もしもの話 ハッピーエンド版

8:00 彼女とのトーク画面に既読がついていないことに小さな違和感を感じながらも、見ないふりをしてSNSを一周した。もしかして、なんかの事件に巻き込まれてるんじゃないかと疑いながらも怖くてそんなこと考えたくない自分がいる。頼むから早く連絡を返してくれ。せめて何かしらのSNSくらい更新してくれ。

10:33 落ち着かない、嫌な違和感を必死で押さえながらなんどもトークを送り続ける。電話もしたが全く繋がらない。こんなことなら携帯本体の電話番号だけでなく、実家の電話番号も聞いておけばよかった。

11:59 急に電話がなる。知らない番号からの着信だからいつもだったら出ないが今日は彼女からの連絡かもしれない。そう思って恐る恐る出てみる。

「もしもし?」
その声は彼女のいつもの声だった。一気に肩の荷がどっと降りる。
なんだよ、全然連絡ないから心配したんだぞと疲れと安心と怒りが混じった声でいうと、どうやら携帯を急に水没させてしまったらしくいろんなアプリのパスワードもその携帯にしかなかったらしい。ごめんごめんと謝る彼女は、少し笑っていて謝罪の気持ちなんてあるのかよって感じだったけど、俺の携帯の番号だけは二人の写真の裏にメモしておいたというエピソードから、自分を頼ってくれてると思えて結局許してしまった。

結局俺とのトークに自分のパスワードを残しておいたというのだから、用意がいいんだか悪いんだかわからないもんだ。
電話でそれを伝えすぐにメモを取らせて一度電話を切った。しばらくして、彼女からの既読がついた。
いつの間にやら「既読」だけで生存・安否確認ができる時代になっていたらしい。「SNS疲れ」なんて言われているが、今や日本中は疲れても抜けることは難しいSNS沼にどっぷり浸かっている。


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