PERCHの聖月曜日 97日目
肯定と否定の蝟集。そして少し肯定する反感。少し否定する賛意。
そうだ。貝殻が自己を守る本能に近い。ぼくは貝の身である自己にあき、殻である自己にもあき、時々身を愛し、殻を誇る自己に安心する。背中がかゆいが、どうすることもできないでいる。どうにかしようとして非力。どうにもならない淋しい無駄な人間の力。その焦燥感は時間が皺をきざむにつれて心地よいものになる。すなわち、仕方ない苦しさとマゾヒズムに自己を浸す以外なくなる。詩はこんな苦痛と、レストレスな気分と傷ましい喜びのうちに生まれるのである。
もっとも退屈な場を永続させること。そして何んでもないこと。もっとも緊張の場を永続させること。そして何んでもないこと。〈構成〉とはこのような焦燥の美でありたい。
ーーー藤富保男「秩序の中での逃亡」『現代詩文庫 57 藤富保男詩集』思潮社,1973年,p142