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ゲーム:ゼノブレイド3感想

※ゼノブレイド3の本編ネタバレが含まれます。
※DLCは未プレイ状態での感想です。

全体的な感想

 個人的にはとても楽しくプレイしました。
 しかしいまひとつに感じる点が特にメインシナリオ周りに多く、楽しかったけれどひとにはお勧めできない(自信をもって「おもしろいよ!」とは言えない)作品だと感じました。全体の雑感は以下のとおりです。
・サイドストーリーはしっかり作られているが、メインシナリオの内容に説明不足や演出不足が多く、色々とすっきりしないまま終わるのが残念。
・味方サイドのキャラクターは(ヒーロークエもあるため)しっかり作り込まれているが、敵サイドのキャラクターは描写が不十分で魅力に欠ける。
・やり込み要素は豊富にあるため、ゲームのボリューム自体はじゅうぶん。

シナリオについて

良かった点:

・サイドストーリー(サブクエスト)は比較的おもしろい
 ヒーロークエストを含むサブクエストは質、量ともに充実していると感じました。ヒーローを筆頭にアイオニオンで生きるひと達の生き方や価値観、抱く想いが丁寧に描かれており、サブクエをやるかどうかで本作の評価がかなり変わってくると思います。個人的にはゼオンとアシェラのヒーロークエ、ドランクとハマハマのサブクエがお気に入りです。
 また、各クエストの内容はバラエティに富んでおり、RPGにありがちなお使いクエスト一辺倒にならないよう、演出や導線を丁寧に張っていると感じました。

惜しかった点:

・メインシナリオがいまいち
 サブクエストは楽しめた一方、肝心のメインシナリオはいまいちでした。
 シナリオ全体の傾向として、予想を裏切ってほしいところは予定調和のまま進み、解明してほしい謎や不明点は曖昧なまま終わる、というバランスの悪い構成になっています。
 物語の道中では様々な伏線や思わせぶりな描写がありますが、「これってこういうことでは?」と予想したことが大体そのとおりになってしまい、シナリオに関する意外性や驚きが少なく、ストーリー展開が平板で退屈なものに感じてしまいました。
 具体的には、
「こいつ悪者やろ!」→悪者でした。
「こいつ裏切るやろ!」→裏切りました。
「こいつ○○やろ!」→○○でした。
 こんな感じの流れが延々と続きます。個人的に意表を突かれたのは第五話から第六話に入るときの展開くらいです(ただ直前のクソ長ムービーのせいで、せっかくのサプライズ展開も驚きが半減してしまいました)。
 また、世界観や設定に関する説明、悪役を始めとした各キャラの行動原理は全体的にふわっとしており、「この謎はいつか明かされるんだろう」「このキャラの悩みや葛藤は、今後詳しく描写されるんだろう」と期待していたのに、結局明かされじまいで終わり、肩透かしを食らうこともしばしばです。
 あと全体的にムービー周りの演出が下手というか冗長だと感じました。特にラスボス戦の演出は同じ演出を三回連続で使用されたため、盛り上がるよりも若干茶番じみていてちょっとがっかりでした。

キャラクターについて

良かった点:

・主要キャラクターだけでなく、ヒーローを始めとした各NPCのキャラが立っている
 シナリオのよかった点と被りますが、登場する味方NPCの個性がちゃんと表現されており、いずれのキャラクターも話を進めるための記号ではなく、きちんと生きた人間として描かれていると感じました。
 ただカムナビに関しては他ヒーローと比べて描写がかなり少なく、ヒーローおよび覚醒クエでキャラが深堀りされることもなかったので残念でした。ヒーロー&覚醒クエの内容がほぼないのはエセルも同じですが、彼女の場合はメインクエストでの出番や主人公との関りが多いため、やはりカムナビのみ影が薄く、扱いが不遇に思えてしまいました。

惜しかった点:

・主人公キャラがいい子すぎる
 ノアやミオはかなりものわかりのいい性格をしており、それゆえに彼らの成長具合が実感しにくいまま話が終わりました。逆にユーニやランツ、タイオンに関しては、最初は敵愾心剥き出しだったのが徐々に打ち解けていったり、序盤は塩対応だったのが次第に互いへの思いやりや気遣いを示せるようになったりと、旅や出会いを通して明確に成長しているのが伝わりやすかったです。
 
・悪役&敵対サイドのキャラに魅力がなく、思い入れを持てない
 メビウスサイドが基本的にクズの集まりで全く魅力を感じませんでした(一部例外もいますが、本当にごく一部)。悪役なりのカリスマ性も皆無、悪の美学も皆無。終始イキったチンピラないしは中二病的な言動ばかり繰り返し、「敵ながらアッパレ」と言いたくなるような威厳のあるキャラはラスボス含めて存在しませんでした。
 また、シャナイアやヨラン、クリスといった、もとは主人公サイドに近い存在だったが敵対することになったキャラクターも、動機や心情に関する描写が薄く、感情移入するには明らかに尺が足りていませんでした。このため主人公側は敵対キャラに対し強い思い入れや感情を抱いているのに対し、こちら側はそこまでの熱量を対象キャラに持つことができず、彼らと決着をつけるシーンでもいまいち感情を動かされないまま終わってしまいました。
 
・主要キャラのヒーロークエに格差がある
 メインキャラ六人にもヒーロークエ(覚醒クエスト)がありますが、内容にかなり差があると思いました。ユーニとタイオンのクエストは、それぞれの過去や世界観に根差したしっかりした内容のクエストが用意されていた一方で、ミオとノアのクエストは展開が明らかに雑で、ランツとセナのクエストは本人たちへのフォーカスが弱いです。
 特にかわいそうなのはセナで、セナの覚醒クエはほぼゴンドウのヒーロークエになってしまってます。シャナイアがメビウスとして復活するインパクトの強い内容なのに、シャナイアの過去を知ってるのはゴンドウ、シャナイアに大きな影響を与えたのもゴンドウ、シャナイアがこだわってたのもゴンドウ、シャナイアに引導を渡して最期の言葉を受け取ったのもゴンドウ。……いやあの、こっちをゴンドウのヒーロークエにすればよかったんじゃないの? もしくはゴンドウとセナのクエスト入れ替えたらよかったんじゃ、という感じでした。

その他要素の雑感

戦闘について:

 基本はターゲット式のオートアタックで、ゲージが溜まったらアーツを押すだけの簡単なおしごと。回避やガードは基本存在しないため(あるにはあるけど狙って実行するのは難しい)、アクションゲームの戦闘テンポは期待しない方がいいです。
 特に序盤はヒーラーの回復性能、タンクのヘイト維持能力ともに心もとなく、基本は敵を一体ずつちまちま殴っていくしかないので爽快感に欠けます。クラスも限定されているため、攻撃は常にもっさり、味方のピンチに回復できない、アーツをリキャストごとに使ってるのにターゲットがアタッカーに飛ぶというのもざら。
 中盤以降はクラスおよびスキル(アーツ)、ジェムや装備も充実してくるので、複数敵を相手にしても死なないし、自分好みの戦闘スタイルにカスタムすることも可能。……なんだけど、終盤はノアのラッキーセブンが強すぎてほぼラッキーセブン抜刀ゲーになります。
 あとは画面がごちゃごちゃしすぎていてわかりにくい、敵のターゲットがやりにくいなど視認性の面でもストレス要素がけっこうあるため、合わないひとにはかなり面倒な戦闘システムだと思います。

やり込み要素について:

 ジェム作成、ランドマーク発見、コンテナ回収、ユニーク狩り(および裏ボスの討伐)、ソウルハッカーの育成など、数多くのやり込み要素があり、全部やろうと思ったらプレイ時間は確実に200時間を超えます。やることがなくて困る、ということはおそらく発生しません。
 ただしトロフィーや称号のようなものは存在せず、上記の要素をコンプリートしたとしても、報酬やアンロックされる要素があるわけではありません。完全に自己満足の世界になります。

まとめ

 楽しめる点もたくさんあるゲームなのですが、メインシナリオの描写&説明不足、魅力的な悪役の不在、クセが強めで爽快感に欠ける戦闘など、ゲームの根幹に関わる部分にマイナス点の多い作品だと感じました。自分はフルプライス購入で全く後悔しませんでしたが、他人にフルプライスでの購入を勧めるかと言われると……うーん、という感じです。
 とはいえ、
・やり込み要素がたくさんあるゲームが好き
・こつこつアイテムを集めたりマップを埋めたりするのが好き
・アニメ調のグラフィックが好き
・たくさん寄り道をしながらプレイするのが好き
・かわいいノポンを眺めたい
 というタイプのひとであれば、楽しくプレイできる要素が多いゲームかと思います。