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舌の上の階級闘争を読んだ。
コモナーズ・キッチン著、『舌の上の階級闘争 「イギリス」を料理する』を読み終えた。
階級も格差も噛み砕き、胃袋で掴め!
パン屋と農家と大学教授の3人によるコレクティブ「コモナーズ・キッチン」が、料理を作って、食べて、考える!
ベイクドビーンズ
フィッシュ&チップス
イングリッシュブレックファスト
マーマレード
ローストビーフ
キュウリのサンドウィッチ
…料理ごとに章立てされた12の食エッセイに、それぞれのレシピも収録。
まさに定番中の定番といえるイギリス料理の、歴史や文化的な背景を掘り下げながら、実際に作って食べてみることで、「階級」や「貧富の差」により分断された社会の現実を胃袋から思い知る!
書籍説明の通り、イギリスの歴史や文化を食から掘り下げる一冊。
結論から言うと、読んで良かった。読書体験として楽しくも勉強になり、次へ次へとページをめくった。
毎回、イギリス料理を取り上げ、その写真とレシピも載っているが、さすがにレシピとして買う人はいなさそう。でもそれだけにイメージができて、美味しそうだし作ってみたくなる。
『舌の上の階級闘争』、読み終わり!
— 本田受信料 (@honda_jushinryo) October 23, 2024
コモナーという様々な立場の皆さんと一緒に🇬🇧の階級と食の関係を解き明かす試み。歴史・映画・文学・マンガからの多彩な引用と垂涎の写真、レシピまであってまさに全部のせ状態!
ぜひコモナーの皆さんにはEテレで番組シリーズ化してほしい…笑#読書記録 pic.twitter.com/eLH4Bprlms
良かったので思わずポスト。著者の方からも反応頂いた。
なぜ買ったか
ある日SNSから書籍紹介が流れてきたのだが、そもそもなぜこの本を手に取ったかというと、実は自分自身、イギリス料理は嫌いじゃないからだ。むしろ好き。一番とまではいかないけれど。
だから、イギリス料理サゲじゃなく、冷静を装いつつ、食欲をそそらせようとしてくるこの本に興味が出た。
本屋で手にとってみて、いちばん最初に取り上げられていた料理がベイクドビーンズなのも大きかった。学生時代、イギリスに行って、現地の友達のフラットに泊めてもらい、朝食に作ってくれたベイクドビーンズのせトーストの味が忘れられない。日本であんまり知られてないが、日本人は結構好きな味だと思う。ケチャップっぽいトマトソースで煮込まれた豆。みんな好きなはず。
イギリス滞在中、それ以降も、入ったパブで豆をマッシュしたやつが出てきたり、豆好きなんだなーとか思ったが、どれも美味しくて、以来イギリスの食に悪いイメージはない。
だからこそ、ベイクドビーンズが最初に取り上げられていて、「これは信頼できる本だ…」と直感した。
あと、本書には2回もMASTERキートンが引用されていて、"わかってる"なと感じたのも強く購入を後押しした。
何も知らずに享受する人
読み始めると、とにかく本書は映画、文学、音楽、マンガなどなど多様なカルチャーを引用して料理を紹介するのだが、そこにはどのような歴史(主に階級格差と貧困)があって国民に愛されてきたのか、普遍たり得たかを説明する効果的なギミックとして登場する。案の定、食にもカルチャーにも目がない自分は「そういう事が聞きたかった!」と嬉々として読み進めていった。
普段から推し活とかでも感じる事だが、文化やエンタメなど現代社会で享受しているものがどんな歴史背景の上に成り立っているのか、知らない・気にならない人が多いことに驚く。むしろ自分そこに興味を抱き、理解したうえで楽しむ事がヲタクのあるべき姿勢だと思っている節があるため、まさに本書はそれにうってつけだった。
昔、友達に「なぜ君は海外とか異文化に興味があるのか」と尋ねられ、「だって世界中に友達たくさんできたら色んな国の料理食べられるじゃん!」と答えて、単なる食い意地はった野郎だと思われて、一言「浅っ」と返された事がある。
あのときうまく説明できなかったけど、今なら説明できる。食を通してその土地の人々の生活を知り、歴史を知りたいのです。決して食欲まみれの浅いやつではないのです。
最後に、これを読んで安易にイギリス料理を買いに行くことはできない。なぜなら、著者であるコモナーの方々はなるべく自分たちで作ること(ときには作物を育てる所から)に意義と尊敬を込めているからだ。一貫してその姿勢を持たれていることに敬意を抱きつつ、とはいえなかなか日本で手に入らない食材&手間も多少はかかる料理ばかりで、なかなか作れていない日々。それでもやはり何かしら食べたくなってしまったので、HEINZのベイクドビーンズの缶を買うことくらいは許してください。