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魔法の杖

 日本に戻ってちょうど1週間になる。また、「灰かぶり」に戻った。理由は5つあると思う。
1 仕事においての能力が低い。すでに、2つの案件でダメだった。
2 おばあさんにちかいおばさんである。日本にはマダム文化がないため、一段と丁寧に扱われてたフランスから戻り、普通に扱われてる(それでいいんだよ。本当は)ことに寂しさを感じる。
3 家が片付いておらず、ゴミの中で生活している。
4 太った。
5 雑用に追われる。

 おばあさんにちかいおばさんに戻った私は、まず身ぎれいにしなくなった。涼しくなったのをいいことにシャワーすらあびない。戻った当初、時差を解消するために、片付いていない食卓での一人酒がそのまま、習慣になった。

夫が用意しておいてくれた芋焼酎。テーブルはこんな感じだが、子供から、勝手に片付けるなと言われている。

 体重はみるみる増加した。帰国のお祝い会とかもあったし、立ち飲みの焼き鳥屋にも毎日のように通った(タイトル写真)。なんと、1週間で3キロ増。そんなこと、あるんだ?!

帰国祝いは、寿司懐石だった。

 そんな中、海外派遣労働者に義務つけられる帰国後検診結果もきた。

言わずもがな、ガンマGPTがすごい記録を達成した。だって、ワインの国に住んでたお姫様だったんだから…。
 

 もう疲れちゃったよ。10月になったのに、そこら辺に落ちてた半袖Tシャツに、太ってぴちぴちになったコットンのスカート履いて、合皮部分が破け、シミがいっぱいついたGUのバッグを持って、ヨロヨロと、モバイル屋に出かけた。「予約してないけど、みてもらえますか…。もう、疲れて予約する気力もなくて」「しばらく待って頂きますが」「大丈夫です」 
 年寄りばかりが待合室にいた。フランスと同じね、ふふ。しかし、彼らは違った。お一人は、視覚障害があり、白杖をつき、直接、店頭にくる必要があるお客さんだった。それに、準備が正確で、滞留時間10分だった。もう一人は、成年後見をしているクライアントの代理人で法律事務所からきていた。ああ、本当は自分でできるはずの電話回復を試すことなく、人に頼ろうとする私は、ダメな年寄り…。そんな時、準備ができましたと呼ばれ、デスクを見ると、中村さん!スーパーモバイル、モバイルのカリスマ!「ああ、お戻りになられたんですね」「中村さんに、電話回復は自分でしたら、無料と紙渡されたんですが…」ふふ、ふと中村さんは微笑む。「ラメさんみたいな方には、このプランでもいいですよ」「880円の3GBにします!」「これだと、一々手続き取らずにそのまま、国外に行けます」「いったん解約したスマホ保険も復活させた方がいいですね」そう言えば、前のスマホはカバンの中で水没させたんだ…。私のカバンの中は、1週間に一度は、水浸しになる。私が、説明書を食い入るように見て、「一つ質問していいですか。3GBと、5Gの違いはなんですか」中村さんは、沈黙のあと、「ギガバイトは通信量の単位です。1ギガバイトは、Yahoo1000ページ分」「ファイブジーはファイブジー」そのあと、中村さんは1時間以上、私のためにいろんなアプリを入れたり、必要なパスワードがどれと同じなのか教えてくれた。私がフランスのモバイル屋で求めてたサービスはこれだったと気がついた。
 
 私は、中村さんの魔法の杖で、灰色だった日本社会に色を感じることができた。ビビディバルディドゥー…。