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人間って難しい

輪厚でバイトからの帰り、仮にも6時間歩き回って働いたからまあ足が疲れている。しかしあまりに本数の少なすぎるバスは確定で一歩間に合わない。さらに今回に限っては様々な手を考えてみたが高速バスに乗るほか帰る手段はなかった。重い足を30分間、人気の無い木々と高速道路に囲まれたうるさい道を歩き、途中緩やかな坂に地獄を見ながらもバス停にたどり着いた。

予定していた時刻の2分ほど前に一台のバスがやってくる。早めに来たのだろうと安易にこのバスに乗り込んだことが全ての始まりであった。
席に座り、やけにキャリーケースを持った客の多い車内を見渡しホッと席に着く。そこで恵庭ICで降りたい私の目に飛び込んだのはデカデカとしたボードに映った
「南千歳駅経由新千歳空港行き」
の文字であった。そこそこに落胆はしたが、初めはここから電車に乗って恵庭についてもそこからまた歩かなきゃならないと落ち込む程度であったがわざわざ日記として書き込んでいるのだ、問題はそれだけでは無い。

金がでたらめに無いのだ。

本来乗るはずだった帰りのバスにかかる運賃は430円、持ち金は600円と少し、元々170円も余裕があったのだ。しかしこれはあくまで恵庭駅までの料金。不幸にも今自分を揺らしながら南千歳までの道を軽快に走るこのバスは、1200円という大金のかかる高価なバスであった。なんとダブルスコアである。

警察でも呼ばれるのではという焦り、「恵庭ICで止まりますか」というはじめてのおつかいで良く見るようなやりとりもできなかった自分への怒り、これから1200円すら払えないことを人前で説明しなくてはならない恥じらい、全てに脳が殴られ続けていた。高価なバスの割に乗り心地は最悪であった。

つづく

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