ワーグナー『ニーベルングの指環』ガラ・コンサート_2024年4月7日
今日の午後は上野文化会館で、ワーグナー『ニーベルングの指環』ガラ・コンサートを聴いてきました。
マレク・ヤノフスキの指揮で、管弦楽はNHK交響楽団(ゲスト・コンサートマスター:ウォルフガング・ヘントリヒ)。
休憩を除けば1時間半強ともともと短い演奏会ですが、まさに一瞬のよう。とくに、第二幕《ジークフリート》以降の美しさには、鳥肌が止まりませんでした。
幕が開き、《ジークフリート》第2場「『あいつが父親でないとは うれしくてたまらない』―森のささやき」の演奏が始まると、ひっそりとした森が目覚めてゆく様がありありと浮かびました。
風が葉を揺らしながら抜けていき、木漏れ日は差して小鳥たちがさえずっている--。遠くに雲海も見えた気がするほど、そこここに瑞々しい命が感じられたのです。
とくに惹かれたのは、第3場「親切な小鳥よ 教えてくれ……」でした。
それまで落ちていたライトがふと灯り、顔を上げたジークフリートがじっと遠くを見つめている。視線の先を追うように、こちらも後方を振り返って見上げると、ホール右側の2階席に森の鳥(ソプラノ)がいて、ジークフリートに語りかけています。
ヴィンセント・ヴォルフシュタイナーさん(テノール)の無邪気な表情と、
中畑有美子さん(ソプラノ)の透き通った声。ホールの上から響いてくる声は、まさに空を飛び回りながら語りかけるようで、心が鎮まり、それでいてワクワク躍動する体験でした。
続く《神々の黄昏》第3幕、「 第3場ブリュンヒルデの自己犠牲『わが前に 硬い薪を積み上げよ……』」では、ブリュンヒルデが「使いのカラスが飛び立つのも分かるわ」と歌う場面の、それまでのメロディから一瞬にして低音まで降下したところで、その響きに心臓が掴まれたように高鳴りました。
曲が最終章に向かって行く間は、まるで運命を背負ったかのように立つエレーナ・パンクラトヴァさん(ソプラノ)の姿と、曲の展開が神々しかった。早くまた全編を聴きたいです。
(惜しむらくは、「ジークフリート」で、ジークフリートとヴォータンが出会うシーンと、「ワルキューレ」のラストシーンのブリュンヒルデとヴォータンが抱き合う、父娘の愛情ゆえの別れのシーンなども聴きたかったこと。ですが、これは、やはり本編で聴くからこその感動、ということでお預けですね(*´▽`*))
指揮:マレク・ヤノフスキ
管弦楽:NHK交響楽団(ゲスト・コンサートマスター:ウォルフガング・ヘントリヒ)
出演・曲目
舞台祝祭劇『ニーベルングの指環』より
序夜《ラインの黄金》より第4場「城へと歩む橋は……」〜 フィナーレ
ヴォータン:マルクス・アイヒェ(バリトン)
フロー:岸浪愛学(テノール)
ローゲ:ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(テノール)
フリッカ:杉山由紀(メゾ・ソプラノ)
ヴォークリンデ:冨平安希子(ソプラノ)
ヴェルグンデ:秋本悠希(メソ・ソプラノ)
フロースヒルデ:金子美香(メゾ・ソプラノ)
第1日《ワルキューレ》より第1幕 第3場「父は誓った 俺がひと振りの剣を見出すと……」〜第1幕フィナーレ
ジークムント:ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(テノール)
ジークリンデ:エレーナ・パンクラトヴァ(ソプラノ)
第2日《ジークフリート》より第2幕「森のささやき」〜フィナーレ
第2場「あいつが父親でないとは うれしくてたまらない」―森のささやき
第3場「親切な小鳥よ 教えてくれ……」〜第2幕フィナーレ
ジークフリート:ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(テノール)
森の鳥:中畑有美子(ソプラノ)
第3日《神々の黄昏》より第3幕 第3場ブリュンヒルデの自己犠牲「わが前に 硬い薪を積み上げよ……」
ブリュンヒルデ:エレーナ・パンクラトヴァ(ソプラノ)