【情念×狂気】これが、プロレスだ!___スターダム『ALLSTAR GRAND QUEENDOM 2023』横浜アリーナ_2023年4月23日
強くなりたいーー。
過去を超え、己を超えて勝利を目指す。
相手の技を受けて受けて、相手を輝かせた上で勝つ。
汚い感情も、泥水をすすった経験も絶望の味も、己を輝かせる糧となる。
これが、プロレスラーだ!
■女子プロでは20年ぶりの横浜アリーナ。花道を使った技に歓声が上がる
大好きな女子プロレス団体スターダムの、『ALLSTAR GRAND QUEENDOM 2023 Powered by SoftBank NFT LAB』を横浜アリーナで観戦してきました!
女子プロでは20年ぶりとなる横浜アリーナ。
入場口からリングまでをつなぐ花道があったので、武藤敬司ばりの花道ラリアットが見られるかも! と期待に胸が踊る。
第3試合のひめかの引退試合で、花道を駆け抜ける姿が見られました。この時はひめかのタッグパートナーであり今試合の相手である舞華に止められ、ブレーンバスターをかけられてしまいましたが、メーン試合で中野たむがジュリアに連続で花道キックをしたり、抱え上げて垂直に落とす「グロリアスドライバー」をジュリアが中野たむにかけたりと、花道をふんだんに使って見せてくれました。
この日に引退試合を迎えたひめかと舞華は、「舞姫」というタッグパートナー。ある試合では、膝を傷めているひめかの回復のため、舞華が身を挺して時間を稼ぐほど愛情深いタッグです。
そもそも実力が亀甲しているし、決着がついてしまったらもう2度とリングの上でお互いを見ることができない。ファンもそんな想いを受け取りながら、
「まだまだ」「試合を終わらせないで」との声援があがるほど。
先に触れた花道の見せ場のあと、リングではとうとう舞華が「みちのくドライバーⅡ→エビ固め」で勝ち星をあげます。
その直前、舞華が
「愛してる!」
と叫んでからとどめを刺したシーンに涙が溢れました。
■トラウマを超えて飛んだ、上谷沙弥「フェニックススプラッシュ」
上谷沙弥と白川未奈の試合も胸を打ちました。
2022年11月3日(祝・木)、広島サンプラザホールにて行われた「ワンダー・オブ・スターダム選手権」で、王者・上谷沙弥が試合中に、コーナーの上から回転しながら跳ぶフェニックススプラッシュを失敗。白川未奈の顔面に直撃し、白川は大ケガを負って欠場することに。
ベルトを防衛しながらも、「プロレス界を追放しろ!」などの誹謗中傷を受けた上谷沙弥は、何よりケガをさせてしまったトラウマからフェニックススプラッシュを跳べなくなった。
今回の試合でトラウマを超えようと、2度ほどコーナーに上りながら、震えて断念したところも含めて、見事に跳んだときには号泣でした。
■「これがプロレスラーだ」。本気のフワちゃんを受けきって勝つ、林下詩美
第二試合のフワちゃんも、かっこよかったです。
2022年9月11日に横浜武道館でデビューしたときもプロレスの上手さに驚きましたが、今回は各段に技術が上がっていて、本人もコメントしていた通り「本気」であることが伝わりました。
親日のオカダカズチカから伝授されたミサイルキックを披露したり、倒されても必死に立ち上がるひたむきさにも胸を打たれました。
それを迎え撃つ、林下詩美のかっこよさったら、なかった!
フワちゃんの技を受けて受けて、最後にジャーマン・スープレックスホールドで勝つ。
そしてマイクを握り
「これがプロレスラーだ」
とだけ語ってリングを去る姿、痺れましたー。
■最高峰のベルトを賭けた因縁のメーン試合
メーンの中野たむとジュリアの、最高峰のベルトを賭けた試合は、とにかく派手でよかったです。
たむちゃんは、2023年1月4日の「猪木追悼試合」で噛ませ犬にされたり、月山に断腸の思いで「3ヶ月以内に勝てなかったらコズエン追放」と言ったことで誹謗中傷の的になったり、結果的に白川未奈と月山がコズエンを脱退したり、とメンタルがボロボロだったから、チャンピオンになれてよかった。
安堵した半面「たむちゃんが、もっとどん底まで落ちてもがく姿が見たかった」と思ってしまいました。中野たむは絶望を糧に、汚い感情に飲み込まれるほど輝く選手だから。
ファンとは残酷なものですね。
たむちゃんがベルトを持って、ジュリアに
「どうせあんたは、またしつこくこのベルトに挑戦してくるんでしょ……来てよ」
と言ったものの、ジュリアは
「お前の顔はもう見たくねえ。アルデベルチ……」
と言って、いつもなら「またな」と続けるところを「じゃあな」と締めたとき、腑に落ちました。
この2人の因縁試合は、もうない。ジュリアは次のステージを見ていると。
***
ほかの試合もすべて最高に面白いものでしたが、気持が溢れて止まらなくなりそうなので、この辺で止めておきますね。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
ヨガの思想とは真逆だと思うのですが、やっぱり、己を超えて、貪欲に勝利を掴みに行く姿には胸を打たれます。プロレスが大好きです。
(敬意をこめて敬称略 以下同)