見出し画像

モテない女性こそ浮気をする…?

配偶者選択 mate choiceにおいて、多くの動物たちと同様に、私たち人間も選ぶのは主に女性側です。そして女性が男性を恋愛・性的な相手として選ぶ条件は非常に厳しく多岐にわたっており、

(1)左右対称な顔つき・身体つきをしたイケメンであること。
(2)男性ホルモンの分泌が長期間にわたって良好であった結果として、顔つき・身体つきが男らしいこと。
(3)遺伝子的・MHC(組織適合性複合体;人間においては、よく医学の分野ではヒト白血球抗原HLAとも言います)的に自分とは離れていること。(=良い匂いがすること。)
(4)社会経済的地位が高いこと。それを維持する高い能力を備えていること。
(5)優しく、子ども好きであり、長期間にわたる子育てに誠実につきあってくれる性格であること。

がありました。(『イケメンはなぜモテるのか?』ですでに議論しています)

このうち、(1)〜(3)が「短期的魅力」と呼ばれ、その男性の遺伝子的な優良さ(=女性が自分の遺伝子を掛け合わせる相手として都合が良いこと)を意味していました。
これに対して(4)〜(5)は「長期的魅力」と呼ばれ、女性が長期間一緒に暮らす伴侶して望ましいことを意味していました。

問題は、(1)〜(5)の全ての条件をきっちり満点に揃えた優良な男性などほんの一握りしか存在しない、ということです。このほんの一握りの男性をたくさんの女性たちが奪い合ったら大変なことになりますし、どうやったって、そこまで優良な男性を確保できない女性が大量に生じてしまうのです。モテる女性は思いのままに優良物件を得られるかもしれませんが、モテない女性は不良物件・事故物件みたいなのしかまわってきません。
これでは困るわけです。

では、原始人の女性たちはいったいどうやってこの難局を切り抜けたか?


浮気 extra-pair couplation=EPCです。

つまり、普段は条件的に好ましくない、特に「短期的魅力」に欠ける男性と生活のために一緒に暮らす女性は、恋愛・性的には慢性的な不満があります。(=遺伝子継承戦略において、不満があります。)
そうした女性は、普段はおとなしくしているのですが(普段から浮気癖が強いと、男性に捨てられてしまうのでまずいわけです)、妊娠可能性が高まる排卵日近くになると、こそっと浮気行動に出るようになる。
心の中でも浮気を願望するようになり、自分にとって「良い匂い」がする異性をより好むようになり、実際に出会いが起こりそうな場所に出かけていくようになり、服装も人目を引くセクシーなものを好むようになり、声や表情もセクシーさを増すようになり、さらになんだか良い匂いがしてくるようになる…という謎の変化を起こします。
(本当は謎でもなんでもなく、おそらくは性ホルモンの影響によるものでしょう。こうした変化は、現代人の女性にも、その名残があることが、これまでの研究で示されているのです。)
しかも、こうした浮気願望や浮気関連行動は、普段のパートナーに恋愛的・性的な満足度の低い女性たちほど顕著になることもわかっています。

今の時代、浮気によってできた子どもは血液型や遺伝子検査で夫の子どもではないことがバレてしまう危険性がありますから、実際に優良な遺伝子を取り込むことを目的にして浮気をする女性は多くはないでしょう。(とはいえ、恐ろしい話ではありますが、いわゆる「托卵」をされている既婚男性は数%以上はいるだろうことも推定されています。)
しかし、遺伝子は数万年くらいでは大きくは変わらないので、原始時代の女性たちが遺伝子の生き残りをかけて培ってきたこうした性質は、今の時代の女性たちにも引き継がれている…というわけなのでした。

…ということは、意外と言えば意外なことに、モテない女性ほど浮気をするということか?
では、モテる女性はそれほど浮気をしないというのか?
どうやらそうなのです。これまでの研究で示唆されているのは、意外と言えば意外なことに、モテる女性は比較的浮気をしないことがわかっています。彼女らは浮気をするのではなく、(もともと良い相手をすでに得ているでしょうが、機会があればさらにより良い相手に)乗り換えをするのです。

どっちにしても、男性は大変です。

いいなと思ったら応援しよう!