書を捨てず街に出よう。10月7日(土) 吉祥寺ZINEフェスティバル参加レポート
10月7日 吉祥寺ZINEフェスティバル開催 お疲れ様でした!
ご来場および出展者の皆さん、ZINEフェスロスしてますか? 私はイベントの反動で何も手につかない1日を過ごしたあと、なけなしの元気を振り絞ってこのレポートを書いています…。
当日は、本っ当に楽しい時間をありがとうございました!
合同スペース主の奥野じゅんさん、弊スペースまで遊びにきてくださった皆さま、新作ZINEを手に取ってくださった読者の皆さま、その他にもお話させていただいた出展者さん、主催のBOOK CULTURE CLUB様。
今回のイベントに関わったすべての方にお礼申しあげます。
思い出を胸に秘めておくのはもったいないので、ZINEフェス参加までに考えたこと、当日の会場の雰囲気などを、レポートとしてお伝えできればと思い、筆をとりました。
当日、会場にはご来場できなかった方や「ZINEフェスに参加してみたいけど、どんなイベントだろう?」と興味を持っている方も、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。
序:ZINEフェス前夜
改めまして、穂波晴野(ほなみ・はるの)と申します。紙の本を企画することが好きで、物語を創作する喜びに夢中になるうちに、気がつけば作家になっていました。
そんな私が「クリエイターが集まる場所」に初めて訪れたのは、ある創作系リアルイベント (東京ビックサイトの某イベント) だったのですが、
じつは2020年以降は、コロナ禍や生活の変化を理由に長らく足を運べていませんでした。
作家としてお仕事をさせていただく機会が増えてからは、小さな部屋に引きこもってひたすらに書くことも多くなり、出不精はますます加速するばかり。
もともとインドア派なのもあり、リモートワーク続きの毎日には順調に慣れていった一方で、焦りを感じてもいました。
「誰かの『この作品を届けたい』という熱量」が、手が届かないほど遠くにある篝火になってしまった。
大げさかもしれませんが、そんな想いがくすぶっていたからです。
noteをはじめとしたSNSにだって、言葉も感情もあふれています。
書店に行けば新しい本との出会いもあるでしょう。
ただ、目や耳に届く「情報」は簡単に出会えてしまうほど価値が薄れ、その奥にいる相手との距離も遠く感じるようになっていました。
リアルな場所や機会の共有が減るにつれて、「創り手=作家」「作品そのもの」「届ける人=編集者・販売者」「受け手=読者」の四者が一堂に会するのは、じつはとても稀有なことなのかもしれない。
そう考えるようにもなりました。
このまま創作系リアルイベントとは距離をおいていくのかもしれない。
それこそ変化を受け入れるということなのかも。ただ、後ろ髪を引かれるような寂しさもある。
もやもやとした屈託を抱えていた、そんなとき。吉祥寺PARCOで開かれていたZINEフェスと出会ったのでした。
そしてZINEフェスへ:申し込み編
なにやら吉祥寺でZINEフェスティバルなるイベントがあるそうだ。
2023年6月某日、そんな噂を聞きつけて、吉祥寺PARCOで開催されていたZINEフェスを歩いてまわったところ、
好きなものを自由にまとめた冊子=ZINEを手売りするイベントらしい!
と、わかってきました。
写真集や旅行記、イラスト集などもほかにも、短編小説集や短歌などの読み物ZINEを発行されている作家さんたちもたくさんいたため、これは一度、出展者として参加してみたいと考えはじめます。
そして2023年6月末、10月7日開催のZINEフェスティバルの申し込みが開始。
会場は、武蔵野公会堂。
大好評のイベントのため、あっという間に受付が終了してしまい、泣く泣く参加を諦めようとしたところ、同じくZINEフェスに興味深々だった奥野じゅん先生のご好意でスペースをご一緒させていただくことになりました。
ここまで坂道を転がり落ちるように決まってない……?
さあZINEフェスへ:準備編
「まず1冊は好きを詰めこんだZINEを創ろう」と決めていました。
当日の新刊「ふたり暮らしの歳時記」についての詳しい紹介は、note記事にも書いたので割愛。
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春夏秋冬をともに過ごす【わたし】と【私】の日々をつづった連作掌編集になります。とくに描きたかったものは「季節感」と「生活感」です。
「季節の言葉」を各編タイトルに添えて、1編1感情をめやすに作ってみました。
表紙は、イラストレーターのPort様にご担当いただきました。
物語の世界観をつたえる1枚をオーダーさせていただいたのですが、温かな彩りに満ちた装画のおかげで素敵な一冊になりました。
ZINEフェス会場でお買い求めくださった方のなかには、「女同士のストーリー大好きなんです!」と、直接お伝えしてくださった方もいて嬉しかったです…!
今回は「ルームシェアもの」になるのですが、女性同士のバディ関係や連帯を軸にしたお話を書くことが多いため、女と女の夢も理想も面倒くささもぜんぶ詰めたい。
そんな思いを込めて、16本の掌編を書いてみました。
テキスト初稿の作成は、約1週間ほどの間にすこしずつ。レイアウトとデータ作成~入稿に約5日。普段使わないツールを試しながら作成していたら、想定よりも遙かに時間がかかってしまった…。
大きな事件が起きるお話ではありませんが、最後まで読むと「ふたり」の着地がみえるような1冊になったと思います。
準備中には、2冊目のZINEも創りたい思惑もあったのですが、残念ながらそんな余裕はなかったのでした…。
いざZINEフェス会場へ!:当日編
なぜか開催1週間前にスペース名〈幻月庵 - げんげつあん - 〉が決まり、当日までの準備を終えて、いざ会場へ!
当日は自分のスペースでのお店番だけでなく、運営補助として入り口受付のお手伝いもさせていただきました。
井の頭公園までの道沿いにある建物のため、通りすがりに看板をみて来場されるお客さんも多かった印象です。
会場は、アットホームな雰囲気。
出展者とお客さんの距離も近く、会話もはずみやすい雰囲気でした。
お店番時には、販売しているZINEを手にとってみてもらえるように、スペース前で立ち止まってくださったかたには「よろしければご覧ください」と、軽くご案内をするようにしていました。
そこからZINEについての質問や感想もその場でいただくこともあり、ZINEをとおした出会いも生まれたり。
買い物中にも、ほかの出展者の方々とお話をさせていただいたり、専門とするジャンルの異なる方々とも交流を楽しめる機会で、なにかと新鮮な体験ができたイベントでした。
「好き」を発信する場だからか、出展者の背景も、小説家、デザイナー、イラストレーター、造形師、研究家、調香師、調理師などなど本当にさまざま。これだけたくさんの分野のクリエイターと一度に出会えるのは、ZINEフェスならではじゃないかなと思います。
また、紙や印刷に対しての熱意が高い方が多く、スペースでZINEを読みながら印刷所トークができたのも楽しかったです。
頒布物については1種では少なかったので、100~200円の手にとりやすいZINEも用意できればよかったという反省もあります。
ほかにも話のきっかけがひとつでも多いほうがとっつきやすくなりそうなので、フリーペーパーも作りたかった…!
街に出よう、ZINEフェスへ行こう。
「人が人を想いながら何かをつくる」という行為が好きです。
世の中には魅力あふれる作品を作る方があふれていて、誰かと比べて勝手に落ち込むことも多々あるのですが、それでも作品を通して誰かと出会いたいという希望をなかなか捨てられません。
物語のなかに描かれた純度の高い感情。
絵や写真を散りばめて体験を綴ったエッセイ。
評論文に記された研ぎ澄まされた思想。
それらをあえて印刷までするという試みには、当然ながら時間もコストもかかりますが、どうせなら手間暇をかけたうえで「形」にして伝えたい。
ZINEづくりにはそんな「あえてコストをかけて制作に打ち込み、楽しみながら伝えること」の魅力があるように思います。
願わくはこの度発行したZINEが「わたしだけの楽しみ」なだけでなく「あなたにとっても楽しいもの」であれば嬉しいです。
そして、この記事を読んで「自分もZINE作ってみようかな?」と考えてくださる方がいましたら、声を大にして言いたい。
ZINEは読むのも作るのも楽しい。
ZINEフェスおすすめです!
◆今後のZINEフェス開催情報は、BOOK CULTURE CLUBさんのnoteをごらんください。
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