Laboの男71
Labの男71
真心は人間を貫通する。
なぜに来栖さんの教えは効果的に
かつ万次郎に響いたのか?
それは来栖の真心【想い】がナチュラルに
万次郎のハートを貫通し
ストレートに貫いたからだ。
一旦貫いた想いは振動し致命的かつ
その心をロックする。
来栖の外に向かう力は間違いなく
混ぜもの無しの利他であり
ハートを揺さぶるバイブレーションは
rockin' on
波が届くまでとなると
「まごころ」以外何物でもない。
それは説得よりも遥かに早く伝達
伝播し懐中【ふところ】へと轟く。
貫き通すにもひとカケラの優しさが
必要なのである。
なので敵対する者に対して
来栖の直接打撃が劇的な効果をもたらすのも
真心が直流電極的に響きわたるからだ。
敵であってもミッション遂行の妨げであっても
「死んでくれるな!」
からの機能停止を願う打撃と
「邪魔するな!」
からの機能停止目的の直接打撃では
当然、効果が意味が変わってくる。
追跡は依然、続行中
しっかりとした意志で
アスファルトを踏みしめる
スニーカーに
激しく動くには適切ではないが
男たちの戦闘服
スーツに身を包み
時折なびくネクタイに
肩には違和感を散りばめた
ガスマスクをかけた攻めたstyle
本人に自覚なし。
コードネーム「ジョン 万次郎」ここにあり。
ジェイソン楠木に振り回されるのにも
慣れつつあるが
万次郎にしてみればたまったもんじゃない
はずだが疲労の中でも
それでも思考は巡っている。
ある種、万次郎のクセである。
多くの人がニンゲンらしく
理性的に振る舞っているつもりだが
8〜9割方は感情的に生きている。
なぜにそんな事がよぎるのか、
それは楠木氏の言動に翻弄され
万次郎のペースを乱されまくりだからだ。
まだまだ修行が足りないとは思いつつも
感情をかき乱される。
世の中は善意の人に満ちあふれ
大半が社会のモラルを守った大人たちで
蔓延していると想像したいが
我々が無意識にイメージする
大人という生命体は存在しない。
ホモサピエンスは成長が進むと
勝手に万能のスーパーヒューマン
大人という生命体になれる訳ではない。
甘いシビレを共なう理想は毒にも薬にもなる。
ヒトはあくまで頭が賢くなっているんだろうが
擬態するのが上手になっただけじゃないかと
考える。
しっかりと腑に落ちるまで
みんな納得できずに
物事を落としきれていないだらけじゃないかと
理想と実際とのイメージが
追いついていないんじゃないかと
万次郎は考える。
それは真剣に生きなくてもそれなりに
生きてゆける世の中だからだ。
至れり尽くせりの社会システムが
確立しているからなんじゃないかと?
生命危機から遠い世界観に暮らすのに慣れ
楽園に慣れ親しみ過ぎてあぶれてしまった
有り余るエネルギーや能力の使いどころがない。
なんだったら人間の考えることは
9割以上10割近く同じことを
繰り返して考えているらしい。
「今日の晩ごはんは何にしようかなぁ」
行きどころを失ったエナジーは
個々個人が心地の良い、もしくは嫌ごとに
フォーカスを当て繰り返し思考している。
堂々めぐりの気になることを繰り返し考えて
頭の中で反芻しているのがデフォルトらしい。
ああ、もったいないたらありゃしない。
同じエネルギーを使うなら
楽しく過ごした方がいいに決まっている。
無意識の奥底に沈澱する割り切れない想い。
自身の想いを受け止めきれていない
もしくは
認めるにまで至っていない事で溢れている。
それに厄介なのが放っておいても
どっかに消えて無くなったりは決してない。
無理強いした理想通りの自分に成るべく
振る舞い続けると
本音を押さえ込むことに
エネルギーを消費してしまい
そりゃ〜疲れてしまう。
ガマンの限界はすぐに焼き切れる。
些細な悦びでさえ受け取れる
余力すらなくなってしまう。
感情に支配され
設定としての生き方を重視して頭デッカチの
理解だけで切り抜けようとするも
いずれ、もたなくなる。
自身の率直な「胸の内」を聞き入れない限り
乱暴に行動に移すこととなり
生命の根源、闘いの輪からは逃れられなくなる。
狩猟時代の歴が長い人類は
この数100年ポッチしか
現代人として理性的に生きていない。
当然、生存本能として原始的な肉々しい
日々を過ごした期間の方が長いわけだ。
生存状態では戦うか逃げるかの
この2択しか生み出さない。
2択の生存モードには生命に直結する
思考と感情が根ざしていて
とてもじゃないが文化的発想ではない
利己的な生き死にの話なので
余裕がなく低く活性化してまう。
輝く溢れんばかりの
思考エネルギーや身体エネルギーが
低く流用されてしまい
精神的身体的エネルギーが
低い位置に閉じ込められてしまう。
ってなことを考えていて頭がいっぱいだ。
それが現在の万次郎の状態
単純に疲れてきている。
劇的場面に遭遇するなんて
日に何度もある訳ではないはずだが
許容を超えるスリリングな体験が続いている。
ジェイソン楠木のピンボールのような
予想を超える動きにも翻弄され
体感の衝撃は映像で見るのとでは
天と地ほどの差がある。
「ドラマチックにも程があるぜ」
と思いつつ今に始まった事ではないと
仕方なく自身に言い聞かせるのであった。
経験値がヒトに磨きをかけるなんて言うけれど
いよいよ擦り切れて地肌が出てきてるよ。
物理的疲労は発想力を鈍らせる。
しかしながら
疲労自体にあまりフォーカスがいっていない
ことには万次郎自身は気づいていない。
疲れと共に発想がネガティブに引っぱられていない
ことは素晴らしい成長
ちょっとしたことでイラつく様な
感情の揺らぎがあったとしてもすぐに持ち直す
前に進もうとしているところが
1番の成長ポイントであることは
誰も知る由もない。
再び駅へと向かうジェイソン楠木。
あれから何件か会社を回りあいさつ程度にすまし
「う〜ん、
また自宅に向かうんじゃないか?
もう驚きもしないけど
なかなかだよ、流石にね」
足取りは自宅の最寄駅で下車
暴動なんてあったのか?
大爆発なんてなかったかの様に
一般に溶けこむジェイソン。
「さすがにもう花は買わないで欲しいけど
買うんだろうな。なんだったら先に
花屋に行かなくていいんですか?
って話しかけたいくらいだよ」
やはり
ライオンズgateが守護する端正な自宅に到着
着いてからしばらくすると5分ほどで
輪っかをくわえた小さなライオンの門は再び開き
ジェイソン楠木
「ああぁ〜また忘れないようにって
思ってたのになぁ」
もちろんこの後は花屋に向かうだろうさ。
かれこれこのセリフを聞くのは何回目だったか
デジャブを通り越して
ロングラン公演舞台を観ている気分だ。
なんだか種類の違うため息が出てしまう。
まるで初めて忘れ物をした様に飛び出す彼を
仕方なく尾行をする万次郎。
花屋に向かう途中タイミングよく
明智と落ち合う。
「よっ!万次郎っ!首尾はどうよ?
色々とあったんじゃないかい?」
「そうなんですよ
爆発こそなかったんですけど
何なんですかねぇ〜?
ちっちゃいハプニングが炸裂ですよ。
女子高生の万引きから
ひったくり犯に遭遇したりと大変でしたよ。
ゆく先々で事件が起こるんですよ。
ジェイソン楠木さんって
名探偵コナン体質なんですかね?」
「表情のやつれ具合と反比例してさ
カンが冴えてるねぇ!万次郎
彼の能力なんだと思うんだよね、それって
常識的に考えてたら出てこない発想だ。
明智が思うに彼はオートマチックに
能力を発動するんだと踏んでる」
そそくさと
例のごとくデンドロビウムを買って店をでる
ジェイソン楠木を横目に2人は追跡を続行。
万次郎「この能力ってウチの会社知ってて
楠木さんに営業廻りさせてません?」
「恐らくそうなんだよ、どうも。
他社の自爆を誘発するんじゃないかと
思わないかい?
そう考えると素晴らしい能力なんだよね。
で、推測だけど何十年も
エビス薬品工業は彼のおかげで
他社を蹴落として
のし上がったんじゃないかとね。
プラス本人には自覚がないから
起こったことは天災扱いで
法に裁かれることもない」
「ダイハードな男だぜぇ、カレは!
なんて便利な能力なんだと。
ところで
万次郎はジェイソンの家の中
どうなってるか気にならないか?」
「それ!言おうと思ってたんですよ。
不法侵入しましょう。法を犯しましょう。
丁度ガスマスクも2つありますし」
「なにが丁度2つあるだって
犯罪感満載だなぁ万次郎はさ。
口がわるいねぇ〜もっといいのあるでしょ?
聞こえが良い、潜入調査とかさ」
「それいいですね潜入捜査!
イメージが非常ぉ〜に良いです。
さすが明智さん」
「あくまでも、捜査の一環だよ万次郎くん」
人差し指を口元に立て
ナイショポーズする可愛らしい明智。
「おおぉ、チャーミング明智
出ちゃってますよ」
いやいゃ、犯罪には変わりない。
こぢんまりした邸宅に再び入っていく
ジェイソン楠木を確認して
明智は家のバックヤードを指さし
裏側から潜入しようと提案している。
家の裏手はすぐに山が広がっており
山伝いに斜面を行けば簡単に裏口から入れそうだ。
一昔前に流行った建て売りスタイルの
どこにでもあるような日本住宅だ。
簡単に踏み込むことのできる山沿いに横から
雑草をかき分けて入っていく
それについていく万次郎。
ジェイソン宅の裏手に差しかかろうとすると
突然、歩みを止める。
明智は眉をひそめ万次郎に静かに話す。
「ちょっと嗅いだことのある甘い香りだな。
もしかすると万次郎っ
あんまり吸わない方がいいかもしれん」
瞳を閉じてクンクンと嗅ぎ分けている。
万次郎をその場に留めて奥へと踏み入る明智
ジェイソン宅の裏庭辺りに達したところで
驚いている表情が見える
「うわ〜っコイツはやばいな!
万次郎こっちに来ても大丈夫だ」
手にしたガスマスクを再び
肩にかけ直し近づいてみると
まんなかにポツンと墓があり
まわりを覆い隠すように花が置かれているが
規模がおかし過ぎる。
それも積雪を思わす量の花。
おそらくは奥さんの墓だろう。
花で囲まれて埋もれてしまうほどの
尋常じゃない圧巻の量と異常さ。
山なりになった花が
崩れてはその上に新たに花を置きを
繰り返すとこう成るのだろうと想像がつく。
花は幾つも積み重なって地層となり
ある層からは、ほとんどが
デンドロビウムで埋め尽くされている。
圧巻の景色に万次郎「………っ!」呆然
異様な空間とは正反対に
辺り一体に広がる上品な香り
デンドロビウムの香りは
自然の甘さと柔らかさ
深みが加わる華やかさのある印象
お酒の様などこかヒトを酔わす
熟した果汁がこぼれんばかりの果肉
水滴のついたフレッシュな桃
やわらかい果肉を印象づける
奥深い香りが広がる。
「怒れるパープル」と似た香りを放つ
「デンドロビウム」
明智を警戒させるのも無理もない。
花の大きさと華やかさから
「わがままな美人」という花言葉がつけられた。
魅力的な外見とその独特の存在感は
自信を秘めた美しさを示唆している。
「天性の華を持つ」
デンドロビウムがおのずと放つ魅力的な
明るいオーラ華やかな魅力という花言葉
「思いやり」
美しさに垣間見える女性らしさや穏やかさ
実際にはあまり記述が無いため
鼻っぱしらの強いイメージのカウンターに
いいイメージの花言葉を後で足した感がある。
ちょうど花の壁、外ワクから花の地層に覆われて
2人は隠れて死角となっている。
ジェイソン楠木が裏口の扉を開けて入って来た。
ガチャッ バタン
「いい〜花があったからさ
買ってきたんだよっ和子!」
これを何度も何度も
繰り返してるのかと想像できる。
墓への動線上以外は花で埋め尽くされ
メルヘンチックを通り越して怖さが際立つ。
墓前で膝まずき両手を合わせる。
「世界が平和でありますように」
圧巻のスペクタクル巨編に ぶわっ
ツーーーーッ
なぜか明智と万次郎の頬には涙がつたっている。
2人の胸を貫く凄まじいバイブス
打ちのめされている。
明智は確信する。
この繰り返される念仏のような想いが
「悪をあぶり出す能力」の正体だと。
純粋な想いはこうも魔法じみた、はたまた呪術的
破壊力のある能力を生み出すのかと!
繰り返す行動は間違いなくパワーを増幅し
繰り返す行動の傾向
それは彼がアルツハイマー
認知症だと。
頬をつたう涙をそのままに明智は
七三分けの頭に触れそのまま腕を組む
「あんなに一直線にまっすぐ
1人のひとを想い続けれるものかね?」
涙があふれてそれどころじゃない万次郎
万次郎を肘でコツいて
「このケースは
もう掘り尽くしたんじゃないか?行くか」
涙をゴシゴシぬぐいながら万次郎
「グスンッ
それじゃ〜もう尾行はしなくて
いいんですね?」
涙を拾い上げるように人差し指で迎える明智
「エビス薬品工業は、ここぞってときに
ジェイソン楠木を調査させて
試してたんじゃないか?
ジェイソンの能力を判別できるかどうか
ふるいに掛けるてたんじゃないかな。
はれて、暴くことが出来れば以後
会社にカウントされて
それ相応のややこしいミッションが
任せられるだろうし
そうじゃなければ普通の仕事をあてがわれる」
明智は自身の肩に活躍しそびれたガスマスクを
思い出したように万次郎に手渡し
「こっちはこっちで大変だったんだよ。
なんとSOMAビル全壊よ。
しばらく走馬さんと2人棒立ちだったよ」
「本当にダイハードな男 楠木ですね」
「真の生けるレジェンドダリーエージェント
只のサラリーマン
ジャスティスオートマータ
ジェイソン楠木 恐るべし」
この間にもジェイソン楠木は墓前に手を合わせ
世界平和を祈っている。
「そうそう、さっき渡したガスマスク
やっぱりもらってといい万次郎?」
「どうしたんですか?
ガスマスクのカッチョ良さに
今更!気がついたんですか?」
「だっははは、まぁそんなところかな?」
「ちょっと記念に貰いたくなってね。
SOMAビル全壊記念にさ。
走馬さんともちょっと仲良くなってね。
ナニか証が欲しくなったんだ。
走馬さんが頑張った過去だったり
万次郎との1stミッションでもあるからな」
「やっぱり明智さんは
ロマンチッカーなんですね?
それでいて乙女チックでもありますよね」
「一連の出来事が印象深かっただけだ。
なんだか
いい思い出になっちまったからな」
「ボクなんてヘトヘトで
もうどうでもよくなってきまし〜た。
そうだ!これからスーパー銭湯でも
行きません?」
「い〜ぃねぇ、サウナでも一発かまして
ビールでも飲んで帰るか!」
しかし万次郎だったらあんなに1人のヒトを一途に想えるかい?そこんところは全然分かんないっス。かぁ〜味気ないねぇ。それって若さとかいうヤツ?
いゃ〜ぼくはどうも Laboの女性陣にしてみれば
気が狂うほどの恋をしたことがないからそんな事になってるんだって玄白さんと一緒に怒られましたからボクってちょっとおかしい部類のヒトなのかなぁって。なに言っちゃってるの万次郎っ!だっはははは!それ本気で言ってる?ちょっとだって?バカ野郎っオマエは相当crazyガイだよ。そんな事ないで
背広の2人は楠木邸を後に去っていった。