酒はもうええ

あんなにも好きだった酒が今となればもの凄く憎たらしい存在に成り下がっている。
20代は無理にでも飲んでいた時期がある。
現実に不満もあったのだと思う。
冷凍庫でキンキンに冷やしたウイスキーをロックで浴びていた。もはや習慣。理由はない。
わたしの習慣をまっとうすることに長けている能力が悪いほうに発動していたのかもしれない。
そんななか突如コロナウイルスが世界を席巻した。
幸か不幸か飲みにでる機会がめっきりなくなった。今となればそんな機会がなくなって良かったと思えるが。
こうなるとやはり飲酒の機会が減る。
はじめのうちこそ自宅で飲むこともあったような、もうだいぶ前のことでそのへんのことはあやふやだが、自然と飲むことを敬遠するようになった。
よく飲み歩いていた時期もあるし、飲み会は賑やかで楽しいような気持ちにさせてくれるので積極的に顔出していたし率先して飲みに友達を誘ってパーっとやったりもしたものだ。
が、その頃からうすうす気づいていたのだが、飲み会が終わった帰り道、1人で家路に向かって歩いているとどうしようもなく死にたい気持ちが襲ってくるのだ。
駅のホームで電車を待っているとき、このまま跳び込んでみようかなと思ったことは幾度となくある。実際にはしない。ただ、もう少し泥酔していたらどうなっていただろう。幸運にもわたしはわりかし酒が強い方なので記憶を飛ばすほどに酔った記憶は新潟の酒の陣に参加したときを含めて片手で数えられるときくらいだが、ことによったらほんとうに飛びこんでいたかもしれない。
最近耳にした言葉で、酒鬱という言葉があるそうだ。
特にそのワードについて深く調べる気にもならないので把握はしていないが、わたしに起こっていたことは酒鬱であったのではないかと思う。
そう考えると、それに気づかせてそこから救ってくれたコロナウイルスには感謝である。

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