細胞がエネルギーをつくる仕組みが、一見とても回りくどい理由
ミトコンドリアでATPを作る仕組みは、一見とても回りくどい。でも実は、とても合理的な仕組みなんだ。
前回は、ミトコンドリアでATPが作られる仕組みを思いっきりシンプルに書いてみた。
要するに、ミトコンドリアでは・・・
まず、電子伝達系がプロトンを汲み上げる。
すると、膜をはさんで片側のプロトンが濃くなる。
プロトンは反対側の薄い方へ戻ろうとする。
プロトンが戻る時のエネルギーを使って、ATP合成酵素がATPを作る。
というわけだった。
これは例えるなら・・・
エンジンでポンプを回して水を汲み上げ、
高い所から落ちてくる水の勢いで発電機を回す、
というような仕組みと、本質的には同じだ。
とても回りくどい。非効率じゃないか。
エンジンで直接、発電機を回せばいいのに!
つまり、電子伝達系が直接ATPを作るようにした方がいいじゃん?!
その方が効率的なように思える。
なぜ生物は、こんな回りくどい仕組みを採用したんだろう・・・?
というわけで、まず前回の図をもう一度。
こんなふうに、ミトコンドリアの内膜に、電子伝達系とATP合成酵素がある。
そして、電子伝達系が、内膜の内側から外側にプロトンを汲み上げて、
そして、プロトンが外側から内側へ流れ込む時のエネルギーを利用して、ATP合成酵素がATPを作る。
ところで、実は、
プロトンが3つ流れ込むと、ATP合成酵素はATPを1個作れるんだけど、
電子伝達系では、1回の化学反応でプロトンを4個汲み上げたりする。
だから、もし仮に、電子伝達系が直接ATPを合成できるとすると・・・?
上の例だと、
プロトンを4個汲み上げられるだけのエネルギーを使って、
プロトン3個分あれば足りるはずの、ATPを1個作るという仕事をする。
っていうことになっちゃう。
つまり、プロトン1個分、エネルギーが無駄になる。
ところが、実際に電子伝達系がやっていることは、どうだろう?
ひたすら、膜の外側へプロトンを汲み出しているだけだ。
そして、プロトンが12個汲み出されれば、ATP合成酵素はそれを使ってATPをちょうど4個作れる!
無駄なく、最後の1滴までエネルギーを使い切れるんだ。
おかげで電子伝達系は、ATPをちょうど1個作れるエネルギーを生むような化学反応をわざわざ探して来なくてもよくなる。ただ、手近にある利用可能な化学反応を使って、ひたすらプロトンを汲み出していればいいってわけ。
これが、
「プロトンを汲み出すシステム」と、
「ATPを作るシステム」を、
別々にするメリットだ。
一見、回りくどい仕組みなんだけど、実はものすごく効率のいい仕組みになってる。
なんて頭がいいんだろう・・・
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