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Photo by
vincent2gb
猫の恩返し ショートショート
最近、玄関の前にネズミや鳥の死骸が置いてある事がある。
落ちているんじゃない。
置いてあるのだ。
気味が悪かったが、案外原因はすぐに解明された。
猫だ。
この前酷い怪我している所を助けた。
しばらく一緒に暮らす内に愛着は湧いていた。
けれど、ずっと飼っているわけにも行かず逃がしたのだ。
彼が、玄関に動物の死骸を運んでいる場面を目撃した。
恩返しのつもりなのだろう。
ますます彼が愛おしくなったけれど、優しく諭した。
言葉が通じるとは思えなかったが、その日から彼はパタリと恩返しを止めた。
不思議な事もあるもんだ。
そんな事はしばらくして忘れていた。
そんなある日。
家の外が騒がしい。
眠い目をこすりながら外に出ると、会社の上司が家の真ん前で死んでいた。
目を疑う。
殺したい程憎んではいたが、断じて殺してなどいない。
すぐに警察が来て、事情聴取を受ける事となる。
どうしてこんな事になったのだろう。
ふと、塀の上が視界に入る。
そこには誇らしげな猫が、欠伸をしていた。