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アクトアウト(上・下)
ストイックな表紙は情報量の多い書店でも一際目を引いた。
作品情報:『アクトアウト』上・下
著者:冬房承 出版社:祥伝社(2020年10月24日発売)
名雪いばら。フィギュア・スケーターである何故彼はリンクを滑っているのか?誰にもその主体性が見いだせない。彼が新しい振付師ヴァシリー・ミハイロヴィッチと出会うことからストーリーは始まる。アスリートとしての大海と暗渠。手に、足に、根付いて離れない《家》。空っぽだったいばらの心に何かが満たされ、演技も目に見えて変わっていく。
作者自身が下巻の巻末で<本当のエンディングまで描けなかったことが心残り>と書いている通りわずか《あ、これはもしや?》みたいなシーンもあるが回収されないまま終わっている。ペドフィリアやゲイフォビアに僅かながら触れている部分も良い。アスリートや芸術の世界と社会とを包摂する素晴らしい作品。なのに、これは絶対上下巻じゃ足りない。