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思い出の海

私の夫は、高校卒業してから
沼津市の郵便局に就職した
地元は、東海の海のない県の山の中

三人姉弟の末っ子

花農家に生まれた

末っ子だけど、農家だから
お父さんもお母さんも毎日、畑へ。

ダンボール箱に入れられて、
ダンボールにハンドルを描いて
車に見立てて遊んでいたらしい。

お姉ちゃんとお兄ちゃんとは、
三つずつ年齢が離れている。

農家の経済は苦しい。

夫は、幼稚園にも、大学にも行けなかった。
台風で、花が駄目になったり、お父様が事故になったり、進学したいと言えない状況もあったみたいだ。

上の二人は、看護学校や大学へ進んでいた。
しかし、ふたりとも、がんばりやさん
奨学金やお礼奉公をして、学校を卒業した。

夫も学力は高かったけれど、田舎からでたい、
お金を稼ぎたいという思いを本心かどうかは謎だけど、
そう言って
公務員試験を受けて、沼津の郵便局に
配属された。親を安心させるためだったと思う。

18歳で自立した。
初任給は、11万円
寮暮らしで、とても貧乏だった。
その当時から、家計簿をつけていて、
見せてくれた。
もやし、10円。などなど。
その当時のお 夫を想像して、
涙ぐんだ。

沼津には、美しい海がある。
千本松原。
つらい時や故郷が恋しい時、
海に来て眺めていたと話してくれた。

海のない県に生まれた、彼は
海の美しさに、魅了され、癒された。

そして、何年か後に
また公務員試験を受けて、
地元に戻った。
今度は、大学職員に、なった。

その大学で、私は夫に出逢った。

お付き合いしていた時から、旅行で
何度も連れて行ってもらったその海。

とても綺麗な石の浜が続く。
流木を、私が拾うから、笑われた。
いっしょに、綺麗な石を見つけてくれた。

「沼津は、第二の故郷なんだ」
海を眺めながら、そう彼は言った。

定年したら、この海と富士山が見えるところに
住みたいとよく話してくれる。

私は、一度彼と離婚し、また再婚した。
腐れ縁。
今度の別れは、どちらかの死かもれない。

ふたりで年老いた時、
この綺麗な海を見て過ごしたい。

夫のことを好きな時も嫌いな時もあるけれど、
未来において、別れていなければ、

この海のそばにいると思う。

夫の第二の故郷。
千本松原の青い海。










#わたしと海


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むんちゃん
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