本と、私。

本がいつから好きだったのかはよく覚えていない。

絵本はさほど持っていなかったけれど
家には本が沢山あった。

数学の人だった父は宇宙や音楽を数式で表すような本を沢山持っていたし、
年の離れた兄の部屋にはアガサ・クリスティーや、コナン・ドイルのミステリーがたくさん揃っていた。
(シャーロックホームズのまだらの紐で、読書感想文を書いたことがある)

部屋の主がいない時間を見計らっては、こっそり忍び込んでは読んでいた。

父は本を滅多に貸してはくれず、
貸して欲しいと言うと、代わりに同じ本を買ってきてくれた。

本の虫と言うほど本を読んできたわけではないけれど
私の世界にはいつも本があった。

20代の一番時間のあった頃は人間関係に夢中で、
もっと沢山本を読めばよかったと酷く後悔してはいるけれど
本のある空間は好きで本屋さんに行けば何時間でも本を眺めていたし、
あの頃読んだ本は今でも深く印象に残っている。
子供が産まれてからは本とは全く疎遠になっていたが
本はまた私の世界を彩るようになってきた。

歳を重ねるほど、私が私でいることは難しくなっていく。
社会人としての私、母としての私、妻としての私。
中年に差し掛かろうとしている私。

でも私の中には常に少女の頃から変わらない一糸纏わぬ素のままの私がいて
目まぐるしい日々の中では滅多に表に出てくることはないけれど
確実に変わらない私がいるのだ。

本はそんな素のままの私を全て許容してくれる。
どの世界にも私は私のままで旅立つことができるし、
心を躍らせることも震わせることもできる。

少しでも、私が私であることの証を本を読むことで残していきたい。

願わくば娘たちにも、本をめくって色んな世界に旅立ってほしい。




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