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Laboの男9

 Labの男9

全くピンとこない話が続くなか
万次郎は考える。
世の中は広大であるのと同時に自分が
思い描いていた世界には、よそゆきの顔がある。
今さら何だけど
ブルーマウンテンの苦味がわかった。
しっかりとしたボディを感じる。
飲みごたえならぬ聞きごたえのある話。
不思議と怒りは湧いてこない。
似たような現象はあちこちに転がっている。
スマホは世界を変えた。
それは便利になって生活が、行動が、
一変したことの方が目立っているが
実際はデーターが世界を牛耳る
展開が幕開けした事となる。
便利に乗じてどこかしらかに
データーが絶えず反映されていて
水面下で着々とナニかが蠢いている。
ヒトは
目の前で展開されている生活の方が
よりリアルに感じるから
追われることに一生懸命だから
無頓着でいられる。

鼻頭をポリポリ、万次郎が口を開く。
 「製薬会社って闇深、過ぎません?」

少し好意的に引っかかってくれている万次郎に
微笑みを浮かべて明智

 「これ、製薬会社だけの話じゃないからね〜」

 「はははっ、大したタマだよ、万次郎」

 「別に今すぐ答えてもらう必要はないんだ。
  でもキミの人生そのものが
  変わる可能性が大いにある話でね。
  思っていたよりも展開が早いな〜
  もう少し実験を重ねた後に
  話すはずだったんだけどなぁ〜」

ネクタイを直しつつ
 「まぁ〜よく考えてくれたまえ」

 「何か聞きたい事があるかい?」

腕組みをする万次郎
  「そうだなぁ
   明智さんの成り立ちが聞きたいですね」

 「んっ?オレのこと?今後の事じゃなくて?」

  「どうすると、明智小五郎が出来上がるのかが
   知りたいんです」

 「モノ好きな人もいたもんだね〜
  いいよ、何が知りたいの?」

明智はその当時
エビス薬品工業の表立った方の部署で働いていた。
同製薬会社にもうひとつの顔があるなんて
全く知らなかった頃

 「医者に薬を売りさばく営業職ね」

そう
その日は手応えのない営業の帰り道だった。
不機嫌に唇を尖らせて歩いていると
ビルの谷間でモゾモゾ動く気配
視線をそちらにやると
立ち小便の跡も目新しいうす汚れた路地で
何やら込み入った様子。
黒ずくめの男達に一方的に
連れ去られそうになっていた同僚を発見する。
流石に腕に覚えはないものの
なし崩し的に止めに入る形になった。
同僚は顔を見るや否や

 「来るんじゃない!関わらず逃げろ!」

そうもいかない
走り出していた身体は止まらない。
まずは自身の足が相手に届く範囲へ
胸に向かって大袈裟にジャンプ
蹴るというよりは相手を踏み台にする要領で
両足を捻り込むバネのイメージ

これがドロップキックだ。

奇襲は成功っ
思った以上に飛んでゆく黒ずくめの男
この後が大事、蹴った勢いで180°反転
前受け身をとる。
黒ずくめの男を1人吹っ飛ばした。

 「万次郎!これタマタマよ。マグレ」

すぐさま立ち上がりもう一方の
黒ずくめの男の方を見る。
あれ?まだ2人もいる。

 「参ったな〜思ってたより多いじゃない」

同僚もその機を逃さない。
もう一方の黒ずくめをぶん殴っていた。
その間に「良かったっ 南無三っ!」
もう一方の黒ずくめに走り出す
タッグマッチを思わすような
そのまま流れるような美しいドロップキック
相手の気が同僚に向いていた事も手伝い
放物線を描き滑り込むよう胸元に革靴がめり込む
踏み台にされた後、吹っ飛んでゆく。ぐっわっ
180°反転即座に前受け身、スチャッ
にゃんこポーズ
同僚 「逃げるぞ!橘っ!」
 ジャッ
四つ足からクランチングスタートじみて
即座に駆け出す。
走りだすバディ刑事映画のワンシーン
2人ランナウェイよ。
2〜3分ほど走った所で
足早に地下鉄の階段を下る。
電車に2人乗り込んだと同時に

橘 「はぁはぁっ何があったの?はぁはぁ」

はぁはぁ肩で息をしながら
手のひらをこちらに向けて

同僚 「ちょっと待ってくれっはぁはぁ
    あんまりっはぁ運動は得意じゃない
    方でねっはぁ」

ひと駅先に到着した所で息が落ち着き始める。
 プシューーーッ
〜お乗り換えの方は〜1番ホームへお向かいく〜

橘 「かなり強面の男達だったけど何よ?」

同僚 「とにかく、ありがとう助かったよ」

肩をポンポン叩く同僚
 「話せない事が多いんだけど、これが

 プシューーーッ ドアが閉まるや否や
ふとした目線の先に目を見開く同僚
どうやら両サイドから屈強な黒スーツの男達が
迫ってきている様だ。
明らかに抵抗しきれない人数
各4名、右から左からと押し分けながら
はさむ形で近づいて来ている。
先ほどの黒ずくめのヤサ男達とは大違いだ。
片手を顔に当てて 「かぁ〜っ」

橘 「アレは大統領とか警護しちゃう系だね」

地下鉄では逃げようがない。


拘束された2人はどこかのドラマで
想像した通りの廃工場へと連行されてゆく。
それも想像通りの黒いバンに乗せられて。

強くうながされて連行、廃工場の中へ
手慣れた手つきで黒スーツが
イスを2つ用意する。
間隔をあけて木の椅子に
後ろ手に拘束される2人
流石に掴みどころのない橘も顔色が悪い。
猿ぐつわは、まだされていない。
この環境がそう思わせるのか
ただのスーツ姿が
昔、よく観たアメリカドラマシリーズの
FBIの出立ちに見えてくる
眉間に深いシワのボスらしき男
 「もう言い残す事はないか?」

橘 【いかにもソレっぽいな。
   かぁ〜これホントに言っちゃってる?
   ウソだろっドラマでも、
   もうちょっと気の利いたこと言うだろうよ】

    コレ死んじゃう、やつよね

ちょっと含み笑いの橘がブン殴られる。
ブン殴られて向いた方向
「っ? 」視界の外から黒いのが横切る

 カコォーーン

不釣り合いにも甲子園で聞くような音
FBIボスが何者かにブン殴られている。
スローモーションで展開される
ぶん殴っている後ろ姿
細身でロングヘアー
背格好からは女性であるのが見受けられる。
躊躇のない脳天への一撃
あっけに取られた面子たちの動きを見回す黒髪
タイトな黒スーツに白シャツ細身の黒ネクタイ
両手にはその辺で拾った無骨な鉄パイプ二刀流
スローモーションが解け
間髪入れずにのけぞったボスの頭、目がけて
ワンツースリー鮮やかに的確に。
握られたパイプにはしっかり血がしたたり
新たな血しぶきが咲く。


 残り8人
そのままの流れに右隣の屈強な黒スーツを
真一文字に一閃
こめかみに食い込むパイプ
ワンツースリー

 残り7人
やっと状況を飲み込めた
大統領警護フウ男達が動き出す。
銃らしきモノを構える左側
クルリと反応しゃがんだ姿勢で回転
構えた男の正面に躍りでる。
回転はそのまま立ち上がると同時に
下から上へパイプを一閃
銃を持っている肘関節とは反対方向に
アッパースゥイング
そのままの流れに軌道を
同じパイプが裏拳をお見舞いする形に
回転から遅れて右こめかみに食い込む
ワンツースリー 的確に頭だけをスマートに

 残り6人
さすがに臆する男達が怯んだ間伐を入れずに
後ろ回し蹴り まっすぐに伸びた脚の切先
バランスの取れた体幹の強さがわかる。
ちょうど彼女を囲う形になった円を崩す一閃
そのまま二つ折りになった男に
覆い被さるようにスピードはそのまま
追い討ちのオンリー頭 ワンツースリー
あっという間に
白目をむいた男達が転がっている。

明智の瞳が輝いて、みるみるシビれる眼差しへ

 残り5人
黒髪の女 「貴様ら!訓練がなってないなっ!」
近接戦では銃を誤射しかねない。
男達は判断をしかねている間も惜しい。
我慢し切れずナイフで飛び込む男
左パイプでナイフを薙ぎ払う一閃
吹っ飛ぶナイフ 流れるように
残った右パイプでこめかみにニ閃目
肉に喰い込む金属よりもツーテンポ遅いガード
軋む骨 ボクッ鈍い音
ガードの手が空を切る。
空いている左こめかみに
鮮やかに ワンツースリー

 残り4人
女は仁王立ち、構えないで周りを確認している。
倒れた白目の男達に脚を取られないよう
足元の確認も怠らない。
ロングヘアーに細めの黒のネクタイ
黒スーツに身を包む女
真一文字に閉じられたクチビルが印象的だ。
取り囲んでいる男たち
間合いを図る様は大統領警護のSPから
ショッカーどもに格が落ちてしまっている。

黒髪の女は
さりげなく橘の拘束されたイスの後ろに回る。
イスごと蹴られる橘
勢いよく飛び出した障害物に
つんのめるショッカー
さらに走り出して橘を踏み台にしてジャンプ
ショッカーを飛び越え振り向きざまに
勢いをそのままにダイナミック脳天唐竹割り
着地ざまに例外も無く頭を
ワンツー

踏み台にされたイス橘は勢い良く頭部打撲
横転した情けない姿で立ち回りを見ている
 【そりゃないぜ〜とほほ】

 残り3人
どうも皆が銃を持っている訳でもないらしく
足元に目線を落としチラ見、狙いを定めて
走って落ちている銃を拾いに行くショッカーA
女は勢いよく反対方向へ走り出して壁を蹴る 
蹴った勢いで側転半ひねりショッカーBの背後に
スピードはそのままに片腕を決めてBもろ共
全速前進、発砲するショッカーA
被弾するBの身体
グッ ウッ ガハッ
勢いはそのまま盾ショッカーを引きつれて

 残り2人
目前、盾ショッカーを手放し横へ
ヒラリ半転左手で横に薙ぎ払う
鉄パイプが銃を跳ねのける。
 パンッバン!カァーーン
空いた胴体に渾身の右脚を押し込む
サイドキック炸裂! グゥエッ
さらに前のめりに滑り込む黒髪の身体
ショッカーA
くの字に折れ曲がった身体の頭だけを
ワンツースリー

 残り1人
振り向きザマに
黒髪の女
 「まだやるか?おい?」 

たじろぐショッカーC
  「………………      」

 「我々の業界では拳銃は御法度だぞ!」
  よくて麻酔銃だ!」

 「協定違反は高くつくぞ!」

 「はっはぁ〜ん、なるほど
  どこに雇われた?
  言ったら逃してやる!」

 「どうだ?悪くない取引だ」

間髪入れずにかぶせ気味に
ショッカーC  
  「○×○製薬です。」

首を傾け鉄パイプでショッカーCを指す

 「貴様は、プロ失格だな!」

みるみる表情が青ざめてゆく前に
ワンツースリー   ドサッ

 残り0人

吹っ飛ばされた橘は拘束されたイスのまま
お行儀よく四角に倒れている。

鉄パイプをほり投げて、ため息を一つ
 カランカラーン
拍手をする要領で手のひらをパンパンパン
思い出したように
 コツコツコツ
マヌケな格好で見上げた先には黒髪の女の顔。
血しぶきを浴びた
少し乱れた黒髪のカッコいいこと
指で髪をなぞって見下げる黒髪スーツの女
立ったまま背中を丸め軽くかがんだ状態。
やれやれの表情
気だるく仕方なしに不機嫌なクチビルが開く

 「貴様は、だれだ?」

  「と、まぁ〜部長に救われたわけよ。
   ノーワイヤーアクションよ!
   えげつないくらいに
   ハリウッド映画だったから
   自分のことそっちのけで
   ワクワクしたよね」

来栖【くるす】京子

 「貴様、ウチの社の者か?で、どおする?
  仲間になるか?死ぬか?
  どっちがいい?」

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