恥に酔う
きついワインの酔いから醒めたみたいに、視界が冷たい。年末の浮かれた熱も今は感じられず、私が考えられることは少ない。冷静になったようで現実味を帯びていないメガネは何色をしているのだろうか。脳内の温度は低く触れたくはないが、その脳から出でる想像は激情を含んでいるように思える。こうなると普段何を考えていたか思い出せなくなってしまう。
多くの人から優しさをもらって、心配させて、温度を分けてもらって、それでも満足していない。どこまで貪欲で欲張りで恥を晒して生きれば良いのだろうか。どうか私を嫌わないでほしい。かと言ってこれ以上長く深く付き合うのは気が引ける。大学生という貴重な時間をどうして私と共有してくれるのか、不思議でならない。いくら考えても私とゆうじんであるメリットが考えつかない。私と関係を持つデメリットを思いつく限りあげるが、だからと言って伝えることはできない。伝えたとしても気分を害すだけだろうし、何より納得されて距離を取られたくない。明らかに弱体化している自分が少しだけ可愛くも思える。
腹部に違和感を覚える。寮を出る前にピルもレクサプロもエビリファイも倍量飲んだからだろうか。とぼけてみるが絶対にそれしかあり得ない。また先生にいただけませんねとか言われるのだろうか。記憶を辿った結果隠しておくが吉だと私は判断した。ここ最近失敗が多い人間だ。失敗したいわけではないのだけどなあ。
好き嫌いがはっきりしている人のそばにいたくないのは、拒絶されるのがこわいから。友人が多い人のそばにいたくないのは、いつ捨てられるかを考えてしまうから。可哀想な人のそばにいたくないのは、自分の醜さに気づいてしまうから。正しい人のそばにいたくないのは、自分が間違っていることを認めたくないから。心優しい人のそばにいたくないのは自分の感情の希薄さを再認識してしまうから。頑張る人のそばにいたくないのは、自分の怠惰をひどく憎らしく思うから。人と関わりたくないのは、いつか来る終わりを待たなくてはいけないから。
痛いところを突かれて顔を顰める。図星です、ごめんなさい。申し訳なさ路同時に僅かに苛立つ。嫌いになりたいわけではないから、いらだったことにさらに腹が立つ。めんどうくさいやつだなと改めて思う。最近はいろんな衝動が抑えられない。お金を使いたくてしょうがないし、押さえつけると体がうずうずむずむずしてどうしようもなくなる。お金を使ったところで残るのは虚しさと後悔だけ。時々カッとなって手を出したくもなるし、思いっきり罵倒する自分を想像することもある。行動に起こしたとして、何か私に徳があるわけでもない。なんならドン引かれる未来しかないだろう。今までよく我慢してきたなと褒めてやりたいところだが、常人はそんな欲求をまず持たない。欲求が芽生えた時点でそんな私を褒めることはできない。
私を許容する能力を分けてほしい。恋人に憧れを持っている。だが、私と付き合ったところで楽しいことはないだろう。まず恋人という友人よりも深い関係で人と付き合う気が知れない。私は一切の責任を負いたくない。傷つけたくもない。そしたら付き合うという選択肢が間違っていることは理解できる。だが私は自負している通り寂しがりやである。この響きは大変可愛らしいものだが、私に関しては全く可愛い表現ではないことを理解してほしい。まず友人という関係の時点で、私は相手に執着している。私以上に親しい友達を作って欲しくない。私を最優先してほしい。嫌わないでほしい。少しでもLINEの返信が遅くなるだけで何かしたのか怖くなるし、何か起こったんじゃないかと心配になる。少しでも文面がそっけなかったりしたらもう飽きられてしまったのかとさえ思う。なんてめんどくさいやつなんだ。
だれか私をぜんぶ肯定してくれないかな。そしたら幸せになれるのにな。