間違えだらけの就職氷河期世代への支援〜②被害を被ってるのは誰か〜
今回の記事では、氷河期世代のどの属性の人が被害を受けたのかを調査する。
前提として、彼らはどんな雇用形態なのか調べてみた。
下記は、厚労省が作成したデータである。
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2019年時点の統計で、正規雇用は54.4%、
非正規雇用や非労働力人口は合わせて34.2%である。
正規が少ないから氷河期世代は可哀想と一瞬思ったが、女性が含まれているから数字が低く出るのは当然ではと考えた。
男性だけなら、どれだけの人が働いているのか?下記は、年齢階級ごとの労働力率を示している。
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氷河期世代は、40〜49歳に該当するが、
2022年の男性の労働力率は90%を超えており、他の世代と変わらない。
とりわけ低いわけではない。
女性の労働力率は、30〜54歳まで80%程度の水準だ。
労働力率は、正規と非正規を両方含むので、
男性の非正規の割合も調査した。
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図の35〜44歳に該当するが、2016年以降の割合を見ると、10%未満で推移している。
男性に限れば80%は正規雇用で働いており、氷河期世代もバブル世代も割合は変わらない。
むしろ、非正規の割合は20代や30代前半の方が高い。
これらのデータから考察すると、
非正規や無職が多いのは、氷河期世代特有の問題というより、
女性の雇用に関連しているのではないか。
とりわけ、30歳以上の女性が出産や育児から復帰して、正規雇用に戻りづらいことに関わる問題である。(だいぶ改善されてきたとはいえ)
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氷河期世代は、新卒時に就職難だったのに
男性は30代後半・40代になって、正規雇用で働けている。
正規とはいえ、条件や給与が良い大企業ではなく、中小企業で働く人が多いのか。
2017年の就業構造基本調査を調べてみた。
下記は、年代ごとの会社規模別の雇用者を示している。
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データを見ると、とりわけ、氷河期世代男性において大企業での就業割合が低いわけではない。
35歳〜39歳(78年〜82年生):20.1%
40歳〜44歳(73年〜77年生):20.8%
参考
25歳〜29歳(88年〜92年生):19.2%
高卒も大卒も就職率が低かった78年〜82年生よりも、むしろ88年〜92年生の方が割合は低い。
氷河期が学校卒業した20年前、就職率は低かったが、結果として30代後半・40代で一定の割合の人が大企業で働けている。
その頃から、大企業は新卒第一主義ではなかったのだ。
給料についても、氷河期世代だけが下がっているわけではない。
2008年と2018年の年代ごとの給料を比較した資料である。
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この10年間で、25歳以上〜54歳以下に関して、氷河期(35歳〜44歳)以外のどの年代も給料は横ばいもしくは低下している。
24歳以下や55歳以上の給料が上昇している理由として、
24歳以下:若年層の人手不足解消のため
55歳以上:定年や役職定年の延長のため
と推測している。
給料の低下は、就職氷河期の問題というよりは、日本経済全体の問題(リーマンショックや生産性低下)が影響していると考えている。
色々とデータを調査・分析したが、客観的に見て
氷河期世代だけが、
非正規雇用や中小企業や低賃金で割りを食っているわけではない。
どの世代も多かれ少なかれ割りを食っている。
政府は、氷河期世代だけでなく、全ての世代がやり直しを図れるような支援を行うべきである。
労働や給料に関する問題の原因は多数あり、
氷河期だけが原因ではない。
皆が抱える問題なのに、氷河期の問題だと見事に論点がすり替えられている。
政府は、氷河期世代だけを支援することで、支援自体には取り組んでいるとアピールしたいのか。
多くの人々を支援したくないから、
氷河期世代以外が抱える問題が見えないように
工作しているとしか思えない。