『風来坊の子守歌』 川端誠 BL出版
糸島鹿家の場所にある《初潮旅館》の中に新たなみんなの集い場所 《はつしおとしょかん》ができます。
今、皆さんの大切な思い出の絵本を“寄付”という形で集めています。“あなたの、思い出のシェア”
あの人が、あの時、こんな本を読んでいたんだ。
そう思えると、絵本の見かた、感じ方も変わってくるという、不思議な感覚。
この絵本は、糸島二丈波呂にある《龍國禅寺》の福住職さん“健仁さん”が、5月の絵本マルシェ時にみんなの手に取って読んでもらいたい、とかしてくださった本です。 大切な本、思い出深い本は、手元に置いておきたいから、寄付できない。けど、読んでもらいたい。
と仰る方も多いです。それくらい、絵本はその人の側に寄り添って、共に時間を過ごしてきた宝物にもなります。
村が燃えている。どこかから、赤ん坊の泣き声がする。
火の中を走りまわり、ようやく見つけ出した赤ん坊。親の姿はなし。その火の中で、土間に転がってきた木にナタで掘ったもの、
“無事お預かりしている。探すための目印に。”
この心遣い。そして、窮地にしても、一瞬で掘ってしまう技量。
己の足跡を残す。
日本人らしいなぁ。
このお姿に感服せずにはいられない。
同じ母子像をもつ親がいないか、探し回りながら、大きくなるこの男の子〔風〕に、字の書き方、火のたき方、魚の取り方、草木の名前、算術、木彫り、、、たくさんのことをお坊さんは、風に教えていきます。
風は、お坊さんのことを〔坊〕と呼びます。
それくらい、2人は時を共にしながら絆を深めていきます。
街道を歩いている途中にあった、だんご屋さん。
暖簾をくぐると、お坊さんは気付きました。
あの母子像が店の棚に置かれていることを。
風の見てない隙に、、
“名は風と呼び、旅をして3年。素直で良い子でござった。”
こんなことができるだろうか、、、。
胸がキューッとなってしまった。お坊さんの想いと、風の気持ち、両親の嬉しさと感謝の想い、、色んな立場の人の気持ちが交差して、なんとも言えず、衝撃的な結末に涙した。
“よかったなぁ、風。会えたぞ、あの2人がおまえのお父とお母だ。だんごを腹一杯たべさせてもらえ。俺の出番はここまでだ。”
お坊さんの心の中で、でてきた言葉。
そう、自分の役目、役割をよく知っていらっしゃる。見返りも求めない、自分のできることを、手放しでやること。潔の良い、人としてのあり方。
“あしたはあしたの風がふく。
おれは天下の風来坊”
春の嵐が吹き荒れる窓の外、なんだか、心が温かく、そして爽やかな気持ちになりました。