「湿気」徹底考察 ~『私』の移住先について~
「薄い歌詞しか書けない」
突如現れた一人の天才が、この一言とともに世に放ち、SNSにて大きな反響を呼んだ三つの歌詞、その中でも一際目を引くタイトル「湿気」を、解説していこうと思う。
まず歌詞全体を見てみると、
序盤に出てきた「好きだから」が、最後のフレーズでは「好きだったから」という過去形になっている点。
語り手である『私』が「明らかに湿気が多すぎるな」と、湿気そのものに驚いている描写がある点、「なあ、梅雨は過ぎたかい?」と、見るからに気候の変化に関する知識に疎い点を鑑みると、
内容としては、『私』の移住によって遠距離になってしまったカップル、もしくは両思いであった二人が、疎遠になり破局、またはそれに近い不安定な状況に置かれていることを描いた曲だと考えられる。
それを踏まえこの記事では、『私』の移住先について詳しくひも解いていこう。
まず「7月伸びる太陽」というフレーズ。
夏ということもあり、昼の時間が長いことだろう。
しかし「日が伸びる」という言葉はよく耳にするが、わざわざ「伸びる」対象を「太陽」そのものにしていることから、この場合は「サンピラー」、またの名を「太陽柱」という日の出や日の入りの時、太陽から垂直に炎のような光芒が見られる現象のことを指していると考えるのが自然だ。
だがこの時の暦は7月、冬の寒空に出現することがほとんどであるサンピラーを観測する季節としては、あまりに季節外れだ。
しかし、寒い地域では季節問わず見られることがあるこのサンピラー現象。北海道では8月に観測された例もあり、『私』の移住先は北海道なのかもしれない。もう少し決定的な証拠を探していく。
次に「なぁ梅雨は過ぎたかい?」というフレーズに着目してみる。
北海道には基本的に本州と同じように梅雨と呼ばれる時期は存在せず、それらしいものといえば、蝦夷梅雨といった6月中旬~後半に訪れるじめっとした時期のみだ。これを踏まえ次のフレーズを見ていこう。
そう、この曲渾身のフレーズ「明らかに湿気が多すぎるな」についてだ。
先ほどのサンピラー現象のことを鑑み、北海道の線で見てみると、北海道には梅雨こそ存在しないが、七月は本州に比べかなり湿気が多いことで知られており、中でも釧路は平均80%後半をたたき出すほどの多湿となっていること、つづく「冬もすぐ来るんだ乾燥してるみたいだ」といった寒い地域を連想させるフレーズがくることを合わせて考えてみると、『私』の移住先は北海道、ひいては釧路方面であるのではないかと推測される。
さらに、これらからその後の「気づいたら取られてるんだ」という部分も、愛していたその人がという意味だけでなく、寒い地域ということもあり、油断するとすぐ体温を奪われるという意味合いも含めたダブルミーニングということになる。
今回は「湿気」のストーリーに大きく関わってくる『私』の移住先について考察してみた。僕の考察では、「北海道 釧路市」ではないかという結論にたどり着いたが、皆さんはいかがだっただろうか。
一度冷えてしまった頑丈な鉄も、情熱という火にかけるとまた、形を変え違った魅力を生み出すことができる。
彼が自身で言うように「薄い歌詞」だろうと、知識をつけ、頭を働かせることで、まだまだたたいて伸ばすことが可能ということ。この曲は、湿気という題材ながらも、彼の鋼のメンタルそのものを映しだした鏡のようなものなのかもしれない。どうせ流れてくるだろうからフォローとかはしないけど、今後も彼の作品に期待が高まる一方である。
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