幸せのワンピース

ちょうど一年前に書いた手記が出てきました。
音楽とは関係ないのですが、良かったら読んでください!

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6年ほど着たこのワンピースを、今シーズンでついに捨てることにした。
大切に着ていたけどいよいよ毛玉が出てきて、丈も少し昔のデザインであるため、久しぶりに袖を通した時に「ああ、こいつの役目は今シーズンでおしまいだな」と気づいた。
ただ、このワンピースは私にとって特別お気に入りで、ただ捨てるにはなんとなく寂しいので、思い出を最後に書き連ねることとする。

6年前。普段はあまりデパートで服を買わないが、新宿のルミネで見かけた時に(これは、私に似合う!)と確信し、衝動買いした。
確か16,000円が8,000円とセールでかなりお得になっていたものの、当時はパーカッショニストとしてまだ全然売れておらず、IT企業で青い画面や黒い画面によく分からない長い英語(多分英語ではない)を打ち込んでエンターを押すだけのバイトをしながら生活していた私には少し高額だった。
しかもワンピースなので演奏時は使えない。買っても無駄なのでは…とよぎりもしたが、試着してみたところあまりにも似合ったので、これを逃したらこんなに似合うワンピースにしばらく出会えないだろう、と腹を括った。

この服、見た目は「狭っ」「細い人しか着られないんじゃないの」という感じだけど、着てみるとバシッ!!!と身体にフィットして、私の身体の長所である姿勢の良さを強調し、短所である胴の短さをカバーしてくれて、肌色にも合っていて、本当によく似合った。
これを着ていると、いつも「似合う!」「きれいだね!」と褒めてもらった。
着ているとうれしくなるので、何か楽しげな予定のある日に着るように。

私が所属する即興演奏打楽器集団LA SEÑAS(ラセーニャス)を初めて見に行った日もこれを着ていた。自分が加入するなど思わず純粋にライブを楽しんだが、ご縁あってこの数ヶ月後にラセーニャスに入り、かけがえのない仲間とともに夢のような現場をたくさん経験し、今も新たなステージへ向かっている。


アルゼンチンの素晴らしいピアニスト、アンドレス・ベエウサエルトのソロ公演を観に行ったときもこれを着ていた。彼はとても有名人だけど、色々あって何故か気に入ってくれて、友達になった。数年後に彼の所属するこれまた素晴らしいフォルクローレバンド、アカ・セカ・トリオの東京公演に飛び入り参加させてもらうとは夢にも思っていなかった。


そして私が目標とするパーカッショニスト、ペドロ・イトウがヒカルド・ヘルツトリオで来日した時もこれを着ていたようだ。一点突破型が多いブラジルのパーカッショニストで、様々な種類の打楽器をセットにして配置する要塞型(ブラジルでは”ペルクテリア”と呼ぶ)にして、柔らかく繊細な表現を併せ持つ彼のプレイはまさに憧れ。間近で見られたことは貴重な経験だった。


この服は間違いなく、私にとって幸せのワンピースだった。
美しさと推進力をくれて、いつもより自分が好きになれた。
私をきれいにしてくれてありがとう!
幸せにしてくれてありがとう!

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