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エピソード3-(5)

 
「だ~か~ら~、いちいち殴るんじゃね~よ!冗談も通じねーのかよ?」
そう言いながら赤くなった頬をさする蓮を横目に、クチナシはボソリと告げる。
 
「昨日・・・・・媛(ひめ)に真名(まな)を呼ばれたんだ」
「真名(まな)を!?」
「あぁ」
「真名(まな)」とは、その言葉通り「真(まこと)の名」のことを指し、それは生涯隠されたままで一生を終えるのが通常だ。
もし、他人に「真名(まな)」を知られればそれは呪いと同義であり、生涯をその者に縛られる事になるが、逆に「真名(まな)」を呼ぶことを許した者やそれを与えた者が発した場合には「言霊」の力により、真(まこと)の「力」以上のものを発揮することができる。
 
「で、力のコントロールができずに本来の姿に戻っちゃった訳だ」
 
「多分そうだ。」と言わんばかりに静かに頷く。
意識をせず名を発したとしても、媛(ひめ)の立場上その効力は大きい。
 
「了解。とりあえず頭(かしら)の行方も判らないままだから、今は沙羅の身の安全を最優先にするとしよう」
―どちらにせよ、クチナシの力の暴走にヤツらは感ずいたはずだ。
 
「さっ、では行くとしますか。お仕事お仕事~」
じゃ、お先。とヒラヒラと掌をふりながら、蓮は玄関の外へと消えて行った。

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