打楽器アンサンブル指導の備忘録

打楽器奏者の木川保奈美です。
最近、Twitterでも時々つぶやいていたのですが、9月から続いていた、中学生グループレッスン案件にひとつの区切りがつきました。

「アンサンブルコンテスト」という3名〜8名の小編成バンドの大会に向けてのレッスン。普段は学校の吹奏楽部や地域の吹奏楽団で大人数で演奏している学生さんや社会人の方が小編成での演奏で競い合い、全国大会まであるそうです。
11月の地区大会までと思いきやまさかの地区代表になり、クリスマスイブの県大会に出場。長いお付き合いとなりました。

ちなみに私自身は吹奏楽業界での仕事は全くしておらず、ポップスやジャズの業界でライブハウスやジャズバー、イベントでの演奏やスタジオミュージシャンとして活動しております。一番多い活動ジャンルはブラジル音楽です。
レッスンもしていますが、普段のレッスン生徒さんは圧倒的にパンデイロ等、ブラジルやラテン系の打楽器を習っている方が多いです。

海辺の小さな町の中学校。選んだのは1台のマリンバを3人で叩く曲ですが、人数不足で入部したての1年生や、ひとりは運動部から借りてきての出場です。
最初のレッスンはマレットの持ち方から始めた、そんな初心者揃いのチームと、吹奏楽とは全く別のフィールドで活動している講師がタッグを組み、コロナ禍で練習時間も満足に取れない中、なぜここまでの急成長を遂げたのか?

彼らは中学生ながら、自分たちの演奏に対して「客観的に」欠点やそれに対する改善案を出し合える人たちでした。

レッスンの中で自分たちの演奏動画を撮影、見返しながらフィードバックし合う時間を設け「では今の演奏を見た感想を…①ここができなかった。②ここは前よりもできた。③今までこうしていたけど、もっとここはこうしてみたい。など聞かせてください」と一人ずつに聞くのですが、全員パッと意見が出てきます。

それでも大抵は「ここができなかったです〜」など、自分のマイナス面にフォーカスしがちですが、「やっぱここの拍子の区切りがみんなグチャってなって上手く空気作れないです…どうしたら入りやすくまとまるかアドバイスほしいです」などバンドサウンドをちゃんと捉えて意見が言えるメンバーもいました!(14歳だぞ?しっかりしてんな〜)

ちなみに②のできた箇所を挙げられるというのも大事なことで、つまりその部分の練習方法が自分に合っているいうことですし、曲中に一つでも自信を持てるポイントを作ることで、無意識のうちにスターの自覚が出るのか、その瞬間だけきらめきだすんです。
ステージにおいて上手い下手関係なく、「きらめけるか」は重要なポイントです。その瞬間だけでも「もっとあの子を見たい」と思わせられれば、その子は”演者”になれます。

ひとつの音楽を、特に複数名で作り上げる上で「こうしたい!」という意思は大切ですが「それになれない自分」に対しての感情はやっかいなものです。
ここに関しては初心者よりも、ある程度の経験者ほど過去の努力の蓄積やプライドが邪魔をすることもあるかと思います。
実は私自身も、わりと感情型なほうで「あ〜なんであそこできなかったの!」と気持ちが引っ張られてしまい、時にはそれが気になって別の箇所の演奏にも支障をきたすことも。しかもそれを言語化するのも苦手で、同じようにその場でフィードバックを求められる状況だったら時には「う〜ん(何がいけないんだろう)」と一回黙りこんで相手を困らせてしまうでしょう。
大人になってから性格的になるべく改善するようにはしていますが、なかなか難しいです。

その点、彼らは良い意味で自分の演奏に対して主観をなくすことができるんです。初心者だから過剰なプライドが無いというのもあるかもしれませんが、感情が入らないのでケンカや言い争いにもならず、現場(あえてこう呼びます)の雰囲気もピリピリせず、純粋な「意見交換」としてああでもない、こうでもないとサウンドを構築していくその様はなんともビジネスミーティング的で気持ちがよかったです。
「ほなみ先生に教えてもらう」受動的ではなく「ほなみ先生もチームとしてこの音楽を一緒に作り上げる」みたいな、私の存在を外部ブレーン的にとらえてもらい、気持ちの良い推進力がありました。(でもちゃんと先生だからリスペクトも持ってくれて…ありがたい限りです)

30代になったとはいえ、私は音楽業界ではまだまだ若手の部類ですが、なんだろう、彼らを見ていると「将来こういう若手と仕事がしたいな」と思わせてくれるような、そんなチームでした。

本番は少し緊張ぎみではあったものの、「賞を取るのも一つの勝ちだけど、私たちの勝ちはこの大会っていうおごそかな雰囲気の中で客席の誰か笑わせたら勝ち」の教えどおり、楽しくのびやかに演奏できました!
県大会の打楽器部門には、アンサンブルといっても、機材何個あるんだ?ってぐらいのオーケストラみたいなラージバンドもあって驚きました。それに対してマリンバたった1台と共にちょこちょこ出てきた彼らの姿は気取らず本当に可愛らしかったです(講師バカ?笑)

感染症対策で客席はマスク着用必須だったので、お客さんが笑っていたかは分かりませんでしたが…ここで笑わせたれ!のポイントで、ほんの少しだけ客席がガサゴソした瞬間、心の中でガッツポーズしました。

本当によく頑張りました!
クリスマスイブに最高のプレゼントをもらいました。

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