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「任せたら、どんな結果でも何も言わない」


「任せるとは、任せた方に責任がある」

この言葉は、私が尊敬する上司から教わったものです。社会人として働いていると、仕事を任せたり、逆に任されたりする場面が多々あります。その中で「任せる」という行為には、単なる業務分担以上の重みがあるのだと、この言葉から学びました。

当時、まだ若かった私は、ある仕事を上司から任されました。期待に応えたくて、一生懸命に資料を作成し、上司に提出したのですが、今振り返れば、あの資料は彼の期待には届かなかったのでしょう。それでも上司は、笑顔で「お、サンキュー」とだけ言い、文句ひとつ言いませんでした。

その後、席で上司が小声で独り言のようにこうつぶやいたのを、
私はたまたま聞いてしまいました。
「いやいや待て待て。一度任せたのなら、どんな結果でも文句は言わない。それが任せた方の責任だ。」

彼のその言葉に私は驚きました。そして、上司自身も「ぐっとこらえている」のだと感じました。「これじゃダメだ」と言いたい気持ちを抑えていたのだと。人として、ずっと上にいるなって感じたのを覚えています。


任せることの難しさ

「任せる」という行為には、少なからず「期待」が伴います。私たちは、誰かに仕事でもそれ以外のなにかでも任せるとき、「こういう結果が出るはず」「自分だったらこうするのに」といった期待を無意識に持ってしまいます。しかし、相手がその期待通りの結果を出せないと、つい残念な気持ちが表情や態度に現れてしまうものです。

その時の私の上司も、きっと同じような気持ちを抱いていたのだと思います。しかし彼は、その感情をぐっと抑え、私に一切それを感じさせませんでした。彼自身も、「任せるとは、任せた方に責任がある」という言葉を自分に言い聞かせながら、その態度を貫いていたのだと思います。

この経験から、私は「任せる」という行為がいかに難しく、そして重要かを考えるようになりました。一度任せたのなら、たとえ期待に届かなくても、その結果を受け入れる覚悟が必要です。そうでなければ、相手のモチベーションは失われ、相手の力を引き出すことはできません。

そうでないと、「任せた」と言われた方はあとで「違うんだよな」なんて言われても「じゃあ自分でやればよかったじゃん。頼まないでくれ」って思いますし、必ずやってくるであろう次の「任せる」に対してとてもネガティブになります。


任せる責任を考える

「任せる」と「手伝いをお願いする」は似ているようで、全く違います。任せるとは、結果について一切の責任を持つ覚悟を含んでいます。一方で、自分が忙しいから手伝ってほしい、という気持ちで行うのは、任せるとは言えません。それは「一部を分担してもらう」に過ぎないのです。

この違いに気づいてから、私は何かを任せる際に
次のような問いを自分に投げかけるようになりました。

  • この人に本当に任せていいのだろうか?

  • 期待通りの結果が出なかった場合、自分はその結果を受け止められるだろうか?

  • 何があっても、最終的な責任を取る覚悟が自分にあるだろうか?

「任せる」という行為は、相手に対する信頼だけではなく、自分自身の覚悟が問われる行為だと感じています。


ビジネスにおける「任せる力」

仕事は、一人で完結するものではありません。特に組織で働く場合、チーム全体で成果を上げるためには、誰かに仕事を任せることが必須となります。その際、「任せたのなら、どんな結果でも何も言わない」という覚悟を持てるかどうかが、チームの成功において重要なポイントになるのです。

私が管理職になり、多くのメンバーに仕事を任せる立場になったとき、この言葉の意味を改めて実感しました。任せる責任を意識するようになると、たとえ期待通りの結果が得られなかったとしても、そのことに対するストレスが減り、冷静に次の行動を考えられるようになりました。


最後に

「任せる」という行為は、単に仕事を振るだけではありません。その結果を引き受ける覚悟と責任が求められます。そしてその姿勢が、相手に信頼を与え、結果としてチーム全体の成長につながります。

皆さんも誰かに仕事を任せる場面があれば、この言葉を思い出してみてください。「任せたのなら、どんな結果でも何も言わない。任せるとは、任せた方に責任がある。」この考え方を持つことで、すべてのことが自分事化にできるはずです。

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