翻訳エッセイ#2 翻訳において必要な能力
本格的に翻訳をしていきたいと思っている人に、翻訳において必要だと私が思っている能力を簡単に説明したい。
1. 翻訳する言語の能力
翻訳の原典にあたる言語の読解能力。例えばドイツ語から日本語に翻訳する場合、ドイツ語ができなければならない。これは当たり前であり、誰でもわかるだろう。なので説明は省く。
2. 翻訳させる言語(ほとんどの場合母国語)の能力
上のドイツ語の翻訳だと、日本語ということになる。
まず日本語へ翻訳する場合、日本語としてちゃんとした文章にならなければならない。単に直訳する場合、大学受験のような採点においては減点はないかもしれないが、文章全体を見ると歪な感じになることが多々ある。そもそも大学受験だった場合は訳すのは一文、二文であることが多いが、翻訳の場合は何ページにもわたって行っていかなければならない。そうなると訳として正しいだけでなく、自然な文章に仕上げなければならない。これは翻訳の書いてるあることの意味を深くまで読み取る能力がなければならず(これは外国語読解能力だけでなく、文章それ自体の読解能力を必要とする)、それを母国語に反映させなければならない。
また翻訳しているとその言語(上の例だとドイツ語)の訳が難しい表現が出てくることが多々ある。そうなった時にうまく訳せるのは、原典言語と同等かそれ以上に母国語が重要になってくる。
3. 翻訳している内容の知識・理解
仮に車に関する文章を翻訳している場合、車についての知識を必要とすることになる。知識なしでも辞書やネットで調べたりして翻訳することはできるが、車について取り扱う度合いが多けば多いほど前提となる車の知識は必須となってくる。会計の知識の場合は当然会計の知識を必要とするし、飲食、ゲーム、会計に関する文章でも同じである。
そして文芸や哲学の翻訳においてもやはり同じであろう。作品を翻訳する場合は、その作品それ自体がどういうものかをあらかじめ知っておく必要があるのは言うまでもないことだ。哲学においてはカントやハイデガーの作品を研究者が何度も何度も読んでは注釈を加えていっていて新訳においてそれを反映させているので、このことを究極的なまでに行っていることと言えるだろう。
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