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沼尻元湯 -硫化水素湧き出る福島の野湯-

"温泉の歴史は、私たち人類の歴史より永いものであると言われております"
-日本温泉協会ホームページより引用(2024.10.1閲覧)

 現代では温泉といえば、スーパー銭湯、旅館など、人間が管理する施設を思い浮かべる人間が大半である。だが人類が初めて経験した温泉とは、地熱により暖められた水が湧き出してくる、いわゆる"野湯"であったのではないか。

 今回紹介するのは、都心から車で4時間で到着でき非常にアクセスが良く、かつ湯の温度、質なども申し分ない温泉、沼尻元湯である。
 福島の雄大な自然の中を歩み、自然の中で温泉に自分の身を預ける、極上の体験があなたを待っている。

-沼尻元湯へのアクセス-

 まずは最寄りの駐車場は、google mapで「あだたら山 沼尻登山口駐車場」と検索すれば出てくる。駐車までは細い砂利道を車で行くことになる。

駐車場の様子


 そこから下の画像のような登山道をずっと進んでいく。



 30分から1時間ほど歩むと、今までの森の景色とは一変し、一筋の川が流れる谷道を見つけることだろう。驚くべきことにこの谷道に流れる川がすべて温泉となっている。この谷まで道に沿って降りていくことになる。


森を抜けていくと、温水が流れる川を一望できるポイントに到達する


ここを下っていく

 谷まで降りて、川を下流に向かって下っていくと、ちょうどよい湯船がある。自分が行ったときは、先客もおらず仲間のみで野湯を楽しむことができた。湯温もちょうどよく、かつ不潔でなく泉質もよい、素晴らしい野湯だった。

素晴らしい温泉
最高の体験だった
地域の温泉会社の施設もあり、ふもとの温泉に源湯を供給している


温泉が流れる谷一帯のドローン空撮①
ドローン空撮②

-装備、注意点などについて-
①絶対にサンダルなどではいかないことをお勧めする。途中道の片側が崖のようになっており、転落しうる箇所も存在する。自分は登山靴で行ったが、なるべく山に行くのにふさわしい靴、装備で行くのが良いと思われる。

②硫化水素濃度が温泉付近では非常に高い。自分は硫化水素計、硫化水素用のガスマスク、かつスイミングゴーグル(硫化水素は角膜炎を起こしうる)を装備として持って行った。
自分が沼尻元湯に行った日はそこそこ風があったが、それでも温泉付近は硫化水素濃度が20-40ppm(長期間暴露で気管支炎など起こしうる濃度)であり、登山道をそれると最高100ppm overとなっているところもあった。無風であればさらに硫化水素濃度は高くなるだろう。
硫化水素の恐ろしいところは、一定濃度を超えると、鼻の粘膜障害により逆ににおいを全く感じなくなるところである。100ppmを超える硫化水素に長期間暴露されると、気管支炎、肺水腫などを起こすといわれており、特に700-800ppmの濃度の硫化水素に暴露されると数回の呼吸で昏睡状態になることが知られている。
ガスマスクは実はamazonで2000-3000円程度で購入できる。ぜひ購入をお勧めする。


硫化水素濃度計を購入していった

③転落、怪我などの時に一人で行くのと複数人で行くのではリスクが全く違う、すべての秘境に言えることではあるが、なるべく複数人で行くことをお勧めする。

④道に迷った時のために、google mapで周囲の地図をダウンロードしていくことをお勧めする。圏外になってもGPSは使用可能なため、ダウンロードしておくと最悪自分がどこにいるか把握できる。

 上記は自分が行った安全対策の一部である。至らない点も多いかもしれない。だがくれぐれも安全対策は行っていただきたい。


 なお全く今回の旅とは関係ないが、温泉につかりながら現地で焙煎したコーヒーを飲みたいという人のために、株式会社hinoiriが"Pico roaster"という携帯式のコーヒー焙煎器を販売している。自分も愛用しており、ぜひ購入いただきたい。


Pico roaster

(参照)
日本温泉協会ホームページ(2024.10.1閲覧)

酸素欠乏・硫化水素危険作業についてについて(2024.10.1閲覧)

https://www.tech.nagoya-u.ac.jp/archive/h24/Vol08/hon_secur/PKAN-1-s.pdf


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