上品な「ブル8」を堪能。トゥガン・ソヒエフ指揮、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団_2024年11月8日
トゥガン・ソヒエフ指揮、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の「ブルックナー:交響曲第8番 ハ短調(ノヴァーク版)」を聴きました。
すでに多くの方が絶賛されているように、非常に繊細で透明感のある、上品な「ブル8」でした。
少し長めの沈黙により、場を静寂で整えてから始まった第1楽章は、悠大な河の流れのように実にゆったりと進み、聴いていると、まるで人間から鳥へとその視点を移しながら天界に導かれていくようでした。
私が「ブル8」を聴く度に感じる、自分が記憶しているといないとに係わらず、すべての瞬間で自分は神に愛されていた、という実感をソヒエフの第2楽章でも覚えました。
また、第3楽章では視界に収まらないほど壮大な、天界の黄金の扉が目の前に感じられ、第4楽章ではゆっくりと開いていくーー。聴ている間じゅう、魂の安息に包まれていました。
ソヒエフの「ブル8」は、人間味や、人が抱く永遠の憧憬というより、もう少し俯瞰したような音楽であったと思います。
とくに第2楽章で感じたのは、私が好んで聴いてきた音ではここでガツン! と圧倒的インパクトをもって表現し、聴き手を一気に陶酔へといざなう部分を、ソヒエフは引いて表現していたこと。それにより透明感のあるうねりを創り出していたように感じました。
とても洗練された上質な交響曲を堪能し、大きな耳福を得た一方で、ミュンヘンフィルの音では感じなかった、嗚咽を堪えるのに苦心するほどの「ブル8を聴いた!」という陶酔感も、私は愛しています。
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