GIFT
田中夫妻と創成東エリアにある遠友夜学校跡地や苗穂周辺を散策した後、タクシーで北18条に向かった。私は本日の主役である『研究的実践を組みなおす』を取りにhomeportへと戻り、二人は先に「soundtracks TOUR FINAL」の会場である「Wood Back」へ向かった。
会場に着くと、入口には「本日宴会のため19時から営業開始」の貼り紙が。たった5人のためにマスターは営業を1時間を遅らせて、わたしたちの料理づくりに専念してくれていたのだ。約2ヶ月前、私は電話ではなく、お店に直接出向き予約の交渉をした。マスターは「2ヶ月先のことなんて分からない。でも予定しておきます。」と言ってくれた。
確かに先のことなんて分からない。ここに集まった5人も一見何の脈絡もないように思える。社会的属性の側から見れば、大学関係者であり、北海道大学と山形大学にまつわる人々と言えるかもしれない。でも、今回集まったのは、先のことなんて分からないことを楽しんでみる、そんな一貫性を持った人が集まる会だったのかもしれない。
マスターは、たった5人だなんて思わなかったのだと思う。数ではなく、何か大切なことが起こる会。そんなことを私の表情から感じ取ってくれたのかもしれない。と、私は勝手に意味づけることにした。人の心なんて分からないし、そもそもあるのかすら分からない。確かなのは、そうであるはずだと意味づける瞬間と、それを可能にする「〈時と場〉」(若林幹夫(2010)『〈時と場〉の変容ーサイバー都市は存在するか』NHK出版)だけである。
「何者でもないものが出会う会」。強いて言えばそんな会だった。またここから始まるのだろう。観客もいない5人の参加者から。
終演後、北24条のバスターミナルまで見送る道すがら、あべくんが「自分は黒子が好きなのかもしれない。誰かを支える側。だから自分も一緒に宿をやってみたい。」と言ってくれた。あべくんと出会ってから約1年。はじめて会ったときのことを誰かと「再読」することで、あべくんも私も変容していく。変容しつづけるという一貫性の道が事後的に出来ていく。
TOUR FINALに参加してくれた大学院の指導教官である山田先生。田中くん曰く、(山崎さんの)「おやじい」、あべくん曰く(山崎さんの)「師匠」。この15年かけて、社会的属性としての教師と学生から、いつのまにか関係が組み変わり、先生曰く「くされ縁」になった。
今度はこちらの側から社会的属性を組みかえていきたい。もう見えている。確実な能動性の機運が。確信が。
改めて、このような場を呼び込んでくれた『研究的実践を組みなおす』という親友、ありがとう。
2024.09.22 山崎 翔