見出し画像

国際的に暴動が広がる今こそ、歴史を知る 映画「バース・オブ・ネイション」

ミネアポリスで発生した、白人警察の暴行が原因で5月25日に死亡したジョージ・フロイド氏の事件をきっかけに、アメリカでは、COVID-19が隠れるほど、人種差別に関するニュースで連日溢れています。7日の夜には、シアトルで銃を所持した男が侵入し、デモ参加者が撃たれるという事件もありました。そして、このデモは、今、世界中へ広がろうとしています。今日はイギリス南西部ブリストルにて、奴隷承認の銅像を抗議者たちが台座から引きずり、市中を引き回して、ブリストル湾に投棄するという行動も起きました。この銅像は、ブリストルに財団を立てるくらい寄付をした功績から建てられたのでしょうが、「奴隷取引家」という肩書により、現代の民衆により引きずり落される結果となったわけです。

現在報道されているように、アメリカではアフリカ系アメリカ人が他の人種より警察に乱暴されたり、誤認逮捕される場合が多く、更には実刑も受ける事も白人より多いわけです。これは感情的なものではなく、数字が表しています。

George Floyd: Five pieces of context to understand the protests

日本でも同様に報道されてはいるのですが、ミネアポリスで何が起きたかは報道されても、誰が何に対して怒りを持っているのかは、海外のテレビ局に比べて、日本の報道社はあまり丁寧には解説していません。ここ数年、警察官による暴行が問題視された事はあっても、ここまで大きな世界的ニュースで連日報道されるのは、1992年4月末から5月頭にかけて発生したロサンゼルス暴動以来かもしれません。この事件も、スピード違反で停止を命じられた黒人男性と、命令に背いたことを理由にLAPDの警察官が4人で暴行したというファクターがあります。更に言えば、この背景には、LAのサウスセントラル地区にあった人種間の対立と緊張もあります。今回の場合、「トランプ大統領」という白人富裕層に支えられる存在や、彼がTwitterで発する過激な鎮圧も、この暴動激化の一端を明らかに担っています。日本でも、この暴動の本質を突くような報道がなされて欲しいと願うばかりです。普通に日本で暮らしていると、アメリカの歴史で語られる黒人奴隷の苦痛を目にする機会はあまりありません。教科書に南アフリカのアパルトヘイトが一行記載されていても、黒人奴隷がどんな血を流してきたのかは、知る機会がありません。かつては、ファミリーエンターテイメントの中にも、例えばトム・ソーヤの冒険なんかにも黒人奴隷は描かれていました。しかし、それは一見、とても平和です。現在は、「人種差別」に対する規制を理由に、こういった描写はされることがありません。こどもも学ぶ事はなく、家族は話題にせず、日本からはどんどん遠い存在になっていきます。私は、日本でも世界で蔓延る差別やその歴史は学ぶべきだと強く思っております。社会学の中で、暴行やマイノリティといった事実を知るべきだと思っています。善悪は個人が経験により知るべきだと思いますが、事実は教育から伝えられて欲しいと心から願います。

2016年のサンダンス映画祭で大絶賛を受けた作品があります。

「バース・オブ・ネイション」

残念ながら発表直後に、製作者のレイプ事件が、この名作に影を落とすことになりますが、アメリカの人種差別の歴史の中で実際に発生した事件を中心に描いています。見ているだけで、辛くなる映画ですが。映画は感動や愛情も表現しますが、映像芸術はこのように歴史で発生した痛みや悲しみや傷を届けます。

連日のニュースを見て、何が起きているか分からないという人々に、是非見て欲しい一作です。そして、痛みを知った後、もっと知りたいと考えて欲しいと思います。主人公のナット・タナ―について、同名の映画があったことについて、同じテーマの本について、何でもいい、是非知りたいと思って、それをもっと調べて欲しいと心から願います。私たちが、何が起きたかを知り、それを自分の言葉で他者に伝える事により、気付く人が多くなる。そこに意義があるのだと、私は切に願って止みません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?