プリ
キラッキランラン! みんなは「キミとアイドルプリキュア♪」を観たプリ? プリキュアの新シリーズプリ! 昨日の日曜に2話だったプリ。1話もyoutubeで期間限定で公開されてるプリ! 語尾に「プリ」をつける妖精が、肩出しルック(寒くない? おじさんが暖めてあげるよ…)の主人公・咲良うたと出会って、彼女がプリキュアとしての一歩を踏み出すプリ。向こう一年が楽しみな初回だったプリ~!
プリキュアの一話目はどうしても紹介がちになってあまりシーズン通してだと物足らないことが多いプリ。けれど「キミとアイドルプリキュア♪」一話ではお笑い要素も多くて上質だったプリ。何度見返しても飽きないプリ。いいプリ。
アイドルがテーマのプリキュアと聴いてみんな思い出すのが剣崎真琴プリね。ドキドキプリキュアのキュアソードプリ。劇場版で唯一流血描写があったプリキュアシリーズとして記憶に新しいプリ。ドキプリはいつのプリキュアだったプリ? 調べるプリ。2013年。嘘だろプリ。12年前!? 嘘プリ。だってまだドキドキプリキュアを観ていた時分からちっとも変化がないままプリ。相も変わらず娘もいないのにプリキュアを追ってるプリ。嘘プリ嘘プリ嘘プリ!!!
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日記。
今週末に「キャプテン・アメリカ」のシリーズ新作映画が上映されるので、突貫でシリーズを追おうと思った。マーベルというアメコミブランドの新作である。何を観たら追いつけるかなと調べたら、マーベル全作追ったほうがいいよという意見がいくつか。どれほどあるんだとひいふうみいと数える。二十作を超えていた。バーカ! そんなに観れるわけないだろ。ネット検索はディズニー+というサブスクに加入することをお勧めしやがる。くそったれ。俺がディズニー向きの人間に見えるか? 俺が白雪姫を観ると思うか? いい加減著作権を開放しやがれ。あこぎな真似はやめろ。やっすいサブスクで見させろ。
やむなく手持ちのサブスクに課金して、キャプテンアメリカシリーズ3作とアベンジャーズ4作を公開順に履修した。アベンジャーズの後半2作に関しては、ほかのマーベル作品を観ていたら面白さが倍増していたんだろうなあと思った。それでも想像力で何とかしながら見終えた。面白かった。私はシビル・ウォーが気に入った。スパイダーマンも登場するし。
マーベル映画好きの人間のアドバイスだとか感想をネットで調べていたら、私には既視感があった。ああ、ガンダムと同じだ。同じ臭いがする。現在、ガンダムの新作アニメが劇場版にて先駆けて公開されている。twitterを覗くとその新ガンダムのよくわからん巨乳の女とクールっぽい女の絵が次々におすすめタブに流れてきた。私はガンダムをまったく知らない。けれど、ガンダムが好きだという人には幾人か出会った。私はこんな質問を投げかけたことがある。ガンダムは何から観ればいいですか。彼らは口をそろえて答える。全部。バーカ!
映画でいうところのマーベルシリーズ、アニメならガンダム。私の土俵の小説でいえばそれはきっとSF。SF小説は少なくとも100(0)冊読んでから語れという風潮がある。海外作国内作その別を問わず。SF小説マニアはうるさい。そういう印象が根強くある。けれどどんな界隈であれ、私は初見には優しいほうがいいと思う。全部観ろとか全部読めなんて土台無理な話なのだ。全部に触れなければいけない(と思い込んでいる)シリーズに肩まで浸かっているオタクには要注意だ。彼らの言葉を額面通りに信じてはいけない。私たちは自分が気になった作品から自由気ままに物語を享受すればいい。いいプリ。
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もし私が26歳の時に結婚してその年に娘が産まれていたら、娘は今3歳であるプリ。娘もプリキュアに夢中になるころプリ。娘の名前は決めてあるプリ。詩音(しおん)プリ。ぜったいこの名前にするプリ。誰か産んでくれプリ。
だけど詩音にプリキュアの初見、第一作として「キミとアイドルプリキュア♪」を見せたくはないプリ。まずは誰にも触れやすい最近のプリキュアからおすすめするプリ。「ハートキャッチプリキュア」プリ。いつのプリキュアプリ? 2010年。最近プリ! 21世紀なら全部最近プリ! 詩音はキュアブロッサムちゃんかわいい~というプリ。キュアサンシャインちゃんもかわいいよと返すプリ。詩音といっしょにプリキュア談義をするプリ。パパ、次はどのプリキュアを見せてくれるの? 天真爛漫に詩音が訊くプリ。4歳プリ。ここはスマイルプリキュアプリ。コメディ色強めな二作で行くプリ。次は? 詩音は5歳プリ。トロピカル~ジュプリキュアプリ。決して逃さないプリ。コメディ3連続プリ。詩音は小学生になったプリ。一年生プリ。フレッシュプリキュアプリ。二年生プリ。わんだふるプリキュアプリ。3年生プリ。ふたりはプリキュアsplash starプリ。4年生プリ。ドキドキプリキュアプリ。5年生プリ。ハピネスチャージプリキュアプリ。ここは賛否両論あるプリ。でも5年生の娘に見せるのがちょうどいいと思うプリ。いずれプリキュアを通してみることになる以上、ハピチャは避けられないプリ。6年生の詩音は反抗期プリ。もうお父さんの勧めるプリキュアなんて見たくない、っていうプリ。それでいいプリ。詩音はいま自らのプリキュア道をあるき始めたプリ。前まではパパって言ってくれていたのに、今はお父さん呼びプリ。それが悲しいような嬉しいような複雑な気持ちプリ。詩音はプリキュア5を観るプリ。正しい。もうこちらのおすすめを訊かずに手当たり次第にプリキュアを観るプリ。初代とその続編、そこからプリキュア5の二作、詩音は私の手から離れて新たにまた新たに触れていく。私とは違った道筋でプリキュアに入り込んでいく彼女を、私は
もういいよ。もういい。実を言えば私に娘の詩音はいない。妻さえいない。私は三十路を超えてからも独身でプリキュアシリーズを追っている、一介の中年にすぎない。よくもまあガンダムやマーベルファンに好き勝手言えたものだな。おまえ自身、プリキュアを他人に勧めるとき、全部観ろと馬鹿を言う張本人だったじゃないか。
ほんとうは、以前は違ったんだ。みんな誰もが気になったプリキュアからシリーズに入り込めればいいと思っていた。それが、どうだ。得手勝手に自分好みのプリキュア遍歴を押し付けてご満悦している。そういう己を顧みるとき、私は怖い。いつまでこんな風でいるのだろう。同級生たちの話題は仕事場だとか己の家庭の話になるのに、私はいつまでたっても創作物から抜け出せない。今期のプリキュア面白そうだねと大学時代のグループラインに送るとき、既読だけがついてスルーされる。ああ、彼らはプリキュアどころじゃないのだ。今生きているめいめいの現実にぶつかって、闘っている。私だけが足踏みしている。私は追いラインをする。もしプリキュア初見ならハトプリかスマプリがいいよ。どれにする? 何でも訊いてよ。返事はない。既読だけがつく。昨夜がグループを退会しました。
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いったい俺は結婚できるのだろうか。子どもは持てるのだろうか。健康診断で悪いところは見つからないだろうか。怖い。俺は怖いよ。このままでいいのだろうか。このままじゃいけないという手さえ冷たい君は、君ならどこに行く。俺は怖い。怖いよ。怖いな。コワイナ。コワイナー!
みんな! コワイナーが出たわよ! 変身して!
(声が聞こえる)
\プリキュア・メタモルフォーゼ!/
(聞いたことがある)
\大いなる希望の力、キュアドリーム!/
\情熱の赤い炎、キュアルージュ!/
\はじけるレモンの香り、キュアレモネード!/
\安らぎの緑の大地、キュアミント!/
\知性の青き泉、キュアアクア!/
(ああ、そうか)
\希望の力と未来の光、華麗に羽ばたく5つの心、Yes! プリキュア5!/
(俺はプリキュアの敵だったんだな)
俺はしゃにむに暴れた。ルージュとアクアの必殺技が俺をひるませる。なおも抵抗しようとする体を、レモネードのプリズムチェーンが拘束した。こうなったら最後の一発だ。そうして放った怨嗟のような光線をミントのミントシールドがたやすく受け止める。なすすべを失い、天を仰ぐ。その彼方。目もくらむ光芒をまとって私の頭上に襲い掛かる、ああそれは、プリキュアシリーズ通してずっと目にしてきた、大好きだった、夢原のぞみ、お前の必殺技、プリキュアシューティングスター。願わくばもうふたたびと甦らないように、この身を深々と貫いてくれ。もう二度と目覚めなくていい。