HM#4_クイーンズタウンまでの8時間・バスで南島横断旅行
Day3:女王の名にふさわしい美しい街を目指す
ニュージーランド3日目は南島を横断する8時間の大移動。
新婚旅行に来てまで、おしりを痛めてバスに乗りたくはなかったが、
そもそも、私たちにとってのこの度の目玉はダウトフルサウンド。
フィヨルドまでのシャトルバスはクイーンズタウン発着の予定で、
なんとかしてそこまで行く必要があった。
そして、飛行機ならあっという間だけれど、片道10万くらいしたので、
バスでの8時間の移動を甘んじて受け入れた。
クイーンズタウンはワカティプ湖に面したリゾート地。
「ヴィクトリア女王にふさわしい」というのが街の名前の由来だそう。
雪の積もった山々が湖と街を囲み、季節の変化も美しいらしい。
あまり何も調べずにとにかく一つの経由地としか思っていなかった私。
出発の朝は持参していたフリーズドライのスープを飲んで
リバーサイドマーケット近くのバス停に集合した。
日本の場合、電車の駅は標識や乗り場がわかりやすいけれど、
バスは(日本国内でも)わかりにくいことが多いし、
時間通りに来るかどうかも心配なので、30分前には到着した。
海外なので、きっとみんな遅れてくるだろうという
東南アジアスタンダードになっていた私の予想とは裏腹に
私たちが到着した頃にはバスも他の乗客もすでに集まっていた。
ニュージーランドの人は時間を守る傾向にあることがわかったw。
長距離バスが2台あり、それぞれどちらに行くのかを運転手らしき人たちに
確認すると、運転手たち自身も何やら混乱している様子。
「ちょっと待って!」といいながら、しばらくスマホをいじっていた。
しばらくしてチェックインを始め、ようやく乗車し、一番前に着席。
長旅なので、乗り物酔いは避けたい。
行きの道順は以下の通り、クライストチャーチを出発し、
アッシュバーン、テカポ、オマラマ、クロムウェルを経由して
クイーンズタウンを目指す。
ここでのポイントはテカポ湖を経由するということだ。
テカポ湖とは、星空保護区に指定されるほど星空をリスペクトし、
美しい星空が見られるという憧れの地だ。
私は、この旅の計画を立てる際、もともとはテカポ湖に行きたかった。
しかし、宿泊費が高すぎるということで文字通り、涙を流して
断念したのだった。
その、テカポ湖を経由するということを知ったのは、
バスが走り出して、運転手が案内をし始めてからだ。
事前の調査はほとんどせずに、とりあえず宿泊先と移動手段だけ整えた私は
このバスがテカポに行くことを知らなかった。
このアナウンスを聞くやいなや、私のテンションは爆上がりした。
昼間の移動かつ、経由するだけなので、滞在時間は短いだろうが、
訪れることがないと思っていたところに、行けることになったのだ。
そういうわけで、私はこの長時間の旅路をワクワクしながら過ごした。
夫は隣で早速本を読んだり、居眠りをしていたが、
私は瞬きするのも惜しいくらいにずっと外を眺めていた。
まぁ、ある意味ずっと同じ風景なんだけど、
羊も牛も鹿も、その他どんな生き物も植物もどうしても眼中に、脳内に
焼き付けておきたかった。
どんな空の色だったのか、どんな緑だったのか、どんな風が吹いたのか、
どんな光が差し込んでいたのか。
そんなに細かくは覚えられないけど、とにかくここで目を開けている間は
体感しておきたかった。
とはいえ、大して変わり映えのしない風景が続く。
そんな長距離バスの旅を盛り上げてくれたのが運転手だった。
日本の長距離バス(私のイメージでは夜行バス)は基本的に
トイレ休憩と発着のアナウンスをするくらいだ。
でも、今回のInterCity Busの運転手のおじさんは町境事に
その町に関する話をしてくれた。
この人がたまたまおしゃべりな人なのか、InterCity Busなるものが
観光バスとして、色々と話してくれるものなのかはわからない。
ただ、自分が生まれ育った町で、サーモンが有名だ、とか
ここはフルーツが有名な場所だとか、ゴールドラッシュがあったとか、
色々話をしてくれ、余計に外の風景から目を離せなくなった。
トイレ休憩も1時間半毎くらいに止まるので安心だし、
外の空気を吸うこともできるので、おしりが痛いこと以外は快適だった。
さて、いよいよ念願のテカポ湖にやってきた。
バスには日本人の大学生くらいのバックパッカーやカップルも乗っており、
ここで降りていった。
「一体どんなところに泊まるんだろう」
「一体いくら位で何泊くらいするんだろう」
と、彼らの後ろ姿を羨望の眼差しで見つめた。
運転手はここでランチタイムだと言って30分くらいの時間をくれた。
そこにはトイレもあるし、レストランやお土産屋さんがいくつかあった。
どれにしようかなとか言っているうちにあっという間に時間が経った。
なぜなら、どこもけっこう高いのだ。さすが観光地。
どこも行列ができていて時間がかかりそうなのもネック。
時間もなくなってきたので、すぐに出てきそうなカフェを選び並んだ。
夫はサンドイッチ、私はミンスパイを注文し、食べる場所を探した。
バスの出発までまだあと少し時間がある。
せっかく、せっかく、ここまで来たのだから、
テカポ湖を眺めてゆっくりしたい。たとえ10分でも。
私たちはバスが停車しているところの近くまで戻り、
少し広場のようになっているところに座って食べ始めた。
真っ青な空と湖を見ながら食べていると、カモメが近づいてくる。
ひとかけでも落とそうものなら、いただこうという感じだ。
あっちいけー、とカモメと格闘しながら、ミンスパイを食べる。
けっこう量があるので、私は途中でリタイアし、夫に食べてもらった。
美味しいけれど、大きい。
そんなこんなであっという間にテカポ湖を去ることになってしまった。
ここに滞在したいか、と言われると、正直、このくらいで良かったかな。
もちろん、もう少し長く滞在してもいいかも知れないけれど、
車がない私たちは安いホテルまでの移動手段もないし、
とにかく、食べ物が高い。
スーパーに行く足がないので、もう一度言うけれど、
車がない私たちにはあまり向いていないと思う。
そして、この度の後半で改めて気づくことになるのだけれど、
ここで言ってしまおう。
夏のニュージーランドは白夜に近い状態だった。
南極に近いくらい南に位置するニュージーランドの南島は
夜の21時頃まで昼間のように太陽が高くのぼっている。
この数日、早く寝ていることを言及しているけれど、
後日、24時近くまで起きていたが、それでも空が薄明るかったのだ。
つまり、私が期待していたほどに星が見えなかったのだ!
サザンクロスや天の川を期待していたけれど、
都会の空とも違う空の明るさ…!これが白夜か…と気づいた。
日は沈むし、白夜というほどには明るくもないのだけれど
とにかく太陽が沈みきっても、太陽の気配を感じる程度に明るいのだ。
そういうわけで、この季節に高い宿泊費をはたいてテカポに滞在しなくて
よかったー、と旅の終わりに結論づけることになった。
が、このときはまだそんなことにも気づいていない私は
「とりあえず、憧れのテカポに来れてよかった、お得だったわー」
とテカポ湖を後にした。
テカポ湖から離れていくときに、遠くに雪を頂いた美しい山脈が見えた。
ゴツゴツした山肌に雪が積もって、南アルプスの天然水の絵みたいな
美しい荘厳な山だった。
すごいなぁと見とれていると、運転手のおじさんが解説してくれた。
この山はアオラキorマウントクックと呼ばれる山で
ニュージーランドで最も高い山だそうだ。
そういえば、ガイドブックにも紹介が出ていた。
山が好きなので、本当は行きたいと思っていた。
長距離バスのおかげで、図らずももう一つの絶景を見ることができたのだ。
なんてラッキーなんだろう、と山が見えなくなるまで釘付けだった。
そこからさらにバスは高原を走り続けた。
高原にはゴツゴツした大きな岩がたくさん転がっている。
その中に時々、ヤギが放牧されていたりする。
バスは走り続け、その後も何度かトイレ休憩を挟み、
しばらくすると大きなフルーツのモニュメントが見えた。
クロムウェルという街で、昔は金の採掘が盛んだったが、
今はフルーツで有名な場所とのことだ。
運転手は「とても美味しいからフルーツを買っておいて損はないよ!」
と言ってJones Family Fruit Stallというフルーツやさんにつれてきてくれた。
旅の途中でフルーツを切るものも持っていないし、
ここで荷物は増やせないこともあり、アイスクリームだけ買ってみた。
数種類から夫はいろんなベリーが入ったもの、私はマンゴーを選んだ。
食べ比べてみたけれど、ベリーが入ったもののほうがフルーツ感があり、
もう一度食べるなら、ベリーにしようと思った。
でも、帰り道はルートが違ったので立ち寄ることはなかった。
目的地がリゾート地ということもあるからなのか、
目的地への到着予定時間からすでに1時間くらい遅れているのに、
運転手は乗客のショッピングを急かさずに待ってくれた。
自分もちゃっかりフルーツを買っていたので本当に好きなんだろう。
トイレ休憩はすでに近くの別の場所で済ませていたので、
ただのサービスで立ち寄ってくれたに違いない。
CityInterの運転手がみんなこんなに観光案内ができるのかはわからないが、
このおじさんはきっと本当にこの国や仕事が好きに違いない。
飛行機で1時間くらいひとっ飛びも楽でいいけれど、
8時間、ニュージーランド南島のいろんな風景を見ながら、
どんな街なのか、どんなストーリーがあるのかを知ることができた。
地球の歩き方も買ったけど、あまりよく読んでなかったので助かった。
この後もバスを多用するのだが、思っていたよりサービスがいい。
ニュージーランドの大きな産業は観光なので、長距離バスの運転手たちも
人を運ぶだけではなく、歴史の話や産業の話を良くしてくれる。
日本の夜行バスとは異なり、「はとバス」に近いかもしれない。
運転手とガイドが一人二役をこなしているようだった。
他の運転手さんも同じだけのことができるとは限らないけれど、
時間がかかっても、CityInterを使ってよかったと思う。
到着予定時間から2時間ほど遅れた18時頃にクイーンズタウンに到着した。
運転手は特に謝罪もしなければ、すまない、といった様子もなく、
誰も焦っていないし、とがめもしない。
日もまだ高く、休暇で来ている人ばかりなので、問題もないのだろう。
2時間遅れたけれど、安全で楽しい旅を提供してくれたので、
私も荷物を受け取った後、お礼を言って、その場を去った。
クイーンズタウンでは、バス停から近い宿泊所はどこも高かった。
今回だけは致し方なく、ゲストハウスを予約した。
30代後半の新婚旅行で6人の相部屋だ。
2泊だけの我慢…と向かったゲストハウスはバス停から見えるところだった。
荷物をおろして、夕食の場所を探した。
クイーンズタウンもアウトドアのお店やレストラン、お土産屋さんが並び、
人気店には長蛇の列ができていた。
明るいとはいえ、もう夕食の時間だ。
夫は並ぶのが嫌いなので、すぐに入れた店でインド料理を食べた。
私はかつてインド人になりたかったくらいスパイスカレーが好きだ。
でも、ここは割高だと感じたし、ニュージーランドまで来たら、
ここでしか食べられないものを食べたいなぁと思ってしまった。
ガイドブックをあまり読んでいなかった私だが、なんとなく、
クイーンズタウンはリゾート地で、何もかも高そうだ、と感じた。
そして、いろんなレストランがあるけれど、だからこそ、
ニュージーランドらしい感じの店が少なく感じてしまった。
このあたりで、私は
「ここでは無理して外食はせず、自炊でいいかも」と考え始めた。
なにせ、ゲストハウスなら共同のキッチンや調理器具が使える。
食後の散歩をしながら、夫にもそんな話をした。
すると夫はニュージーランドの大手ブランドのものを試したいという。
ニュージーランドは酪農産業が強い。
牛乳やチーズ、ヨーグルトなど、現地ブランドを食べてみたいというのだ。
夫は鼻をすすりながらニュージーランドのメーカーを楽しげに調べ始めた。
長旅で疲れたこともあり、散歩もそこそこに、ゲストハウスに戻った。
ゲストハウスはフルハウス(満室)。
同じ部屋にはワーホリをしているというドイツ人の大学生女子2名と
バックパッカーの男の人が2名、そして私たち夫婦が宿泊する。
部屋に帰ると、部屋には私たちだけだった。
シャワーもトイレも共同で、ちょっと落ち着かない気がしたので、
その日はシャワーは我慢することにした。
21時消灯なので、もう部屋の電気を消してもいい時間だった。
身支度を整えてこの日も早く就寝した。