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【ダヴィンチ・コード】"科学的に"キリストの血脈はほぼ遺伝されない【ネタバレ考察】

以下の文章にはネタバレを含んでおりますのでご注意ください。

久々にロン・ハワード監督の「ダヴィンチ・コード」を見ました。

この映画が上映されたのは10年以上前ですが、やはりいい映画というのは色褪せないですね。

まあ原作が素晴らしいというのもありますが、非常に面白い物語です。

かくいう僕も当時映画が公開されると知り、中学生で上下巻の書籍を読んだことを覚えています。それからダン・ブラウンの小説を読み漁りました 笑

映画は原作小説を詰め込んだせいか、暗号考察がかなり簡略化されており、この物語の真に面白いところにピンとこないのは残念です。(ダイイングメッセージのアナグラムから、レオナルドダヴィンチとモナリザを導いたところには、中坊だった僕はとても驚きました)

前置きはこのぐらいにして、今回僕が記事にしたいのはこれです。

イエス・キリストの血脈は遺伝されたのか?

「いやいや、何言ってんの?w ソフィー(今作のヒロイン)が王家の血脈ってわかったじゃんwww」

作品を知る方ならこう思うはずです。まさに仰る通り。

ソフィーは王家の血脈。もしもルーヴル美術館の地下に眠るマグダラのマリアの遺伝子と一致した時、彼女はマグダラのマリアの子孫であることが確定するのです。

もう一度言います
マグダラのマリアの子孫であることが確定するのです。

「それってつまり、イエスの子孫ってことでしょ?」

ええ、その通り。
ですが実は、イエスの遺伝子はほぼ受け継がれていないこともわかるのです。

マグダラのマリアの子孫であるが、イエスの遺伝子はほぼ継承されていない。

それについて、生物学の基本をおさらいしながら説明していきます。

血統の維持とは染色体が受け継がれることを指す

読者の方は、人間の性別が遺伝子でどのように決まってるかご存知でしょうか?

それは23番目の2本の染色体が「XとXのペア」なら「女」、「XとYのペア」なら「男」というように決まります。

このペアは卵子と精子がそれぞれ一本ずつ染色体を持ち寄ることで、ペアが成立し、子が生まれるのです。

男性と、そこから生まれる精子が「X染色体」と「Y染色体」のどちらかを持ってるのに対し、女性は「XXのペア」なので、卵子は「X遺伝子」しか持っていません。

したがって
「卵子に受精する精子がX染色体なら女」
「卵子に受精する精子がY染色体なら男」
のように決まります。

そしてこの話は血統において、ものすごーく重要なことなのです。

人間は染色体を23ペア、全部で46本持っています。

精子と卵子が受精するとき、それぞれ親から23本ずつ持ち寄って46本にするのです。
「片方が30本で片方は16本」なんてことは絶対にありえません。

つまり元親がもつ残りの23本は遺伝されないのです。

だから子に遺伝するのは自分の半分だけであり孫に遺伝するのは自分の四分の一以下となります。

「え? 待って? じゃあ何世代も後には、自分の染色体はほとんど残ってない可能性が高いの?」

その通りです。

子孫が作った精子か卵子が先祖の染色体を一本も含んでない可能性はあります。

約840万分の一の確率で孫にすら自分の染色体が一本も含まれない可能性があります。

23世代以降であれば、先祖の遺伝子が残る確率は天文学的数字になります(だいたい0が83個つくぐらいの確率)

「じゃあ血統の維持なんて最初から無理じゃん!」

いえいえ、そんなことはありません。

46本ある染色体のうち、絶対に遺伝させられるものが一本だけあります。

それがY染色体です。

Y染色体を知らないはずの古代人も「血統の維持」の条件を知っていた!?

Y染色体は男性だけが持ち、これを引き継いだ精子だけが男子を産むことができます。

もし、子が男であり、孫も男であれば、孫の持つY染色体は絶対に祖父のものと同じになります。

もし子が娘で、孫も娘であったとしても、孫の持つX染色体は四人の祖父母のうちの誰のものかは全くわかりません

これを男系血統と言います。

我が国の天皇家がまさにこれですね。
万世一系の天皇の血は、万世一系のY染色体を意味しているのです。

Y染色体どころか細胞の話すら知らなかったはずの時代の人間が、男系によって血統を守っていたことには科学的に感動できます。

では女系は絶対にありえないのか?

実はそんなことはなく、女系血統にも科学的に意味があります。

精子には含まれず、卵子にのみ含まれる遺伝子「ミトコンドリアDNA」という遺伝子のおかげで、女系血統も万世一系の遺伝子を継承することが可能なのです。

さて、これまでのことを踏まえて、ダヴィンチ・コードの話に戻りましょうか。

イエス・キリストは男だが、その子とソフィーは……?

物語では

「マグダラのマリアとイエスの間には子がおり、それは娘だった」

となっています。

そしてソフィーは女性。

そうです。
聖杯の王家、ソフィーのSANGREAL家は女系王家なのです。

女系が絶対に継承できるのは「ミトコンドリアDNA」であり、
「Y染色体」ではないのです。

お気づきでしょうか?

ソフィーはマグダラのマリアの子孫であるが、イエスの遺伝子はほぼ継承されていない

と僕が最初に述べたことの意味を。

言い換えるなら

ソフィーはマグダラのマリアと同じミトコンドリアDNAを持っているが、イエスの染色体を持つ確率は天文学的数字ほどの確率でしかない

という事です。

マグダラのマリアは人でした。聖人も悪魔で人間です。(ちょっとこの言い回し面白い)

「ダヴィンチ・コード」には唯一、生きたソフィーの血縁が登場します。それはロスリン礼拝堂であった祖母でした。彼女もまた、王家の血脈、マグダラのマリアの遺伝子を持つ女性なのです。しかし、イエスの染色体はほぼ持っていないのです。

もしも、イエスの染色体を後世に残すなら、彼の子が息子であり、男系王家を作る必要がありました。

イエスが死んだ時にマグダラのマリアの身籠っていた子が娘だった時点で、神の子の遺伝子を継承するのはほぼ無理だったのです。

ソフィーが水の上を歩けず、水をワインに変えられなかったのも納得ですね 笑

原作者ダン・ブラウンの天才さ

ダヴィンチ・コードは公開当時、世界的に話題になりました。

作中でもあるように、イエス・キリストが人であることが証明されるのはカトリック世界には地動説以上に衝撃的だからです

やはり本作そのものもローマ教会から「キリストを冒涜している」とケチをつけられたそうです 笑

しかし、もし作品通りに「シオン修道会によって、イエスキリストの女系王家・聖杯が守られていた」としても、神の子の遺伝子は絶対に明かされないでしょう。

「ダヴィンチ・コード」通りの仮説が展開してもキリストの権威が脅かされることは決してないのです

僕はダン・ブラウンが王家の血脈を女系としたのはカトリック教会への配慮だったと思っています。

歴史をあれだけ精査し、難関な暗号を思いつく天才が生物学と血統の基本を知らないなんてありえませんし、真にイエスの遺伝子の存在を示唆するなら「男系」の物語を展開するはずです。

宗教を扱う作品はきわめて慎重に扱わねばなりません。

過去にイスラム教のムハンマドを風刺した会社が、銃撃テロを受けたこともありました。キリスト教も例外ではありません。

ダン・ブラウンはそれらを踏まえて、作品のオチにすら最大限の配慮を施したのです。

彼はやはり天才でしょう。

最後に

いかがでしたか?

たぶん探せば同様の考察をしてるブログが出てきたり、もしかしたら本人がインタビューに答えているかもしれません。

調べるの面倒なので、自分の考察だけ書きました。(英語読むのだるいしね……)

ダヴィンチ・コードを含むロバート・ラングドンシリーズはどれも面白いので、是非映画を観たり本を読んだりしてみてください。

「天使と悪魔」や「インフェルノ」なんかがそれですね。

僕はロバート・ラングドンシリーズを観ると、「ナショナルトレジャー」シリーズも観たくなります。宝探し系って映画の中でも本当に楽しい部類ですよね 笑

生物学のおさらいで長くなってしまいましたが、読んでいただきありがとうございました!

今回はここまで。


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