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ちょっと寒さが和らいだ冬の熱燗

冬の夕焼けは、どこか寂しさの中に暖かさを感じる。

寒さが和らいだ風に背中を押されるようにして、街の漬物屋に足を運んだ。暖簾をくぐると、どこか懐かしい香りが鼻をくすぐる。今が旬の西京みそごぼうと、千枚漬けを一袋買う。「これだけで十分だな」と心の中でつぶやきながら、紙袋を手に店を出た。

次に向かうのは近所の酒屋。小さな店内を歩き回り、「灘もいいけど、今日は伏見かな。」と、京都の純米酒を一本選ぶ。ラベルの控えめなデザインに好感を覚えつつ、店主と軽く挨拶を交わして店を後にする。買い物袋を両手に持ちながら夕焼けの道を歩くと、ふと「今日は少し良い日かもしれない」と思えた。

家に帰り、台所で湯を沸かす間に、漬物を小皿に盛り付ける。ごぼうは歯応えがありそうで、千枚漬けは透き通るように薄い。徳利を湯に沈め、酒が温まるのを待ちながら、静かな部屋でひとり息をつく。

熱燗を一口。酒の温かさが体に染み渡り、漬物を摘むと、その塩気が良い塩梅。「これって本当の贅沢だよな。」と、独りごちる。窓の外はもう真っ暗で、冬の静けさが部屋に溶け込んでいく。その時間だけは、自分だけのものだった。

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