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見落としがちな可能性を考える理由。

私が「可能性を探求する」というテーマを掲げて創作活動をしている理由を考えると、私自身生活をしている中で、自分に限界を置きたくないという強い意志が由来している気がしています。私は幼少期から、運動も勉強もさほど得意ではなく、太ってもいたし、劣等感が強い部分がありました。親からも「鈍臭い」「計算が遅い」などと言われていたり。それが恥ずかしくて、運動に挑戦したり楽しむことや、算数に努力することから逃げたんです。意識をしすぎて、気軽な気持ちで上手く取り組むことができなくなった部分があるように思います。今、この年になって思えばかなり勿体無い選択だと思いました。

例えば、家庭科。私は独身なので、実家に両親と暮らしていますが、両親が家を長期不在にすることが多々あり、一人で生活することがありました。それまで親に言われていた「料理ができるはずがない」という言葉もありましたが、たまたま一人暮らしをするタイミングがあり、必要に迫られて挑戦し、料理をレシピ通りやってみる機会がありました。そしたら、どうでしょう。何も問題なく普通に美味しい料理が私にもできました。何もこのエピソードだけのことではありません。こういう経験は他のどんな事にも言えます。何事もまずやってみて、下手くそでも、周りの評価を間に受けずに挑戦することを続けていれば、今の体型や、趣味の範囲や、行動や、経験や、思考がもっと別の可能性が開けていたのではないかと思えることが、他にもたくさんあるように思います。

私には、「不器用さ」というバネがある。

とにかく不器用と言われてきました。今も言われます。そう思われてるんじゃないかと、多々思い心が惨めになったり、ヒリヒリします。確かに他の人よりできないことがたくさんあるかもしれません。たまになんでこんなことで努力しないといけないのか、普通に気楽に過ごして、人並みに生活できることはないのか。そう思うとしんどくて全部投げ出したくなる様な時もありました。しかし、自分を諦めることはしたくないという気持ちの方が強いのも確かです。世界の中で、自分だけしか自分を信用できないのだから。この気持ちが、飛躍のバネなのだと私は思っています。

そういえば、この間、仕事でご一緒しているプロデューサーさんからインタビューを受けていて、ふと言われた一言が印象的でした。
「渡邉さんって、逆境に強いですね」
確かにそうかもしれない。それこそが、私の力だと思っています。


作品で、皆さんの視点を開くきっかけを

また、私にとっての芸術は、自身とは違う視点を発見したり、未知のものに出会い、自身をアップデートする取り組みであるという考えがあります。その本質を大切に、見たもののイメージ、思考をひっくり返してしまい、可能性を広げる体験をすることができる作品を目指しています。できれば、この文章を読んでくださっているあなたが、この瞬間から、日常の可能性を探したくなるようなそんな作品でありたいと思っています。綺麗事と言われるかもしれないし、恥ずかしいかもしれないけれど、純粋に誰かにいい影響を与える存在でありたいということは、私の作品の本質だと思えます。


作品のアイデアの源は空

それでは、どうやって作品を制作しているのかをご紹介しましょう。
色々な作品があるので全部は紹介できないので、とりあえずこの文章のトップ画像にもなっているこちらの作品から。


今朝の空:カレイドスコープ 20240518


これは、2021年から始めた《カレイドスコープ》シリーズの作品。
空を見て切り取った時に、フレームの外側に見えない物語があることを意識しました。目に見えないことの可能性をイメージして描いた作品です。

《カレイドスコープシリーズ》
朝、目覚めてすぐに見たその日の朝の空(もしくはその日の違う時間帯の空など)から、感じとったものを元にイメージを膨らませて、表現したデジタル作品。その日の空の写真が素材として取り込まれている。
カレイドスコープ(万華鏡)の様に一つの景色が無限に広がる様に多角的な角度で配置され、遠くから引いて見ると違った模様が浮かび上がる。同じ景色を見ていても見る人の角度で違った世界になることを視覚化する。

渡邉帆南美の作品紹介文章より

私は偶然性を大切に制作することが多いですが、毎日、空を見ていて、毎日、毎秒、毎分違う表情を見せる空の偶然性が面白いところから、このシリーズを作り始めました。

作品の制作過程

まず、空を見てイメージを膨らませながら、写真を撮り切り取る。
もう本当に一瞬のイメージを直ぐに切り取る。


元の写真。完成した作品のどこに使われているかわかりますか?


このような画像をPCで編集し、そこに、イメージした印象を記号のように自分なりの形態や色彩に置き換えたオブジェクトと組み合わせた後、パターン化して完成させます。最終的に意図とはかけ離れた別の面が立ち現れることが多いのです。

制作の壁にぶつかるときは

基本的に流動性のある絵の具で画面を描く様に、デジタル上でありながら、自分で意図しない絵柄が浮かんでくることが多いこの作品は、思わぬ発見を生み出すので、悩むことはほぼないんです。もし悩んだ時は、手を止めて休むことを考えると思います。

可能性を探すことをぜひ楽しんで

重要なところは自分の意思通りに作っていながら、それをわざと手放す、また違う角度から見つめることで、思わぬ面白いことが起きること。この作品を作る過程でよく体験すること。それは、人生の中でも、とても楽しいことではないかと思えます。ぜひ空に可能性があるように、身近な日常の可能性を探究するヒントをこれらの作品から見つけてください。

ここからまだまだ広がる可能性

実は、この作品はこれで終わりでなく、更にこれを素材に色々な形に転じるような作品も作っていく計画をしています。ぜひ新作が出た際には、どんな作品が画面に使われているのか、注意深く探してみて欲しいです。今までとは違う作品の味わいに気づくことがあるかもしれません。

最後になりましたが、あなたにとって充実した生活とはなんですか?

私は作品を通して、自分自身を広げたいと思っています。あなたにとって、可能性を広げることはどんな意味を持つでしょうか。この作品を見てくださった方の日常のなかでも、もっと、今までとは違った可能性が広がることを願っています。





参考作品
渡邉帆南美 《
今朝の空:カレイドスコープ 20240518》

展覧会にてご購入ができるかもしれません。お求めの方はご連絡ください。
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