PERCHの聖月曜日 117日目
画家にもそれぞれ個性というものがあるので、その個性が人的感応となって感情移入していくべきで、優れた画家が出来るだけ多く要請される所以である。どの作品にもそれぞれの人的感応が自然に生ずる筈というかもしれないが、大事なのはそこであって、だからこそ童画では、安っぽくくだらない人的感応の生ずるのが何よりも怖いのである。人間の深さ大きさ人間らしさが、よき人的感応をを醸し出す源泉である。茲でちょっと念の為に記しておきたいのは人格という言葉と混同しない事であって、人格という言葉には二宮金次郎的なカビ臭い匂いがあるがそんなものではなくて如何にも人間らしい人間を意味すると言いたいのである。だから人間の高さ広さなどというようなものは単なる教養位のなまやさしいものでは得られないもので、人と人との魂の繫りがもてないようなものは唯の娯楽雑誌で心の迫力、エスプリのない本は単なる印刷された紙に過ぎないものである。
ーーー武井武雄「童画とは何か」『童画の世界』足立美術館,2008年,p99