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『父の恋人、母の喉仏』──人生初の自著出版の経緯。

来月の3月19日に発売する『父の恋人、母の喉仏 40年前に別れたふたりを見送って』が生まれた経緯について、記しておきたい。

『父の恋人、母の喉仏 40年前に別れたふたりを見送って』3月19日発売

2022年11月、朝日新聞社で記者をしている高橋 美佐子さんから連絡があった。土曜版「be」に「それぞれの最終楽章」という連載枠があるのだが、連載が始まって5年が過ぎ、緩和ケア医、看取り士、臨床宗教家など、終末医療や介護での看取りについて(記者たち自身が)書き尽くした感があり、翌春以降、外部のジャーナリストやライターにも開放することになった、とのこと。

「というわけで、ホーリー自身の話を書けない? アラフィフでシングル女性でフリーランスで、親御さんを送っているよね?」

それを読んだとき、おおお、私はなんて自由な身なんだ!と笑ってしまった。

「生と死」は、「家族」とともに好きな二大テーマだ。『女性自身』では全国先駆けの遺品整理サービス業を取材したし(2007年)、「Yahoo!ニュース特集」では、横浜・寿町のドヤ街で訪問医療を続ける医師を取材した(2019年)。どちらも自ら企画したものだ。

そんな私の取材原稿や、私がFBに綴った母の看取り・父の見送りについて、美佐子さんはときおり目を通してくれていたのだろう。嬉しくて、一も二もなく引き受けた。親の看取り見送りというシリアスな状況にも、笑える出来事がいくつかある。結局、心に強く残るのはそちらのほうばかりで、そういったことを2023年10月から10回の連載でしたためた。遅ればせのグリーフワークともなった。

ちなみに第1回の冒頭は、

 私は今、京都市内の賃貸マンションに1人で住んでいる。52歳にして一度も結婚したことはなく、フリーランスライターという不安定な職業を長く続けている。「お守り」といえば、2020年に亡くなった母の遺産で申し込んだ少額のドル建て終身保険が唯一だ。

とあるが、この少額のドル建て終身保険は、昨年、店を出す際に全額引き出してしまった。お守りは、いま、ない。いや、店そのものが、お守りかもしれない。

さて、さらなる幸運は、その連載を、著述家・編集者の石黒 謙吾さんが読んでくれたこと。看取りや見送りという死の前後の話だけでなく、生きていたころのふたりをもっと掘り下げて書いたらどうかというアドバイスとともに、本書をプロデュース・編集してくれた。

石黒さんとの出会いは2006年11月。ダイヤモンド社の土江 英明さんが主催する交流会で紹介され、翌月出版される『ベルギービール大全』の出版記念パーティーに呼んでくれた。場所は新潮社のそばにあったベルギービール屋さん。50人くらいはいただろうか。そこで、”生涯のアニキ”となる白崎 博史さんと出会い、白崎さんが遺品サービス業を行う吉田太一さんを紹介してくれた(これが上記の取材につながっている)。

石黒さんは石川県金沢市出身で、「同郷のよしみ」ということで、翌年のいつだったか、食事をご馳走になったことがある。渋谷ののんべい横丁にある「やさいや」の2階に対面で座り、石黒さんはご自分の著作『盲導犬クイールの一生』について話をされた。盲導犬には「生ませの親」「育ての親(パピーウォーカー)」「しつけの親(訓練士)」という、3人の親がいるそうだ。その話に続けて、「僕も実は、3人母親がいてさ……」と身の上話をしだした。私の父も3回結婚をしていたから、共感することがとても多かった。

そんな出会いから17年が経ち、石黒さんが朝日新聞の連載を読んで、「これ、単行本になると思うよ」と声をかけてくれた。そして、私が出した30本の見出しをもとに、企画書を作成し、13社に提出してくれた。

それが2024年8月1日のことだ。8日には、8社お断り、2社レスなし、3社レスあり検討中、と(石黒さんより)連絡があった。13日には、レスあり検討が2社のみに。そして、23日、その2社のうちの1社だった光文社さんより「やりましょう!」という連絡があった。田邉 浩司さんが編集長時代の『女性自身』で何回もお世話になり、編集局長になられたあとで小山薫堂さんの『妄想浪費』も出してくれた出版社なので、余計に嬉しかった。

30日、石黒さん、ノンフィクション部編集長・樋口さんの3人で打ち合わせをした。私はこれまでどこにも書いたことのない、父の恋人の話をした。石黒さんが「いいねいいね〜、それ絶対書いて」と言った。私はふたりが耳を傾けてくれるのが嬉しく、両親のいろんな話をしまくった。樋口さんが「一般的な親の二十倍くらい、堀さんのご両親は恋して愛してますね」と笑顔で言われ、ふたりの人生をとても肯定してもらえた気持ちになった。

発売日の1カ月前となる明日(2月19日)、単行本の第1章を飾る、その父の恋人の話を、noteで全文掲載します。読んでいただけたら幸いです。


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