女性正社員・共働き正社員が増えていない理由〜女性の社会進出が進むメカニズムから考察する〜
ここ10年で、一気に女性の社会進出(以下、社会進出と略す。)が進んだ。
最近は、正規雇用者も増加している。
ただ、下記図1を見るように、正規雇用の割合(正規雇用者÷当該年齢の総人口)は20代後半をピークに減っていく。
30歳頃って、女性の結婚ラッシュの時期ですね。
女性の平均結婚年齢は29歳。出産年齢は31歳。
結婚・出産しても、働くのが当たり前となった。
寿退社はもはや死語かもしれない。
共働きが増えたといっても実態は、
男性:正社員×女性:非正社員・パートのペアが
過半数(58%)。
実は40年前から、男性:正社員×女性:正社員の数は変わっていない。
共働きで増えたのは、非正社員として働く女性。
男性と同じくらいの責任と権限を持って働くという、
いわば本当の意味での社会進出は進んでいない。
ジェンダーギャップ指数は低い。政治・経済分野で。
ただ、現時点では仕方ないのかなと、私は考えている。
社会進出は一朝一夕で加速するものではない。
そして、進出のプロセスから考えると、現在は過渡期の段階であるからだ。
社会進出が進む1番の理由は、女性も働く必要のある状況に陥ること。
日本だけでなく、他の先進国でも同様。
女性の収入や仕事でのキャリアが男性と比べて、不十分で可哀想だから、
社会進出を促すという話では無いのです。
社会進出までの流れは下記の通り。
1世紀〜2世紀さかのぼると、産業の中心が農業である時代は、
本当の意味での社会進出が進んでいた。
一家総出で農業に従事したり、
家族が経営する個人商店で働いていたからだ。
そもそも、女性も1人前で働くのは当たり前。
その後、工業化を経て製造業が中心の時代では、労働者1人が企業に勤めて、その収入だけで家族全員の生計を維持できるようになる。
そうすると、社会進出の必要性がある世帯が減る。
いわゆる、サラリーマン✕専業主婦世帯が増える。
専業主婦は日本特有の形態ではなく、欧米でも一般的な時代があった。
例えば、専業主婦世帯の割合のピークは
イギリスでは1920年代で80%。アメリカでは50年代で75%。
日本では70年代後半で60%である。
欧米では、70年代前半のオイルショックが原因で社会進出が進んだ。
この時代は景気が悪く、収入が減る男性や失業者が多かった。
(その分、日本は安定成長期で不景気にはならず、経済が非常に上手くいっていた。)
男性1人の収入だけで、家計のやり繰りが難しくなった。
女性も働くしかなかったんですね。
こうして、日本より40年ほど早く社会進出が始まった。
日本で社会進出の動きが見られたのは、バブル崩壊後の90年代後半。
まずは、非正社員の既婚女性が増えるところから始まった。
86年に男女雇用機会均等法が施行されたものの、
総合職レベルとなると、社会進出が上手く進まなかった。
企業が男性中心である時代が、良くも悪くも長すぎた。
高度経済成長期から35年~40年と続いてしまった。
バブル崩壊は、社会進出が必要になるほどのインパクトを与えなかった。
人余りの時代だからね。そこまで、リストラ進めてないからね。
男性全体の収入は減ってないからね。(当時の若年層は減っているけど….)
2010年代に入って、社会進出しなければならない状況に追い込まれた。
理由としては3点。リーマンショックによる収入低下、ケア労働(保育・福祉・介護)の需要拡大、人口減少による人手不足。
ここまで追い込まれて、やっと進みました。
非正社員で働く既婚女性が急増した。
総合職女性も、仕事と育児の両立がしやすくなった。
新卒採用でも総合職で入社する女性が増えた。
非正社員から正社員への転換も珍しくはない。
そろそろ、社会進出の過渡期を過ぎる頃。
5年・10年して、どれほど女性の正社員が増えるか、
15年・20年して、どれほど女性の管理職が増えるかに期待している。
女性の社会進出は、より一層進むでしょう。