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PERCHの聖月曜日 34日目

パワーバランス/信用の非対称性

支配と服従の権力関係は、はたして固定的なものなのか。自身を委ねた側は、感覚や行為を制限され服従しているようにみえるが、委ねられた側は、相手の身体や社会的立場を明け渡されることで責務を負い、逆に行為を規定されてしまう。つまり、与えられた責務を全うしなければならないという信念と、行為の代価として得られるであろう信用への期待が、かえってそれを入り組んだものにする。そしてさらに重要な点は、報酬としての信用に内在する強制力は、共同体を構成するためのルール(暗黙裏に交わされる社会契約)として機能することである。

信用の問題を扱った極限というべき作品は、観客に自分の着ている服を切り刻ませたYoko Ono 小野洋子《Cut Piece/カット・ピース》1965や、置いてある道具で自分に何をしてもよいと指示したアブラモヴィッチ《Rhythm 0 / リズム 0》1974、友人に自分の左腕を(自分を殺さずに)撃つように依頼したChris Burden クリス・バーデン《Shoot / 射撃》1971などがある。しかし、それにもまして問題提起的なプログラムをもつのは、社会心理学者Stanley Milgram スタンレー・ミルグラムの行った通称《Eichmann Experiment / アイヒマン実験》1960-63と呼ばれる実験かもしれない。

ーーー高嶋晋一(構成)/中井悠(翻訳協力)「行為者なしの行為–––1960〜70年代におけるパフォーマンスの問題系」『述––3号(特集・舞台/芸術』近畿大学国際人文科学研究所紀要vol.5,明石書店,p139

《Study of a Nude Man》
Attributed to Gustave Courbet
early 1840s

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