イスラエルのバンド”Pinhas and Sons”について思ったこと
こんにちは。打楽器奏者の木川保奈美です。
最近ハマっている「イスラエルの」イスラエルジャズのグループ”Pinhas and Sons”のアルバムについて書きたいと思います。
この記事は単に、このアルバムの紹介だけでなく、少しセンシティブな内容も含むので、Twitterにボーンと書くのはどうかなー、興味のある方だけに読んでもらえたらなと思ってnoteを始めてみました。
さて、以前からイスラエルジャズはめっちゃ詳しいほどではないけど好きで、たびたび聞いていました。
最初は王道にベースのアヴィシャイ・コーエンが好きでよく聞いていましたが、ここ近年は、ブラジルのミナス・ジェライスの若手音楽家コミュニティが割とイスラエル音楽やアルゼンチン音楽に影響を受けている(相互に影響し合っている)のではないか?と思うような作品がところどころ見られることもあり、再注目していたところです。
その点に関しては、また別の記事にして熱く語りますね(笑)
そしてこちらのブログ記事を読んで、Pinhas and Sonsを知りました。
https://musica-terra.com/2020/05/30/pinhas-and-sons-an-album/
このバンド、めっちゃかっこいいです!
上記に示した「ミナスの若手、イスラエル音楽、アルゼンチン音楽界隈で相互にインスピ受けてる説」の観点から言うと、3曲目はAca Seca Trioあたりの現代フォルクローレファンなら絶対ハマりそうな美しいハーモニー。
5曲目の小難しい5拍子はいかにも中東!って感じで玄人受けしそうなのにしっかりポップ。このバンドをスナーキーパピーのようだと評する意見もいくつか見られましたが、これなんてまさにそれっぽい感じです。
全曲レビューしたいところですが、一旦おいといて(笑)
私は6曲目「狂気のダンス」が特にお気に入りです。
リズムはブラジルのバイアォン風、スケールは中東がミックスされていてかっこいい曲です。ハーモニーはそれこそ、ちょっとミナスっぽい。
また、爽やかで華やかな曲調とは裏腹に、複雑な軍事的状況下で生きるフラストレーションと、世界と繋がりたいという願いを表している、と先日Twitterに書きました。(中東と西洋のスケールが交互に出てくることで表現しているようです)
なぜ楽曲の背景を知ったかというと、インスタのストーリーに彼らのアカウントをタグ付けして載せたら「なんでうちのバンドを日本人が知ってるの?」とメッセージをくれたので、少し会話をし「6曲目が特に好き!イスラエルの文字は読めないんだけどどんな曲なの?」と聞いてみたら、そのように教えてくれたのです。
その時は(そっか〜あの辺りは色々?大変だもんね)なんて、分かったような気になっていました。
ところで、私のインスタのフォロワーは外国人がかなり多く、もちろんイスラエルとの関係があまり良くない国の方もいます。
インスタにPinhas and Sonsのことを載せて少し経つと、そのうち数名から「なんだ、イスラエルのバンドかあ…」「イスラエルなら聞かないよ」等の否定的なメッセージももらいました。
世界の色々な国のそれぞれの関係性については、私は何も言える立場にないですし、言える立場の人がそれぞれの意見をしっかりもって主張することは尊重していますし、傷ついている人たちの気持ちを踏みにじるようなことは絶対にありません。
ただ、個人間の問題でなく、国や歴史、社会情勢などの、どうにもならない理由で、この素晴らしい音楽を聴いてもらえる機会が失われることもあるんだ、彼らはそういう世界で生きて、それでも音楽を作って発信しているんだ。世界と繋がりたいんだ。と気づかされ、それを知った上で「狂気のダンス」を聞くと、言葉の意味はまるでわからないのに、胸が熱くなりました。
日本でもだいぶ知られるようになった、アメリカに渡ったイスラエル人ミュージシャンのイスラエルジャズより、いわゆる「イスラエルの」イスラエルジャズは非常にドメスティックなコミュニティで世に出てきづらいです。
その本当の意味が、今回のことでやっとわかりました。
インターネットなどの発達により、自分の音楽を発信してみんなに聞いてもらうことはすごく簡単になったと思っていたけれど、世界には、複雑な理由から、そうでない人たちもたくさんいること。
そして、そのような世界のドメスティックなコミュニティの音楽(だけでなく様々な芸術、文化)に触れられる幸せを噛みしめながら、今後も好きなものをディグり、好きなものを好きだと発信し続けることが、音楽オタクの使命でもあり、思いもよらない誰かの新たなファン獲得に貢献できることもあるのかなー、なんて思いました。
兎にも角にも、Pinhas and Sonsは本当におすすめ!
色々難しいこと書いてしまいましたが、まずは聴いてみてください。
一聴の価値ありありです!
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