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三遊亭白鳥独演会 二夜連続 「白鳥ノ音噺」_2024年5月23日
昨夜は、大好きな噺家さんの一人、三遊亭白鳥さんの独演会「二夜連続 『白鳥ノ音噺』」を聞いてきました。
白鳥さんの愛嬌はもちろん、度肝をぬく発想で一気に予定調和の外側遥かまで連れ去ってくれるような、創作落語の独創力。それでいて、随所に古典落語のベースと品格、技術が丁寧に散りばめられた芸の細かさが、昔から大好きです。
この日は、「笑点」の司会者としても知られる春風亭昇太さん作の新作落語「ロマンス恋泥棒」を前半に、後半は古典落語の「船徳」のその後を白鳥さんが創作した「船徳 お初徳兵衛(おはつとくべえ)」を聞くことができました。
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■第一線を走り続ける74歳の少女漫画家の悲哀と、かっこよさに泣き笑い!
創作落語「ロマンス恋泥棒」
「ロマンス恋泥棒」は、何本も連載を抱えるヒットメーカーであり、必ず締め切りを守るプロフェッショナルな少女漫画家の星空ゆめみ先生と、先生の自宅兼仕事場であるタワーマンションの一室に、原稿を受け取りにきた担当の女性編集者のお話です。
ゆめみ先生は最近Xで知り合った、24歳下のアメリカ人のロベルトとDMを交すうちに恋愛に発展。国際線のパイロットであり、レストランを4件経営するオーナーであるロベルトの窮地を救うべく、1500万円を貸したと言います。
それを聞いた編集者は、
「それはロマンス詐欺です! 先生は騙されています!」
と断言します。しかし、ゆめみ先生は反論しながら、滔々とこう語るのです。
仕事一筋の人生で、漫画をバリバリ描き続けるうちに、気づけば74歳になっていたゆめみ先生。都心の一等地にあるタワーマンションに暮らしていても、締め切りに追われて家から一歩も出ない生活。お金があっても使う目的も時間もない。
「あんなに若いエリート男性が、自分なんかに恋をするわけがない。そんなことは分かってる!」
分かっていながら、ほのかな恋心を原動力に、今日も全国の女の子たちに向けて少女漫画を描き続けているのだ、と。
先生の気持ちに胸を打たれた担当編集者は俄然、応援モードに!
ーーその時、ゆめみ先生の部屋のチャイムが鳴って……。
*
新作なので詳しくは書けないのですが、GWもなく夏休みもなく、ずっと仕事をしながら夢を追い続けている私としては、声を上げて笑いながらも切なくて、ちょっぴり泣けちゃうお噺でした。
私の場合は誰に頼まれたわけでもなく、ただただ大好きで打ち込んでいます。なので、別に不幸ではないのです。むしろ幸福です。
きっとゆめみ先生も同じだと思います。
でも、ときどき、ちょっぴり、切なくなる先生の気持ちも痛いほど分かります。
「大型連休って、どんな感じなのかな。みんな、お出かけ楽しそうだな」
そんな人生を生き抜きながら、ずっと先頭を走り続けている。そして、自分の悲哀まで創作の原動力にしてしまう、ゆめみ先生のプロ根性はあまりにもかっこいい! サゲも爽快で心が温まりました。
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■埼玉県秩父市の木材を軸に、落語と現実が交差した奇跡!
後半の「船徳 お初徳兵衛」は、遊び人がゆえに家を勘当までされてしまったバカ旦那……もとい、若旦那の徳兵衛が、人として大きな成長を遂げる舞台に埼玉県秩父市が登場します。
「秩父観音札所34カ所」や「不動滝」など、実在する土地が登場し、「秩父市の木材」が物語の大事な肝になっているのです。
この噺の枕で、白鳥さんが言いました。
「自分には、とても”引き”があるなと、ご縁を感じています。みなさん、落語が終わって会場をお出になりましたら、入り口の左側の小さな看板を読んでください」
噺の途中の、琴(前日は津軽三味線)の音色とコラボレーションしながら語る場面では躍動感に胸が躍り、こっけいな場面では大笑いしながらも、人情が沁みて大泣きしてしまうーー。
そんな「船徳 お初徳兵衛」を聞き終えて会場を出ると、会場である「としま区民センター」が、秩父市の木材を使って建てられたことを記した看板がありました。
その看板も、秩父市の木材で作られています。
「ああ、この噺は本当に生きているんだな。この噺が白鳥さんを、そしてここにいるみんなを呼んだのだな」
と、胸が熱くなりました。
しみじみいい経験ができました。心から感謝します。
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大好きな噺家である三遊亭白鳥さんと柳家喬太郎師匠は、ン十年前に同時期に真打に昇進しました。
二つ目最後の寄席を新宿・末廣亭で見たことは、私の一生の宝物です!
(三遊亭兼好さんも、デビュー当時からずっと大好きです)