。ただ、そのままであれば、やはり人はどうなることもできない
あんたはこれまでにいろんな物を失ってきた。いろんな大事なものを失ってきた。それが誰のせいかというのは問題じゃない。問題はあんたがそれにくっつけたものにある。あんたは何かを失うたびに、そこに別の何かをくっつけて置いてきてしまったんだ。まるでしるし(﹅﹅﹅)みたいにね。あんたはそんなことするべきじゃなかったんだ。あんたは自分のためにとっておくべき物までそこに置いてきてしまったんだな。そうすることによって、あんた自身も少しずつ磨り減ってきたんだ。どうしてかな? どうしてそんなことをしたんだろう?
誰のせいとかじゃなくて、問題が問題なんだよね
関係を切るたび、その関係を切るという問題が、自分の大切な価値観に起因していると考えて、それを捨ててきてしまった(と解釈した)
踊るんだ(﹅﹅﹅﹅)。踊り続けるんだ(﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅)。何故踊るかなんて考えちゃいけない。意味なんてことは考えちゃいけない。意味なんてもともとないんだ。そんなこと考えだしたら足が停まる。
意味のないことに意味を見いだして自分の考えを変えていたらきりがないし、すり減っていく
家庭と学校という二種の強固な枠の中に閉じ込められて、僕は苛立っていた。苛立ちの年だった。僕は女の子に恋をしていて、それはもちろん上手くいかなかった。何故なら恋がどういうものかということさえ僕は知らなかったのだから。僕は彼女と殆どまともに口をきくことすらできなかった。僕は内気で不器用な少年だった。教師や親の押し付けてくる価値観に意義を唱え反抗しようとしていたが、異議申し立ての言葉が上手く出てこなかった。何をやっても手際良く行かなかった。
(中略)
でも、僕は物事の新鮮な姿を見ることはできた。それは素敵なことだった。匂いがきちんと匂い、涙は本当に温かく、女の子は夢のように美しく、ロックンロールは永遠にロックンロールだった。
意味のないことならばどのように考えてもいいのに、自分にとっての意味を上手く話せずに、コンフリクトを起こした
でも、どうでもいいことでつまづいていたからこそ、日々は山あり谷ありでドラマチックだった